人見知りの曲がり角②

それは先週のゼミでのこと。大学におけるクラスに当たるような存在のゼミは、毎週楽しみな授業の一つだ。ある程度似たような研究テーマの人が集まっているし、みんな特徴やこだわりがあって一人一人と仲良くなってもっと深くまで知りたいと思っている。そのゼミで、学期折り返しを理由に軽いパーティーみたいなことをやった(もちろんコロナ対策はしながら)。僕自身もそのパーティーを物凄く楽しみにしていて、気合いを入れて登校。今まで僕の人見知りのせいで上手く話せなかった人たちとも、今日仲良くなれるんだ!

ワクワクした気持ちのまま、紙コップに飲み物を注ぐ。みんなにジュースが行き届いた所で先生の声掛け。「じゃあ、軽く乾杯の挨拶を~岩田君!よろしく」。今思えば伊藤君の突撃と同じくらい驚いた。ポッドキャストリスナーなら分かると思うが、僕のそのゼミにおける研究テーマは「お笑い」だ。もっと言うと「どうしたら人を笑わせられるのか」である。先生もそれを見越しての指名だろう。飲み会に参加しないことをカッコイイとして生きてきた僕は乾杯の挨拶なんてしたことがない。え、そもそも何を言えばいいのか?最後に乾杯!っていうのかな。

オロオロしている時間はない。前を向いたら僕に背を向けて早くも談笑している人たちがいた。ここはやるしかない。決意とは裏腹に出たか細い声「あ、あのー。すいません。いいですかあ?」この時点で挨拶は失敗したようなものである。そんな求心力のないやつの挨拶なんて聞いたことがない。みんな焦りに気づいたのか、やや僕から目をそらしながらコップを持った。「あのー、みなさんお疲れ様でした。来週からえっと大変になるかもしれないですけど、今日は楽しみましょう、、、乾杯!」なんてことだ。恥ずかしすぎる。今すぐいじって欲しいが、そこまでガンガン来てくれる人はいない。気付いたら部屋の中心が見れなくなっていた。

同じく壁を見てカントリーマアムを食べている同級生と少し話していると、岩田君という声が聞こえてきた。振り返ると、別のグループで僕の話題になっていた。「岩田君のラジオ聞いたよ」「えっなにそれ!」「私はnote読んだ」。嬉しい、嬉しすぎる。ポッドキャストは僕のインスタから飛べると言うと、インスタ交換してほしいと数人に言われた。嬉しい、嬉しすぎる。ここで照れを隠すための一言「インスタでイキってるのばれるの恥ずかしいわ」。答えはシーン。である。

これは完全に僕が悪い。そもそも人見知りの僕は人当たりもよくないため、他人から見てこわい(わかってるなら治せよ)。しかも今日だってずっと壁を見ている。そもそもそんな奴の自虐なんて笑っていいかわからない。そして自虐のラインは僕に対して「歯が黄ばんでいる」「髭が濃い」等とゴリゴリにいじってくる友人にチューニングされている。なぜ気付かなかったのか、、、。帰り道で僕は部分月食を見ながら叫んだ。

長くなったが、収録の前の週にこんなことがあった。僕はその場にハマらなかったかもしれないが、取り敢えずインスタは交換した。つまり、この放送の告知はゼミのメンバーの目に触れるのだ。運が良かったら「ちょっと聞いてみるか」となるかもしれない。よって、この収録は非常に大事なのだ。だから、浮ついていてはいけないのだ。

しかしそんな気持ちが何とかしてくれるはずもなく。トークゾーンのオチで「2017年の誕生日は、何も記録がないんです。しかし3日後の26日に外でデートしており、家族とケーキを食べている写真も残っています。ということは、どこかのタイミングで暦がズレているのです」(そんな訳ないだろ!まちの話)と言った所、伊藤君は本気で「そうなのかもしれない」と頷いていた。知らなかったけどめちゃ天然なのかな。そんな感じで大きな活躍は出来なかった。ドンマイ。

後半の企画では、伊藤君と僕の友人が事前に録音した物を聞かせてもらった。主に僕について語ってくれていて、嬉しかった。そこでようやく、嬉しさがこみ上げてきた。普段なかなか準備をしない彼が、前もってこんな用意をしてくれて、わざわざ京都まで来てくれたのか。考えていたら泣けてきた。泣かなかったけど。五歩手前くらいまでいった。

収録が終わったら、少し京都を案内して知り合いと3人で夕食を食べた。楽しかった。次の日は朝から授業。眠くて寒い中大学まで行って、講義を聞く。終盤に先生が「自分の出たNHKのビデオを流します」とか言い出した。自慢かよ勘弁してくれよと思っていると、ある言葉が耳に飛び込んできた。            

                                続く

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