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現金過不足って何?公認会計士受験生のための基本と実践的な処理方法

「現金過不足」と聞くと、少し複雑に感じるかもしれませんが、実は誰にでも起こりうる身近な事象です。たとえば、会社で通信費を毎月払っていたのに、ある時その支払いが会計上で未処理のままだったとしましょう。実際にはお金は支払われているのに、帳簿上ではその支出が記録されておらず、後から確認したときに「現金の額が合わない」と気づくことになります。このように、日常業務の中でも簡単に発生するのが「現金過不足」です。

公認会計士試験では、このような「現金過不足」に関連した問題がよく出題されます。仕組みを理解しておくことで、試験問題にも落ち着いて対応できるようになります。この章では、現金過不足がどのように発生するのか、その定義と原因をわかりやすく解説し、実際の試験で応用できる力を養っていきましょう。

現金過不足とは?基本の定義を押さえよう。

現金過不足とは、現金の帳簿残高と実際有高を照らし合わせてみた時に金額が一致しないことを指します。帳簿残高より実際の金額が多い場合を「現金過剰」、逆に帳簿残高より実際有高が少ない場合を「現金不足」と言います。これらを合わせて「現金過不足」と呼びます。

この現象は、経理や会計に携わる人なら誰もが経験する可能性がある身近な問題です。たとえば、あなたが経理担当者で、ある月の通信費として5万円を支払ったとしましょう。しかし、その支払いが会計ソフトや帳簿に記録されていなかった場合、実際には支払ったお金が減っているのに、帳簿上では支出が反映されず、現金が足りないように見えてしまいます。このようなとき、帳簿残高と実際の金額に不一致が生じ、「現金不足」となります。

また、逆に帳簿にミスで重複して支出を記録してしまった場合も、現金過不足が発生します。たとえば、従業員が交通費の精算をした際に、すでに支払った分を二重に記録してしまったとしましょう。この場合、帳簿上はその金額が引かれているのに、実際の現金はそのまま残っているため、今度は「現金過剰」として扱われます。

現金過不足は、一時的な記録ミスや管理の不備によって発生することが多く、頻繁に生じるものです。企業ではこれを防ぐために、定期的に帳簿残高と実際有高を確認し、差異があれば速やかに原因を突き止める必要があります。

試験においても、現金過不足の仕組みや発生原因を理解しておくことが重要です。具体的な問題として、仕訳を求められることが多いため、この基本をしっかりと押さえた上で次の章に進んでいきましょう。

現金過不足の実践処理法:ミスを防ぐための正しい対処法

現金過不足が生じたときは、まず帳簿上のお金の残高を、実際にあるお金の金額に合わせる必要があります。つまり、帳簿で記録されている金額と実際に手元にある金額が一致するように調整しなければなりません。

具体的には、帳簿と現実のお金の金額が合わない場合、その原因を調べます。しかし、すぐには原因がわからないことも多いので、その間、帳簿と現実の差額を「現金過不足」という項目で一時的に処理しておきます。そして、後日原因が判明した時に、その差額を適切な項目に振り替えて記録し直します。

一方で、原因が最後までわからない場合もあります。もし帳簿上の金額よりも実際のお金が少ない、つまり「現金不足」の状態になっているときは、その不足分を「雑損失(または雑損)」という費用の項目で処理します。これは、会社の損益計算書という書類の「営業外費用」と呼ばれる部分に記載されます。

逆に、帳簿上の金額よりも実際にお金が多い場合、つまり「現金過剰」が発生した場合は、その余ったお金を「雑収入(または雑益)」という収益の項目で処理します。この場合は、損益計算書の「営業外収益」に表示されます。

大切なことは、決算のときには必ず現金過不足を解消して、他の項目に振り替えなければならないということです。したがって、決算が終わった後の帳簿には「現金過不足」という項目が残っていないはずです。これにより、現金過不足は会社の財務書類である損益計算書や貸借対照表には表示されません。

現金の帳簿と実際の金額を照らし合わせる作業は、決算時だけでなく、毎日や毎週末、毎月末に行うこともあります。だからこそ、決算が始まる前の試算表には「現金過不足」という項目が存在していることがありますが、最終的には解消される仕組みになっているのです。

試験での出題傾向と攻略法

この章では、現金過不足に関する問題がどのように試験で出題されるのか、その傾向と攻略法について解説していきます。特に仕訳問題がよく出題されるため、以下の問題を通して、正しい処理方法を身につけていきましょう。

まず、現金過不足に関連する基本的な問題から挑戦してみましょう。

問題 1:
販売費30,000円を支払った際に、誤って50,000円と記帳していた。この場合、どのように修正仕訳を行いますか?


解答
現金 20,000 / 販売費 20,000


この問題では、実際には30,000円しか支払っていないのに、帳簿上では50,000円と記録されていたため、差額の20,000円を現金として補正し、販売費も正しい金額に修正しています。


問題 2:
決算時に金庫の現金を調べた結果、実際の現金は9,000円でした。帳簿上の現金勘定の残高は10,000円です。この不一致額の原因を調査したところ、期中に通信費800円を現金で支払ったが未処理であったことが判明しました。また、残りの200円については原因が不明でした。これをどのように処理しますか?



解答
通信費 800 / 現金 800
雑損失 200 / 現金 200


このケースでは、期中に未処理だった通信費800円を現金から差し引きます。さらに、原因不明の200円の不足分については、雑損失として処理します。

これらの問題を解くことで、現金過不足に関する処理方法をしっかりと身につけることができます。試験では、直接仕訳を書く問題が出ることは多くありませんが、雑損、雑益が問われた際仕訳が頭の中でできるようになるとより点数が安定するでしょう。原因が判明した場合と判明しない場合の処理の違いも理解しておくことが重要です。問題を解いた後は、仕訳の正確さを確認し、同様の問題にも対応できるようにしましょう。

現金過不足をマスターして確実に得点!まとめと重要ポイント

これまで学んだ内容を端的に振り返り、試験対策として押さえるべき重要なポイントをまとめます。特に、実際有高と帳簿残高のすり合わせや、雑損・雑益に関連する知識が問われやすい点に注意しましょう。

現金過不足の定義

帳簿残高と実際有高の不一致を「現金過不足」といい、帳簿より現金が多い場合は「現金過剰」、少ない場合は「現金不足」となる。

原因が判明した場合

不一致の原因が特定できた場合、適切な勘定科目に振り替えて処理する。

原因が不明な場合

・現金不足(帳簿残高 > 実際有高)は「雑損失(または雑損)」として処理する。
・現金過剰(帳簿残高 < 実際有高)は「雑収入(または雑益)」として処理する。

決算時の処理

決算時には、現金過不足勘定を必ず他の勘定科目に振り替え、残高をゼロにする。

試験での出題傾向

仕訳問題そのものが多いわけではないが、雑益や雑損が問われる場面が多く、仕訳を正確に行えることが重要。また、実際有高と帳簿残高のすり合わせを的確に行えるようになっておくことが望ましい。


これらのポイントを理解し、試験での出題に対応できる準備を整えましょう。

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