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出張から予定より一日早く家に戻ると寝室では妻と間男が裸で戯れていたんだ!

私、28歳。
4年前に妻とは出会い、大恋愛の末にこの人しかいないと心に決め、2年前にプロポーズ。
無事オーケーをもらい結婚。
コロナ禍だった為、結婚式を挙げたのはつい3ヶ月前。
結婚して半年で、子供ができた時のために狭い敷地ながらも2階建ての家を建てた。
親に頭金となる全体の4分の1のお金を援助してもらえた。
妻は27歳。今年に入って勤めていた会社を辞めた。現在、専業主婦。
特別な美人という訳ではないが、明るく笑顔が素敵な妻との生活は控えめに言っても最高にハッピーだった。

「そろそろ子作りでも始めよっか」と言い始めたのは妻の方から。
毎日、体温を計りながら的中しやすい日を探っていた。
一週間の出張の予定が入ったその前日、私は妻に導かれるようにして子作りの儀式を終えた。
「今日の夕飯のあとでするよ!」と朝から言われていたが、正直はじめから宣言されるとなんだか怖いような恥ずかしいような思いで、なかなか直ぐに家に帰るのは躊躇われ、同僚を誘って会社の近くの居酒屋で一杯ひっかけてからようやく玄関の戸を開けることができたのであった。
食卓にはレバニラ炒めや牡蠣フライなどの精がつきそうなもの、それから子持ち昆布、終いにはどこから手に入れたのかスッポンの血液入りのワインまで並んでいて更に恐怖を感じちゃったりしたものだった。
子作りの儀式が始まると、最初は全くエッチな気分になれなくて戸惑っていたのだが、普段とは違う積極的な妻の姿に次第に興奮して、最後は長いオーガズムと共に果てたのだった。

いやいや、そんな事は今となってはどうでもいい事だ。
問題は出張から帰ってきた昨日の出来事だ。

私の職場は九州で一番大きな都市にある支店で、私は営業職。
年に一度、11月に各支店から数名づつが都内の本社での研修に集まる。
その研修に今回は私も選ばれた。
今年は営業成績が良かったので、支店長からの推薦をいただいたのだ。
6泊7日の研修旅行のうち5日間はみっちり研修で、5日目の夜には恒例の大宴会があり、6日目は自由に観光して次の日の新幹線で帰宅するという流れだった。

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私は他の支店の社員からの刺激を受けながら、必死に研修を受けた。
他の支店の人とも徐々に打ち解け有意義な時間を過ごせていた。
おかげで、大宴会でははしゃぎ過ぎ、飲み過ぎてしまった。
6日目の朝、支店長から都内めぐりのバスツアーに誘われたが宿酔いで頭が痛く、お誘いを断った。
私はホテルのチェックアウトぎりぎりまで寝て、東京駅でうどんを啜ってから一日早く新幹線へと乗り込んだのだった。

新幹線の中で1時間ほど眠ると、気分はだいぶ良くなってきた。
売店で買っておいたポカリスエットを一気飲みしてからトイレで小便と一緒にアルコールを放出した。
元気を取り戻すと、早く妻に会いたくなった。

🚅 🚅 🚅 🚅 🚅 🚅 🚅 🚅

玄関の鍵を開けようとキーをまわすと既に鍵は開いていたようで、右手にはなんの引っ掛かりも感じなかった。
まったくもう無用心だなー、って呟いてからドアを開けて中へ入った。
なんだか違和感を感じて、その違和感の正体を探るように辺りを見回した。
違和感の正体は足元にあった。
自分の物とは違う革靴。
私は音をたてないように静かに靴を脱ぎ、スーツケースを下に置いた。
自分でも不思議なのだが、なぜかスーツケースを開けて、東京駅で慌てて買った土産の〈東京ばな柰〉が入った袋を取り出していた。
(怪しい雰囲気を感じる一方で妻に土産を渡さなければ、という思いが働いたのかもしれない)
居間の戸をそっと開ける。
妻はいない。
キッチンを覗く。
やっぱりいない。
そこで2階からの気配に気付く。
2階は寝室だ。
ゆっくりゆっくりと階段を上る。
普段の妻からは聞かない獣のような声が聞こえてきた。
一瞬たじろぐ。
間違いなくアレをしている声だ。
寝室の前まで這うようにして進み、暫く聞き耳を立てる。
ベッドの軋む音と獣の喘ぐ声に混ざり、男の声がする。
妻を呷るように卑猥な言葉を吐いている。
私は憤りを感じながらも動けずにいた。

獣が一際高い唸り声をあげたあと、ベッドの軋む音は止んだ。
ジッポの蓋を開ける音で自分の意識も戻ってきた。
部屋でタバコを吸うのを妻が嫌っていたから自分はタバコはやめたのに。
そんなとこでスイッチが入った。
私は寝室のドアを思いきりよく開け、部屋に押し入った。
この時も〈東京ばな柰〉の袋は片手にしっかり握っていた。

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驚いた表情でこちらに振り向く妻。
妻は慌てて布団で体を隠した。
同じく目を見開いてこちらを向く間男。
間男の開いた口からはタバコの煙がゆっくりと吐き出され、歪んだ輪っかを作って空中を彷徨った。
間男の顔に視点を合わすと、それはよく知った顔だった。
同じ支店の後輩。
歳は2つ下で、人懐っこくてよく私に懐いていたので、一緒に呑みに行ったり、一度は家にも連れてきた。
くそっ、あの時からかっ!

