河童41

「それからじゃよ。こうして夏を真ん中に三度、この社に供えにきているのは。今は日照りがあるとしても、争いなく水を使える。河童が住み着いている川。よそに比べて干上がることも少ない川なんじゃろうな、大雨で厄介なことになる日も少ない。」
年寄りは話し終わると皆の顔を見渡し、一人頷き立ち上がる。

17

「そう言うことで、儂らはこれを置いて帰るから」
年寄りが言うと、荷を担いでいる男が、慌てて荷を床に下ろす。
坊主と康介は顔を見合わせ頷きあい
「お年寄り。儂らはどうしたら善いだろうか」
坊主が尋ねる。

年寄りへと歳月重ねた平太は、首を横に振りながら、
「儂らはかかわり合いたくない。あの腕を切り落としたのがどなたか知りませんが、儂らは河童と共存しておりますから、今さら争いたくもない」
坊主と康介へ目をあわす。
年寄りと目を合わせた坊主と康介。今度は2人で目を会わせ。ゆっくり娘へと目を向ける。
坊主と康介とが向ける目の先へ、年寄り平太も目を向ける。
「なっ・・。娘さんかっ。」
年寄りの言葉に、娘が不安げに顔をあげる。
娘は二度三度細かく頷き、
「わ、私しも恐ろしく・・無我夢中で。・・なにか、どうにか解り会える策はないでしょうか・・。あの時・・。」
娘はとぎれとぎれに言葉をこぼし、百姓たちに事を話し始めた。

「・・・うむ、なるほど」
年寄りは頷き、
「きっと、河童たちは悪戯なのでしょう。暗闇に、若い娘も珍しい。気を引いたのでしょう。悪戯といっても、娘さんにとっては、恐ろしさは・・・。」
年寄り平太は言葉に困り、
「なんと言えば良いか。悪いことに、今日のこの日にこの場所にいる。なんとも・・仲間をやられ供え物も奪われると。畜生より知恵があり、人ではないから、解り会うのも難しい」
年寄りは目をそらし、不憫だとばかりに頷きしゃべる。
うなだれる年寄りに
「それでも何かやりようがあるのでは」
康介が語気を強めて
「何かあるでしょう。たとえば・・たとえば、儂らに悪気はないとか、供え物には手を出さないたとか。伝える何かやりようが・・・。」
年寄りは首をふる。
別の男が鬱陶しいとばかりに、
「どうにもならん。じい様は昔から河童どもとかかわり合っても、儂らなんか見たこともない。年寄りたちが、河童への供え物もだと言ってるから、村の行事としてやっているだけだ。じい様も幼いときに・・・。この歳まであったこと無いようだし。儂らにとっては今日のこのときに、河童は居るのかもと・・・。儂らにはなにも策はない。」

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!