河童38

「眠れるのならば大丈夫だろう」
筵から出ている長の足は見るからに、
「痛そうだ」
顔をしかめて小屋から出ようとするその時。
「はてっ」
戸口に手を掛けるその時、外には気配。足音がする。
「なに・・・。」
武の脳裏に昨夜のことが思い出される。
「もしや」
武は不安に襲われ戸口の隙間を探し不安の元を探してみる。
いたっ。そこには黒いものが見える。でかい。表にはなにかが立ちはだかっているのが解る。近い。
たけは慌て、驚き戸口を手で押さえてカタリと音をたててしまう。
でかく黒いそれが、ゆるりと動き顔を向ける。
その時「モォウー」と牛の鳴き声。
「・・モウ。牛か。」
戸口の隙間を覗きなおし「ウシ」
ウシであることを眼で確かめ。
「ウシ。」言葉に出して安堵の息をはく。
「安心した」
牛の方もいきなりの声に驚いたのか足踏みをしてからだをうごかす。
その動いた牛の胴体より近い場所から
「武よ、ここにいるのか」
声と同時に戸口がガタガタと揺れる。
「おおっ、川向かいの」
よく知る声を聞き、安心と共に戸の閂をはずす。

外には武の村の男と少し若い男が、笑顔でたっていた。
「向かえにきたぞ。さあ、帰ろう」
朝の挨拶もそこそこに、武を促し、寝ている長を起こし、勝手に帰り支度を始める。
「そんなに急かすことなかろう」
武がこぼすと、
「昨夜やつらが村に来た。これといって荒らされたわけでもないが」
とにかく急いでいるのは察することはできた。
「長をウシに」
若者を促し、長を牛の背にのせる。
「世話になってるから挨拶してくる」走り出そうとする武に
「話しはしてきた。ここを教えてもらうとき、事のあらまし話してきた。さあ、早く村に帰ろう。奴らは儂らが目当てだ。ここにも迷惑かかる。」
「おっ、ならば」
戻り、牛の鼻輪をにぎり
「帰ろう」歩き始める。

「なにが、どうあった」
牛の背中から、長が向かえに来たものたちに聞く。
「うん、聞かせてくれ」
武も聞かせろと急かす。
「うん、これといって何か争ったわけでもないが、昨夜儂らが床についた頃合いに、外がバタバタと騒がしくなり、外を覗くと」
話をくぎり、ため息をつく男。
「はぁー、・・・木の枝だなんだと手に握れるものを引き摺りながら、やつら走り回っていて、それ見た女子供が、泣き叫ぶは悲鳴をあげるやら、騒がしくなってな。みなが狼狽えて・・・。」
深呼吸をして話を続ける。
「奴らは騒ぐだけが狙いなのか、皆が覚悟決めて表に出ると、あっという間に居なくなってしまった。」

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!