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児童生徒が1人1台になったが先生が1人1台ではない?それで良いのか?(良い訳がない!)

昨年は後半からnoteを投稿が失速してしまったので、今年は定期的に書くようにしてみたいと思っています。
今回からは3回ぐらいかけて「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に関連した事柄を書いてみます。
途中で違うの挟むかもですが、そのときはお許しを。

自治体の98%でGIGA端末が整備される

GIGAスクールの環境整備は、2021年3月末までに98%の自治体で端末納品が完了するとのこと。

ただ、上記はあくまで「納品」としての回答で、既に活用がスタートしているか、というとそうではなく、以下によると4/1時点では、約半数で児童生徒への配布がなされていないようです。

この記事で「まだ児童生徒に配布していないのか!」みたいな声が出ていて、話題になりました。
恐らくは2月~3月にかけての納品が多かったことで、設定等を行って新年度になってから配布、ということなのだと思います。全国の現場を見ている側からすると「そうだろうな」ぐらいの感想でした。

一方、この記事でほとんど話題にならなかったのですが、私が注目したのは配布率の次のグラフ、「先生用パソコンの整備率」についてです。

45%の自治体でGIGAでの先生用パソコンが未整備

記事の引用と画像は以下の通り。

児童生徒用と同じ指導者用端末があると、教員も操作に慣れることができ、授業での活用方法を探りやすいが、実際に児童生徒用と同じ指導者用端末が「整備されている」と回答した教員は54.9%にとどまった。

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GIGAスクールの補助金は、児童生徒用の端末への補助金のため、先生用の端末は補助対象外で、自治体が自身で予算化しないと配備はできません。
これは既に交付税措置がされているためですが(なので児童生徒用も1/3にあたる台数は補助対象外であり、全国的に1人1台になっていない要因でもある)、結果、半分近い自治体ではGIGAでの先生用端末が整備されないまま、GIGAスクール元年に突入したことになります。

でも文房具のように児童生徒が自由に活用するのだから、別に先生の端末はなくても大丈夫ですよね。ってそんな訳あるかぃ!

GIGA前に先生用は整備されている?

では半数の自治体では先生用端末がないのか、というとそうでもないです。
元々"交付税措置がされている"と書いていた通り、GIGAスクールの前から整備はされていた面があります。

以下の「学校における教育の情報の実態等に関する調査」の統計を見てもらえれば伺えます。現在公表されている最新は、GIGA前の令和2年3月1日時点の整備数データです。

なかなか読み解くのが難しいかもですが、統計の概要はこちらのPDFを見るのが良さそうです。
この中のP2を見てもらうと(老眼が進行しつつある自分には辛いフォントサイズですが)、例えば小学校の場合、指導者用のPCは計243,445台となっています。この統計のなかでは教員数が403,931人となっているので、GIGA前で2人に1台はありそうです。

GIGA前の指導者用は人ではなく場所に紐づく整備

ただ、この台数の分類を見てもらうと分かるのですが、教員数への整備割合ではなく、表の行は「整備場所(普通教室・特別教室、など)」となっているのが分かります。
パソコン教室の指導者用の多くはPC教室から動かせないデスクトップなどで、先生が自由に教室で使えるものとしては除外でしょうし、特別教室用のパソコンなどもそういう可能性があります。

この統計からは「人」ではなく「場所」に紐づく整備がされていたことが透けて見え、先生方が自分専用として使えていない可能性が高いことが伺えます。

事実、私の妻が勤める学校は、普通教室用と一部の特別支援教室用にパソコンがあり、基本はそこから動かさない運用になっています。
妻は理科専で週3日の非常勤ですが、子供たちが1人1台で学ぶなか、自身のパソコンがない状態で、授業準備・授業実施をしています(家に個人PCはあります)。
もし授業で使う場合は、他の先生から借りて実施しているそうです。ただ、個人PCで授業準備したファイルを、借りたパソコンに入れる手段がないため、勤務時間外に学校に行き、その日に準備し(準備のための準備を家でする)、授業に臨んでいます。

タイトルにも書きましたが、先生が自由に使える端末がないのに、児童生徒1人1台の日常活用を進めることができるのでしょうか?(声高)

一方で校務用端末の整備率は100%超。でも授業では使えない。

先ほどの統計情報のP1を見ると、先生についても人に紐づいた整備率を見ている端末もあります。校務用PCの整備率です(表のFとF/Bの欄)。
小学校で119.9%、中学校で121.0%、その他すべての学校種で100%を超えており、1人1台以上が達成されています。

であるなら「校務用PCを使えば良いのでは?」と思う人もいるかもですが、そうはなりません。なぜなら、校務用PCの多くはインターネットにも繋がっていないし、授業用のネットワークにも繋がっていなく、授業では使えないからです。

校務用パソコンでは、成績処理などの漏れたら非常にマズイ機微な情報を扱うため、ある意味で専用機として使われる格好になっています。
その要因は佐賀県で起こった不正アクセスによる情報漏洩事件を始めとする数々の事案から、国が「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を策定し、成績処理を行うシステムと、授業・学習で使うシステムを分離することを求めたことが要因です。

システムの分離を求めるなかで、どちらのシステムに入れるパソコンが存在すると、システム間を境界を仕切って分離した意味を無くなるため(パソコンが悪い意味で両システムの架け橋になってしまう)、校務用PCは授業用には使えないという訳です。

おわりに...。先生が自由に使えるパソコンは必須。

多くの自治体では、先生1人1台の端末環境が整っていますが、一方でそうではない自治体も多くあるのが事実です。
何度も同じことを書いてしまいますが、先生が自由に使える端末がないのに、児童生徒1人1台の日常活用を進めることは困難です。

Twitterを検索してみても、以下のような声もあがっています

もし先生用の端末を1人1台で整備できていない自治体は、予算取りがとても難しいのは重々承知していますが、先生用端末の整備を急いでいただけたらと思います。

また、私自身ができることとしては、校務用PCを授業で使えるようにするシステム構成の提案を、次回以降でしてみたいと思います。

ぶっちゃけ、文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の参考資料の対策基準例に適合しない内容になりますが、2019年12月にちょこっと改訂したとはいえ、大部分が2017年の記載のままの対策基準例なんて日進月歩のセキュリティ対策のなかでは知ったことではないです(暴言)。

ただ、次回のその記事の前に別の発表などもあるので、そちらの記事が先になるかも、です。
ではまたー。

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