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フリーライターはビジネス書を読まない(63)

人妻を2~3日預かる

たった一度会ったことがあるだけの人妻を、独り身の自分の部屋に、2~3日とはいえ滞在させていいものか。
近所はどう見るだろう? いや、近所の目なんかどうでもいい。勝手に下衆な想像をさせておけばいいのだ。

柳本聡美の旦那は?
旦那が許したのは「柳本聡美が京都に住むこと」であって、その前段階である私の部屋で2~3日一緒に過ごすことは想定していないはずだ。
これを口実に、やんわりと断ろう。代わりに安いビジネスホテルでも探してあげたらいい。

その旨、さっそくメールを打った。
返事はすぐにきた。
〔夫にはすべて話してあります。平藤さんが承知してくださったら2~3日滞在させてもらって、京都で部屋探しをすることも〕

うむむ……、先手を打っていたか。
しかしたった2~3日の滞在とはいえ、女性ひとり受け入れるとなれば、部屋の状態がこのままでいいわけない。お互いのプライバシーを確保するための仕切りが必要だし、なんといっても大掃除をしておかないと、とても見せられたものじゃない。
正直いうと、めんどくさい。
それに寝具はどうする。まさか持参しては来ないだろうから、今あるものをシェアすることになるが、もう10月だし、たぶん足りない。

柳本から続報がきた。
〔夫も平藤さんによろしくといってます〕
ホントかな。
なんだか、しだいに逃げ道を奪われているような感じがしてくる。

考えた末「本当に2~3日だけね」と念を押して、京都で部屋探しをするあいだ、我が家に滞在することを了承した。
なるべく早く部屋が見つけられるように、京都に土地勘のない柳本に同行しなきゃならんだろうな。
そうなると問題は、いつ来るのだ? 柳本の勢いだと「明日行きます」といいかねない。こっちにも準備があるから、10月いっぱいは無理だと伝えた。

翌日から、柳本を迎える準備に取り掛かった。掃除は直前にやるとして、とりあえずは柳本が寝起きするスペースをつくらないといけない。

幸いというか偶然というか、我が家は高さ180センチあるロフトベッドを使っている。ベッドの下を空けて、柳本のスペースにしてもらおう。身長が150センチもない柳本には十分な高さだろう。
そうなると、寝具をどうするか。これは実家から「友達が泊まりに来るから」と適当に言い訳して、ふだん使っていない厚手の毛布を2枚借りてきた。

あと必要なものは何だ?
多少の収納スペースもあったほうがいいのか。押入れを整理したら、若干の隙間が空いたから、必要ならここを使ってもらおうか。

そんな作業をしつつ、スーパーのバイトも続けていたし、ときどき入ってくる原稿依頼にも対応していた。

そして田山からは相変わらず、行きつけの風俗嬢を口説き落とす相談のメールが来る。
〔あの子は諦めた。別の子が好きになった〕
いや、もう知らないから。そういう相談は受けられないといってるのに。
〔相談料を払うから、必ず口説ける方法を教えてほしい〕
そんなこといわれても、ムリなものはムリ!

田山のメールに辟易していたら、柳本から何日ぶりかでメールがきた。
〔10月31日にこっちを発ちたいと思います。よろしいですか〕

大阪行きの飛行機が取れなかったので、いったん名古屋へ降りて。新幹線で大阪へ向かうという。飛行機の時間の都合で、新大阪着が午後11時半頃になるらしい。
迎えに行って、うちへ連れて帰ってきたら日付が変わってるのか。まぁいいか、2~3日の辛抱だ。
OKしたと返事を出し、それから約1週間かけて部屋を隅々まで掃除した。

10月31日、準備にぬかりはないか。あらためて点検する。ベッドの下、寝具、掃除の漏れはないか。
すべてよし。
あとは夜になったら新大阪駅まで迎えに行くだけ。

昼過ぎに、柳本から短いメールが来た。
〔いざ始動。よろしくお願いします〕

これから先の展開など予想できるはずもなく、時間は淡々と過ぎていく。

(つづく)

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