仏を彫る
はじめまして、プロデュース部新人の岩崎です。
一月からの中途採用なので新卒組より古めの新人ではありますが、プロ部では最新ゆえ当分フレッシュぶってゆく所存です。
ところで皆様。仏、彫ってますか?
僕は彫ってます。彫りに彫ってます。念のため言っておきますが背中ではなく木にです。
今日は私が仏を彫るに至った経緯と、初めての木彫り挑戦記を語らせていただこうと思います。
私が仏を彫ろうと思い立ったのは今年の一月、ティラノに入社して間もない頃でした。さながら天啓のごとく、朝の通勤電車の中でふと「仏、彫ろうかな」と思い浮かんだのです。
思いついてみれば、なぜ自分が仏を彫らずに生きていられたのか不思議でした。生まれついての蚤の心臓と、中二の時分から一向に衰えぬ自意識、
加えて天気痛と胃痛と慢性鼻炎と扁平足を併せ持つ、自律神経常時ガタガタ勝手に人生ハードモードのこの俺が、御仏にも縋らず生きようなどなんと怠慢だったのだろう! 一刻も早く彫らねば!かくして私は都営三田線に揺られながら、彫刻刀と木材、それから教本をポチったのでした。
数日後、彫刻刀が届きました。木材と教本は少し遅れるようです。
到着を待つ間も惜しい私は、木材を求めてLoftへ走りました。
薄い木板しか売っていなかったのは誤算でしたが、人生何事も妥協です。習作と思って2D気味の仏を彫ることにします。
さて、習作とはいえ題材は重要です。一言に仏といっても膨大な数がおられます。あれこれ迷った末、実家の菩提寺が浄土宗だと思い出し、ご本尊である阿弥陀如来立像に決めました。
ではいよいよ彫刻です。
ググった画像を見ながら下絵を描いて、図工の授業の朽ちかけた杵柄を頼りに彫刻刀を振るい……
そうして出来上がった作品がこちらです。
どうでしょう。自分としては、ぶっつけ本番にしては中々なのでは?と概ね満足です。厚みと大きさが気がかりでしたが、これはこれで悪くない気がします。
私の家の台所には線香立てだけのエア仏壇があり、お茶を供えて手を合わせるのが毎朝の日課なのですが、そこに置くのに丁度いいサイズ感です。
とはいえ反省点も多くあります。
特にこの、どことなく頭でっかちなフォルムはいただけません。
頭身のバランスが悪いせいか、立像なのに自立しないのも残念です。
下絵はフリーハンドではなくカーボン紙を使った方が良いと学びました。
こういった反省を活かして、早速二作目と参りましょう。せっかく薄い木材を買ったのですから、次は版画と洒落込むことにします。
教本はまだ届きませんが、下手の横好きはハナから上等。いざいざエラーのためのトライです。
それでは版画の題材選びです。
前回が穏やかな表情の阿弥陀様だったので、次は凄くて強くて格好いいタイプで行きたいと思います。
カッコよさとなると、やはり有名どころは不動明王でしょうか。しかし阿修羅も捨てがたい……。
などと悩みに悩むこと数日、ついに「これだ!」という題材が浮かびました。私は勇んで板を彫り、悪戦苦闘の末に完成した版画がこちらとなります。
『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』です。
スゴい。そしてカッコいい。強靭無敵は言うに及ばず。
厳密には仏ではありませんが、誇り高き決闘者の正妻の前にそんな瑣末事はどうでも良いでしょう。
それに神を生贄に顕現したこの龍であれば、神仏に劣らぬご加護があること請け合いです。
というわけで早速インクを塗って刷っていきます。
美しい……。
この気高く美しい龍を、私の手が作り出したことが信じられません。自分に喝采したい気分です。
私は水属性使いなのでデュエルで使うことはありませんが。
さて、そんなこんなで初めての木彫り、初めての版画に挑戦してみた私ですが、真面目な話、仏を彫るのは精神衛生的にすこぶる良いです。
誰もがジェネラリストでマルチタスカーであることを求められるこの時代、
物言わぬ木材ひとつと無心に向き合う時間には、自分自身を調律するような静かな悦びがありました。
まあ正直最近は飽きてきてそんなに彫ってはいませんが、別にそれで良いのです。家に彫りかけの仏があり、彫ろうと思えば彫れる状態であることが重要なのです。それが心の余裕を生むのです。
なんて書くと同僚の「お前そんなに心の余裕ねえだろ」という声が聞こえるようですが、逆に考えて頂きたい。
仏がいるからこの程度で済んでいるのだ、と。
ではまたいずれ。皆様にも御仏の加護があらんことを!
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