河童32

「見た見た。この子供も見たぞ、この子供が先に見た」
平太の頭をおさえる。
「ああっ、オイラ見た。でも武おじさんも、最初は信じてなかったんだ。」
力を入れてしゃべる平太を無視するように、武の村の男は
「いやいや、それも大変だろうがな、もっと大変なことがあった。」
武の村の男が喋っていると、水路で石積みをしていた男達二人もよってくる。そして話に加わる。
「おお、武よ。無事だったか」
「儂らはすっかり‥‥」
どうやら男たちは武が襲われたものと思っていたようだ。
「それよりも大変なこととは。」
武が話を戻す。
「おおっ、そのことだが」
最初の男が話の続きをはじめる。
「儂ら山からおりてくるのが遅くなってしまい、ついでだからここによって帰ることにしたんだが…少しからかってやろうと思い静かに近づいてきたんだが…」
他の男が話を続ける。
「水路から音がするんだ‥ゴツゴツと…で、水路の手入れでもしてるのこと近づいて……脅かしたんだ……ワッ‥とな。」
男たちは顔を見合わせ頷き。
「いたんだ…薄気味悪い…あれは河童じゃないのか」
静まり返る。
平太の村の男が口をひらく。
「見間違えじゃないのか…」
「イヤッ…河童かどうかは…何か居たのは本当だ」
怒ったように男を睨み返す。
睨みつけられた男も「ナニッ」思わず睨み返す。
「まあ、まあ、落ち着いて。なぁ隣村の、あんたら見たんだろうが、儂らは何も見ていない、あんたらの村の人間だけ見て儂らに信じろと言っても…。」
「おいらも見た」
平太が口を挟む。子供だからといって頭数に入れないのが気に入らないらしい。
口を尖らせ自分の村の男たちを睨みつける。
武の村の男たちは平太の言葉を聞き流し、
「証拠がある。それが儂らの言う大変なことじゃ」
「…。」平太の村の男たちが続きの言葉を黙って待つ。
「その証が…。」
武の村の男が話を続ける
「儂らがこっそり近づいて驚かせたと言うたろう…儂らもしこたま驚いたんだが、驚かされた方も、かなり驚いていてな…ほとんどが走って逃げたが…近くにいた一匹は。」
おとこは一息つき。


自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!