河童49

年寄りは
「おおっ迎えが来たか。はよ渡らしてくれ。楽にしてくれ」
言葉に出てるか心で思うか、そう願う。
「平太じぃよ。じい様。起きろ」
「うっ」
身体を揺され火の玉がみえる。
火の玉の向こうに何かがみえる。
瞼が開いているのか、よくよく見ると。
「なんだ。村の者か」
年寄りは我が身が気を失っていたことに気づいて起き上がろうとする。
辺りを見回せば、先に死んだとは思えない顔ぶれが年寄りを囲み覗き込んでいる。
「なになに、今あの世へと向かう途中と想えば・・。村に帰ってきたか。」
まわりには知った顔がいくつもある。
なかには自分の孫の顔もある。
「まだ村の手前だ。じい様がいるのは戸板の上だ。」
戸板を担ぐ男の一人が後ろから声をかける。
前で担ぐ男が、
「河童に襲われたのは本当のことか、大の男が血相変えて、じい様が喰われていると叫んでいたが。」
「喰われてねぇが、河童は出た」
戸板の上で呟き、さらに言葉を繋げる。
「・・大変かもしれん・・・。」
回りを囲む男たちを目だけで見回している。


男たちは身体に軽い傷をおい、その治療も終わらぬうちに皆の前に座り。
「あとで話せ」
その言葉も無視をし、月が出たり隠れたり、雨が降ったりやんだりの間の出来事を、笑われながらも話していた。
「だから、年寄りたちが言っていた河童の話しは本当だ。儂らは出くわした。背中に組み着かれ喉元を噛まれもしたぞ。」
「だから言っておるだろう。幼き頃は河童どもと争いがあり、河童どもと手打ちをして、こうして供え物をしていると。」
一気にしゃべる疲れから一度息を吐き吸う年寄り。
「毎回供え物がきれいさっぱり消えるのは、旅の者や山猿が食べていた訳じゃない。河童が全部腹に納めていた。それと引き換えに日照りでも水をなくさず、大雨でも水がでずに過ごせている。」
年寄りが話すあいだ喰いつかれた首もとを見せて回っている男が、
「この傷が証拠だ。みろ。みろ。」
「そうだ。見てやれ。」
河童に出会った男たちは、見ろ見ろとうるさい。
「まぁ、河童がいたとしよう。」
一人が話をまとめにかかる。
「居たとしよう。じゃない。居た。」
「儂だってみた。」
「儂らは幼き時より居ると云っておるぞ」
河童にであった男たちは仮定の話を許さない。
「わっ、わかった。うん、河童に出会った。まず、河童はいるのだろう」
男が話を進めるために河童を「居る」と認めて話す。

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!