河童 7

娘の話に坊主と康介。
お互い目を会わせ「夢でも見たか」と、口には出さずに言葉をかわす。

坊主は「フン」鼻から息を出すと天井を見上げ考え込んでいた。
康介は若い好奇心と男としての血から、娘の姿形をしげしげと眺めていた。と、眺める娘の胸元は、その康介の若い視線を釘付けにするものが見える。
康介の若く少々血走った目に飛び込んできたのは。
「む、むすめさん。その胸元に・・。」
康介が娘の胸元から目を離さず指ししめす。
康介はしまりない顔で娘の胸元を見つめ、その視線の先へと坊主も視線を移す。
「うっ」坊主も驚き目を見開き、娘の胸元を強く見つめる。
娘は二人の視線が自分の胸に向いていることに慌て、胸元はだけ、肌をあらわにしているかと、左手で胸元隠そうと、右手で襟をただそうと、腕を動かしながら胸元へと目を落とす。
「えっ」
のけ反り、右手を腰の横につき、左手で衿をつかんだり離したりしていた。
はだの露出を想像していたが、其処には血だらけの細い腕が、着物の胸元をつかみ、はだける着物を血に染めていた。
娘の膨らんだ胸元には、腕らしきものが、衿をつかみぶら下がっていた。
「や、いやっ」
娘は息を吸い込むと同時に、それを掴み、そして気持ち悪さから手を離し、息を止めたまま、また掴み勢いそれを引き離し、身から離れた方へ小さく無げはなった。

娘も坊主も康介も、刹那の間、投げ捨てられたものを見つめていた。
見つめる三人。
娘に坊主と康介が目を戻すと、娘はゆっくり眠るように、身体を横に倒していった。
「あっ」
「お、娘よ」
二人はゆっくり娘へと近づき、
「おいっ、おい、しっかりとしろ。おい。」
二人は腕を伸ばせば届く間合いに近づき、娘に声をかける。
目を開けない娘に、康介がゆっくり腕を伸ばし、肩を揺すってみる。
「おい、おい。」
揺さぶりと、二人の声かけに、娘の瞼が動く。目を開けた娘は思い出したように、頭をもたげ投げたものに目を向け、確かにそこにあるのを確認すると、
「あっ・・あっ・・。」
再び目を閉じた。
坊主と康介。また腕ひとつぶんの間合いで娘を見つめる。
康介は娘が投げたものへ興味を移しそちらに近づく、坊主は娘の濡れた身体を気づかい、「風邪を引くかも、起こしたが良いだろうな」
どうするか思案し、刀の先で投げたものを突いている康介へと声をかけた。
「康介殿」
声をかけられびくりとした康介。慌てて刀の先を坊主へと向けてしまう。
「ど、どうしました。」
うわずる声で返答する。
それと同時にばつの悪い顔で、
「あっ・・いや、これは失礼を」
気の小ささから向けた刀の刃先を恥じて、ゆっくりと鞘に戻す。
痛む身体に再び気がついたのか、姿勢をただす動きも痛々しい。

生臭坊主も人の善さは感じさせる坊主。
「康介どの、娘は気を失っている。起きそうもない。衣服も濡れている。」
坊主の言葉の意味を解せずに沈黙がある。
「うん・・・肩と背の方だけでも、私のぼろ着を、濡れ着との間にいれようと思う」
向こうを向いていてくれ。
「・・・。あっ、えー、はい。向いております。」

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!