河童33

「血迷うたように儂らに向かってきてな…。びっくりして…持ってた斧で…その薄気味悪い生き物の…腕を切り落として…」
男は「ハァ〜」ため息をいちどつき
「いま、若いのと二人で村まで走っている。…仕返しがあるかもしれんでの。…人数は多いほうが。…儂らはとにかく水路を…水の確保をと…。」
皆がしばらく黙り込む。そして平太が、
「おじさん。その切り落とした腕はどこにあるのさ」
平太の言葉に、最初に声をかけてきた男が、
「ここに···」
腰に下げている袋から、手ぬぐいに包んだものを、もぞもぞと取り出した。
「ほれ。」
手ぬぐいをめくり皆の前に差し出す。
「うわっ」
武と平太の村の者たちは、声を出しながらのけぞり、そして覗き込んだ。
いくら山男たちが胆力のあるものとはいえ、切り落としたかっぱの腕を腰に下げているとは。
その腕は赤い血がながれ、薄汚れた手ぬぐいを染めている。
「そんなに驚き怖がる必要はない。切り落とした腕だ。まだ動いても、襲ってこない。」
武の村に住む男は、軽くそう言うと。
「もっとよく見ろ。本物の腕だ。作り物じゃないぞ。ついさっき切り落とした新鮮な腕だ。ほら、近づいてよくみろ。」
近づいて見ているのは、武と平太、そして平太の村人の一人二人ほど。
他のものは遠巻きに見ている。
「ほら、後ろの者たちも見ろ。本当のことだとよく解る。ほれ。」
覗き込む武たちを退け、うしろで不気味がる男たちへ、切り落とした腕を突き出し見せる。
「おおっ」
腕をちらりと見て、気味悪がり後ずさる。
「みた見た。解ったからもうしまってくれ。」
切り落とした腕を突き出し見せていた男は、満足したように、腕をくるんで腰袋へと大事にしまった。
狩りをするものとして、大事な活躍の証のようだ。

しばらくガヤガヤと各々が喋っていたが、
「おおっ、そうだ。皆で石積みをやろう。かなり崩されているぞ。」
思い出したように一人がいう。
「それは良いが、他に人が集まってからが・・・。仕返しに来るんじゃないか。」
一人が不安を口に出す。
田畑もあつかうが、山で狩りもする武の村のものたち。待つだけの生き方では暮らせぬ、獲物を狩る者たち。
四季により、獣たちから作物守り、得物を振るう者たち。
生き様の多少の差が、多少の意見の違いを生み出す。
「何を言っている。あの不気味な奴らも儂らのことが怖いはずだ。すぐには来ないはずだ。」

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!