河童30

歯の抜けた男と隣村の山男の言い争いを観かねた幼き頃の年寄りは、
「おじさんたち何をしてるのさ、そんなことしている場合じゃないよ。他のおじさんたちも、とめなよ。早くしないと水路からいなくなっちまうよ。」
我にかえった幾人かが、子どもの言う通りだと二人をなだめ始める。
「とにかく獲物をもって皆でいってみよう。何かが水路を塞き止めているのは確かだ。」
その言葉に他の男が
「おい、村の連中に山へいくと言ってこい。松明ももらってこい。」
幼き年寄りは、
「わかったよ」
歯切れの善い返事と共に駆け出していった。
「儂らも得物を持とう。」
それぞれがあばら家へとかえっていく。

山の木々の間をいくつもの松明がゆらゆらと歩いて行く。
提灯はぼんやり足元照らし、松明は遠目に見るとゆらゆら漂う何かの魂のように、列を作り、主人の提灯を守る列を作り闇の中を進む。
その中には幼き年よりもたくましく歩いている。
歩いて山を上がり、造り上げた水路とため池を、昼間ならば見渡せるであろう場所までくると、
「しずかに」
先頭の男が脚を止めて身を屈め、後ろの男に小声で伝える。
伝えられた男はそのまた後ろにいる者たちへと小声で伝える。
しずかに耳をすます皆。
コツコツと音がする。
「聞こえるか」
先頭の男が誰へとなく呟く。
「ああ、聞こえる」
「うん、聞こえる」
皆が小声で頷きあう。
皆はどうするか話し合うでもなく、どうしたものかと耳を済ましていると、水路の方から声が響く。
「おい、灯りが見えるぞ。」
「だれだ、誰かいるぞ」
ひとが叫ぶ声が響く。
皆は驚き後ずさる。その中一人「あの声は」としっかり立ち上がり歩きだす者がある。
「おーい儂だ。タケだ。今からそちらにいく」
声のする方へと松明を振るう。
「おー、なんだ。
居ないと思えばそんなところで。隣村のも一緒か。大変なことになってるぞ、はよこちらへ来て手伝え。早うこい」

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!