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【近接戦闘】証言紹介ー文革期の近接戦闘重視

文革期の中共軍を訪問した方の証言を見つけた。

出典:山田慶児『未来への問い 中国の試み』筑摩書房、1968年。



証言紹介

訪問先:「陸軍第一九六師団」
駐屯場所:「北京と天津のあいだ」
この師団の前身は日中戦争下で作られたゲリラ部隊であり、これが発展してゆき、国共内戦中に師団となったようだ。朝鮮戦争にも参戦している。
歴史ある精鋭部隊だと思われ、海外からの視察者(証言者)を招いている点からも考えると、当時の中共軍における模範的部隊だと思われる

師団内部に簡易的な修理工場や機動的な「修理兵」がおり、こわれた兵器を修理できるようだ(前掲書115項)。

近距離戦闘を重視

中共の「参謀長」が興味深い発言をしたようなので、紹介する。

参謀長の話によれば、林彪の戦争にたいする基本的な考えかたは、「戦争を最終的に決定するものは最後の一〇〇メートルからニ〇〇メートルである」、というところにある。「たとえ数千キロメートルの遠方からロケット弾が飛んできても、最後はやはり一〇〇メートル、ニ〇〇メートルの問題です。だから、これ以内の範囲の戦術をすべて習得しなければなりません。わたしたちは、接近戦と夜戦とニ〇〇メートル以内の戦争のしかたを訓練します」。

前掲書、115項。

同様の主張が中共内部で行われていたという記録は、以下にもある。

この「参謀長」の発言は、あくまでも歩兵部隊を訪問したさいの証言である点に注意したい。
歩兵部隊は近距離戦闘を重視していたのかもしれないが、同時期の中共軍には核兵器のような現代兵器を運用している部隊もあった点に注目したい。
「すくなくとも歩兵部隊では、近接戦闘が重視されていた」とから見るべきだろう。

訓練内容

「日本軍のものとそっくり」と証言者が述べるような「白兵戦用の銃剣術」が訓練されていた(前掲書116項)。

以下は、訓練における各兵器の射程距離である(前掲書115-116項)。

「五連発の小銃」(半自動小銃):標的は150 mに配置。
手榴弾:50 m程度が平均的で、60 m程度投擲する兵士もいるようだ。
82 mm迫撃砲:標的は250 mに配置。

※演習場は「四〇〇メートル四方くらい」と小規模である点に注意。
※なお、距離は証言者の目測である可能性も否定できず、参考程度に見るべきである。



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