とこや

カット&パーマ

髪が伸びたので床屋に行く。


やはり、行くのは面倒くさい…。


明日になったら地球が滅亡するかもしれない。だから、明日になったら、ちょっと様子を見て、滅亡しなさそうだったら行くことにしよう。


こんな感じで理由をつけては先延ばし。

実際に明日になったらなったで、時間軸的に明日は今日、ということになるから、そこを起点に、改めて明日の滅亡について、憂いては先延ばしにした。


幾日過ぎても、一向に地球は滅亡しない感じだったので、やむなく床屋に行く羽目になった。


往来を歩くと、すぐに床屋は見つかった。

高速で回転する赤白青のサインポール、カット&パーマ、と、大書してある看板。



カット&パーマ


この看板のせいで、入店するか否かを考えあぐねた。


カット&パーマ、ということは、その意味を捉えれば


カット、且つ、パーマ


になる。


更にどういうことかを考えると、これは髪を当人が希望する尺に切り整えたのち、パーマをあてて縮毛させる、ということである。


ここで問題になるのは、自分としては、カットはしてほしいがパーマはしてほしくない、ということであり、もし今この床屋に入店すれば、然るべき尺に切り整えられたのち、パーマをあてられ、当初のイメージから大分、かけ離れた仕上がりになってしまうことが予想された。


なぜ


カットorパーマ


じゃないんだ。


看板を見上げながら、床屋の店主に対して、怒りを覚えた。

とはいえ、床屋の店主は、自店の経営方針に従って、カット&パーマ、という形式で、サービスを提供しているだけであり、その経営方針に対して、株主でもない自分が口を出すことは出来ない。


カットorパーマにしてもらうには、この床屋を買収、もしくは、発行株式の過半数を取得したのち、株主総会で議決権を行使するほかない。


到底、そんな資金の都合はつかないし、第一、未上場の会社が、一見で入店してきた自分に対して、株式を譲渡する、なんてことは、まず考えられないだろう。


とはいえ、髪は切らねばならない。しかし、この近辺には他に床屋はない。


もういい、俺の負けだよ…


戦いに疲れた自分は、潔く入店した。


「今日はどうなさいます?」


席に通されるなり、涙目で言った。


「カットとパーマで。JACKSON 5時代のマイケル・ジャクソンみたいな感じでお願いします」


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