河童51

「今更尻込みしてどうする。河童どもはもう動き出したぞ。田の世話が忙しくなる前にかたをつけたがいい。ここは戦の害も少ないし、戦があれば男手は道造りだ何だと駆り出される。
そうなると儂らの村は、戦と河童でどうにもならん。」
血の巡りのよくなった男が一人正論をまくし立て皆の士気を高めてゆく。
そうなるとやる気のある男たちは、
「そうだ。やろうやろう」
騒ぎ始める。
「よし、そうと決まれば早いがよい。早速皆で得物をもって出ていこう」
年寄りになった平太と幾人かを置いて皆がそれぞれに散り、手に得物をもって再度集まってきた。
威勢の良いものを先頭に社に向かい歩きだしていった。

20


坊主は強まる雨の音を聴きながら
腕組み考える。
「うむ」
先程からその一言のみが坊主の口からこぼれている。
そのつど康介は坊主に顔を向け次の言葉を待ち、娘はハットと顔をあげまた下を向く。
康介も真似るように考え込んでいるが、何を考えてよいのか、まとまらず、坊主の知恵にまかせていた。
坊主は不意に上を向き今までよりほんの少し「うむっ」強い一言。
そして「やはり。」
言葉を発してまた黙り込む。
康介は、今度こそよい知恵が働いたかと期待したが、坊主はやはり下を向いたまま考え込んでいる。
その康介はすでに何も考えていない。形だけは考えているが、ただ坊主に期待し、案が浮かぶのをまっていた。
坊主が言葉を出せば期待とともに坊主へ向き、何も言葉がないと、がっかりと下を向く。
坊主はしっかりと考えていた。
村人たちは河童と争いになり、そして和解している。
儂らもなんとか和解を出来るのではないか。
坊主は思わず立ち上がり、うろうろと社のなかを歩き回る。
坊主の動きに驚き顔をあげる康介と娘。
しかし坊主は腕組み歩き回るだけ。
まだ名案無しとみるや康介は静かに下を向く。
娘の方はすでにピクリとも動かなくなっている。
顔は青白く目元は暗くなり、唇がかさつき、最初の青白くも張りのある顔と違い、日に焼けた印象ばかりが強くなっていた。

坊主は相変わらず戸口の前をうろうろと歩き回っている。何度ばかり右に左に向きを変えたか。
「よし決めたぞ。そうしよう。それがよい。」
ピタリと立ち止まり決断を口にする。
「ふたりっ。何かよい策や案はあるか・・・。無さそうだな。わしもない。だが一つ試みたいことがある。異論なければやる。あってもやってみる」

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!