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酔夜

散々に呑んだ午前5時、川沿いの道をひとり歩く。
ついさっきまで滅茶苦茶に盛り上がっていたのに、所在不明の自己嫌悪感に襲われる。
これも賢者タイムと呼ぶんだろうか、なんてどうでもいいことが頭に浮かぶ。

今夜の出来事を思い返す。
最初は高校からの友達ふたりと予約してあったこの辺ではちょっと高めの寿司屋に入り、子供のことだったり税金とか年金とかこれからの生き方だとかの話をカウンターで握りをつまみながら静かに語っていた。
いつもよりも心なしか日本酒が酔いを進めていたような気がする。

2件目のBARでは煙草をつまみにウイスキーのロックを呑んでいると、おまえもそろそろ煙草やめろよ、って説教をくらった。
1時間くらいしてふたりは、明日も朝早いから、と言って帰って行った。
なんだよおまえらつまらねえ大人になっちまったもんだな、って負け犬のように吠えてふたりと別れた。

そのまま3件目の40代半ばのママがひとりでやってる呑み屋に向かったのが23時頃、カラオケの音が出迎えてくれた。
カウンター8席しかない店内は見慣れた顔が並んでいた。
ボトルキープしてもらっている麦焼酎を水で1対1に割り、お通しのスルメイカをしゃぶりながら啜った。
美人な顔に似合わずTHE BLUE HEARTS好きなママが「ロクデナシ」を歌い始めると、オッサン連中に混ざって拳を突き上げながら怒鳴り声のような合いの手を入れていた。
自分でも「終わらない歌」を歌った。
それからTHE BLUE HEARTSしばりのカラオケを皆で順番に回しながら一頻り歌い、そろそろ店を閉めるよ、というママの声で店を出た。

一緒にいた常連客達と一緒に夜中から始まる店へと向かうと、先程の店のママもあとからやって来た。
先客のカップルとその店のママでBack numberの「スーパースターになったら」とか「高嶺の花子さん」とか歌っていたので、自分はおでんの大根と竹輪と昆布それからお茶割りを注文してから「幸せ」と「ハッピーエンド」を歌った。
帰り際、謎の名刺交換会が始まり、3件目のママとハグをして別れた。

そのままタクシーに乗り込んで帰る気にはなれず、川沿いの道を歩いている。
川の水面に映る街灯の光が綺麗で堤防によじ登って覗き込む。
しばらく水面を見つめていると、このまま飛び込んでもいいような気になってくる。
試しに堤防の上に立ち上がり歩いてみて、そのままよろけて深い川に沈んだらそれまでだと思ったが、案外しっかりと真っ直ぐ歩けてしらけてしまい道路側に飛び降りた。
何故だか鼻の奥がツンとなったので、上を向くと星の瞬きが自分のことを嘲笑っているかのように見えた。
少し明るくなりかけてきた空にうんざりとした。



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