「坂本龍一トリビュート展」
新宿の東京オペラシティにあるNTT ICC(インターコミュニケーションセンター)で
「坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア」
それほど大きくない三つの部屋に展示されるこぢんまりした展覧会だった。
手前に二部屋、奥に一部屋。
手前の二部屋はどちらも目が慣れるまでは動くのが怖いくらいの暗さ。
左の部屋には左側の壁に、右の部屋には右側の壁に、映像作品が映写されている。
奥の一部屋は明るい。
部屋の中央にピアノが置いてあり、周りの壁に作品が並ぶ。
× × × × × ×
坂本龍一にはあまり興味がなかった。
有名な人だから当然知ってはいるけれどもあまり興味がない人。
そんな人が2023年の3月28日に亡くなった。
そして何故かその後にその人のことが少し気になるようになった。
2023年の4月に、アーティゾン美術館で「ダムタイプ2022remap」を見た。
ダムタイプというアーティスト集団にちょっと興味があったので見に行ったのだが、たまたま坂本龍一もメンバーとして関わっっていた。
そこでは坂本龍一による音楽が流れ、また坂本が世界各地にいる友人知人に依頼して録音された世界各地の音が響いていた。
その後、2023年の8月に109シネマズプレミアム新宿という新しい映画館で「バービー」を観た時に、映画の前に坂本龍一が出て来る短い映像が流れた。
この映画館の音響を坂本龍一が監修したとのことで、映像の中で坂本は、自分が信頼しているエンジニア・プロデューサーたちと協力して、正確な音が出るようにとても注意して造られた、おそらく日本で一番音の良い映画館になったと思う、と言うようなことを語っていた。
少し声が出しにくいような、声を出すのに努力がいるような様子だった。
ガンで亡くなった知り合いが、最後の方にこんな感じの話し方をしていたな、と思い出した。
そして今回の「坂本龍一トリビュート展」
坂本龍一の関わった、色々な人たちの作品を、それぞれの作品にあまり集中せずにぼんやりと眺めながら耳をかたむけながら歩きながら、このすべての作品に関わっていた一人の人物が、つい1年前には生きていて、今はいない、ということをなんとなく考えた。
作品というのは、作者が生きているか死んでいるかに関わらず作品として成り立つわけだけれど、この展覧会の場合は、まあトリビュート=追悼ということだから当たり前なのかもしれないが、ついこの間まではいて、今はいない、ということがひどく気に掛かった。
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