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編集記を書いてる場合ではないのだけれど。|タブロイド編集記

昨年12月頭から、タブロイドのある企画の取材を進めてきた。活動拠点にお邪魔したり、喫茶店で待ち合わせたり、市内各地でお話を聞いて回り、その度に500文字ほどの原稿を作る。

ようやく最後の取材を終えた今、バスに揺られながら、私はとても焦っている。紙面に載る原稿はおそらく大丈夫だ。タブロイド制作チームのメンバーがいて、京都市の担当者の方々が見守ってくれているから、私に何が起きようとも後は彼らが進めてくれるだろう。

問題は紙面からこぼれ落ちた言葉たちだ。まだ私の汚い手書きメモと頭の中にしかない、あんな話やこんな話。一人で抱え込むにはもったいない程の熱量と知見が、そこにもぎっしりと詰まっている。500文字では全然足りひん……noteに書くしかない……そんな声がまた頭をよぎる。

最初の取材から今日まで、何度も同じことを考えてきた。取材初日はまだこちらの体勢が整っておらず、帰り道はしばらく心臓がどくどくと鳴り続けた。自転車をとめて高瀬川のほとりに腰かけ、まだ震える手でメンバーにメッセージを送ったことを覚えている。お話を聞かせていただく一人ひとりの思いと行動量が大きすぎて、受け止めるのに必死なのだ。

最後に会いに行ったのは、U35-KYOTO事務局のメンバーでもある山東 晃大さんだった。企画会議の場で、飲みの席で、これまでも何度か話をしてきたけれど、初めて1対1で向き合った山東さんに、私は圧倒された。私が知っていた“さんちゃん”は、氷山のほんの一角だった。彼が「これがぼくの財産です」と見せてくれたスマホの中のメモは、どこまでスクロールしても終わりがないように見えた。何年もかけて、思いつく度に書き連ねてきたアイデアたち。その数を聞いて、とんでもない人が目の前にいる、と体中の細胞が興奮した。こういう時、どうしよう、というなんともいえない感情が込み上げる。宝を独り占めしているような気がするのだ。皆に知らせないと!という衝動にかられたまま帰路につき、気づけば編集記を書いていた。制作の進み具合を考えれば、そんなことしている場合ではないのだけれど。

見方によれば、私の仕事は500文字の原稿を書くことで完了する。その先は、誰に求められたわけでもない、勝手にやることだ。でも、やらないわけにはいかない時がある。そういえば、この編集記も勝手に書き始めたものだった。U35-KYOTOという場には、どうもそういう魔力があるようなのだ。私だけでなく、たくさんの人が誰に頼まれたわけでもなく動き出す。昨年11月のイベント会場でも、はじめましての人同士が紡ぐ即興のチームワークがあちこちで生まれていたように思う。

数値化するのは難しいけれど、確かに皆が感じているこの力を、これからどう活かしていくのか。私ではあまり役に立てそうにないこの問いは皆に任せて、独り占めしている宝を世に放たねば。他の企画の取材がまだ残っている中、春はもうこちらへ向かってきている。

アンケートにご協力いただいた皆さま、ありがとうございました!タブロイドも他の試みも、少しずつ形になってきています。楽しみにしていてください。

タブロイド制作チーム:柴田 明、原田 岳、前田 展広、山本 安佳里
文:柴田 明
https://u35.kyoto/

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