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富裕層がしかけて富裕層が勝利する階級闘争

前回、オーウェン・ジョーンズ著の「チャヴ 弱者を敵視する社会」という本を紹介しました。
80年代に英首相だったサッチャーさんの改革の目的が、労働者階級の力を削ぎ、個人か起業家の集合体に置き換えて、自己利益追求のために競わせること(!)だったそうで、「これほど短期間に製造業が一掃された例はない」という製造業駆逐の結果、中流と呼ばれる人たちでも300万円くらいの年収しかない、格差が大きな国ができあがり、労働者階級はチャヴという蔑視の言葉で呼ばれ、人格に欠陥があると見なされ、人々から敵視されるようになったそうです。

労働者階級が敵視されるなんて、職人の国、日本では考えられないですよね。。日本では働いてる人はみんな自分を労働者と思ってますもの。
くわえて「道徳心がないから貧しい」といった、徹底的な自己責任論が蔓延しているそうです。。

そして、この本でもっとも衝撃だったのは、これらが全て、富裕層側からしかけられている、仕組まれていること。保守党の高名な穏健派議員がオフレコを条件に(!)言ったそうです:
「保守党は特権階級の仲間の連合」
「党是はその特権を守ること」
「選挙に勝つ秘訣は、必要最小限のほかの人々に必要最小限のものを与えること」。。。。びっくり

階級闘争というと普通、庶民の階級が上に対してするものだと思ってましたが、昨今の階級闘争は、富裕層側がしかけて確実に勝利するそう。
税金を富裕層から庶民に移し、非正規雇用を増やし、給与と雇用条件の「底辺への競争」を起こして庶民に行くお金を極力減らしてるそうで、まさに「必要最小限のものを与える」ということになってます。。

印象に残ったのは、職業ごとの社会的価値創出と給料を調べた調査です。病院の清掃員は最低賃金だけど、彼らがいなければ病院が成立しないので、賃金1ポンドあたり10ポンド以上の社会的価値を創出していると。本来は10倍の給料であってもいいわけですね。
一方で、シティの銀行員については、賃金1ポンドあたり7ポンドの社会的価値が失われているそうです・・!価値創出でなく損失とは・・!

日本では、外国と比較して自国だけが賃金が上がっていないので、外国にならってインフレを起こそうなどの議論が盛んですが、庶民が潤っている国はほぼありません。イギリスだって、あんなにインフレ率が9%ととても高いのに、中流層は年収300万円。。大変です。

結局、庶民はどこの国でも苦しいのです。その理由は、社会のお金の総額には限りがあるのに、資本主義の目的が利益の蓄積であるという、資本主義の矛盾です。これは、利益の蓄積を止めて、30年前の「従業員利益の最大化」に戻せば解消します。

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