しかし、間抜けに宙に浮かぶ煙のおかげで冷静になれた。
(あとから考えると全く冷静ではなく、変なスイッチに切り替わったという感じなのだけれど)
「お楽しみのところ失礼します」
後輩間男は持っていたタバコを飲みかけのペットボトルの中へつっこみ「せ、先輩っ、どうして……」
と口にしながらベッドの向こう側に落ちている自分のワイシャツやらパンツやらを掴んで股間を隠す。
妻は私と後輩間男とを交互に首を振って見ている。
「違うの、違うんだってば……」
こういう時って決まってそう言うんだな、と思い笑えてきた。
(実際に嫌な笑い方をしていたと思う)
後輩間男が突然、私の脇を通って逃げ出そうと走り出す。
私は咄嗟にジャイアントババを彷彿とさせる16文キックならぬ、11文弱キックを後輩間男の肩めがけてお見舞いしてやった。
後輩間男は私の思った以上に吹っ飛んで、テレビの台にしこたま腰を打ちつけた。
テレビは勢いのついた後輩間男に倒されて画面に傷が入ってしまった。
「やめてーっ」と叫ぶ妻。
腰を押さえながらうずくまる間男。
こちらに尻を向けているので肛門までまる見えだった。
「じゃあ、話を聞かせてもらいましょうか」
「でもまず、ふたりともここに並んで正座してね」
妻が訳のわかっていないような顔でこちらを見る。
後輩間男は痛がりながら頭のてっぺんを床につけ、逆さの景色で私を睨んでいる。
「さあ、早くっ!」
私が少し強めの口調でそう言うと、妻はビクッとしてから下着を着けようとした。
「はい、ダメですよ勝手なことしちゃあ。誰が着ていいと言いましたか?!」
妻も私を睨み返してきた。
私はベッドの上の妻に近より、腕を掴んで床に引きずり下ろした。
妻は観念したのか、おとなしく正座した。
片手に持っていたレースつきの白いパンツで股を隠していた。
後輩間男はまだうずくまったまま動こうとしないので、髪の毛を掴んで引っ張り引き摺って、妻の横に並べた。
後輩間男のまだ濡れたままのアレが、可哀想なくらい縮こまってしまっていた。
「おまえのその汚いもん見てたかないから、ソレ、股に挟んで隠しとけ」
後輩間男はこれには素直に従い、右手で粗末なモノを押し込み股で挟んだ。
手に液体がついたようで自分のパンツで拭き取っていた。
床に正座して並んだふたりは、これ以上ないというくらいの情けない顔をしていた。
「はい、ふたりとも持っている物を脇において」
もうふたりとも抵抗する元気はないようだ。
各々の持っている下着を脇に放り投げた。
「それじゃあ、言い訳でも聞きましょうか?」
ふたりとも黙り込んでしまった。
そこでようやく土産袋を持ったままだという事に気づき、袋から〈東京ばな柰〉を出した。
包装を破り蓋を開け、中から〈東京ばな柰〉本体を掴んでふたりに放り投げた。
「はい、お土産」
〈東京ばな柰〉はふたりの顔や胸に当たり、床に落ちた。
ひとつが男の膝の上に残って笑いそうになったけど、それはあまりに下品でしょ、と思えて堪えた。
ふたりの沈黙は続いている。
「あれっ、違うの、って言ってなかった? 何が違うのか教えてよ」
妻は下を向いて目を合わそうとはしない。
「かわいい後輩君、キミにはゼッサン妊娠中の奥様がいらっしゃいましたよねえ」
「先輩、お願いです。妻には、妻にだけは絶対に言わないでください」
後輩間男君はがばっと頭を上げると首を振りながら、そう懸命に訴えた。
それを聞いた我が妻は叫びながら隣の後輩間男君に掴みかかるのだった。
「あんた、奥さんとは別れて私と結婚するって言ったじゃない。私だってこの人と別れるために離婚届もらってきて、もう自分のとこは記入してあるのに。それに奥さんが妊娠してるってなによっ! 奥さんともしっかりやることやっておきながらその手で私の体も触っていたなんて最低っ、汚らわしいったらありゃしない」
私は手を叩きながら笑ってしまった。
「おまえ、よくひとのことそれだけ言えるなあ。おまえだってついこの間、子供が欲しいからって言ってオレとやったばかりじゃないですか」
妻は奇声をあげながら白状し始めた。
「子供ができたって言えば、このひと、もうぐずぐずしないであの女と別れて私と一緒になってくれると思ったのよ!!」
私は心底呆れ果て、馬鹿馬鹿しくなってしまった。
「もういいよ、じゃあおまえらもう好きにすればいい。で、もらってきた離婚届はどこにある?」
「そこの私のバックの中」
妻は不貞腐れた顔で言った。
私は妻のバックを漁り、離婚届を入っていたクリアファイルごと持って部屋を出た。

自室で着替え、スーツケースに最低限必要な物を詰めて車に乗り込んだ。

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今、私はビジネスホテルにいる。
とりあえず一週間の連泊で部屋をとった。
その間に妻には家を出て行くよう連絡しておいた。
妻の両親に電話した。
ご両親は替わるがわる私に謝罪の言葉をくれた。
義母は泣きながらもう一度チャンスを与えてくれないかと言っていたが、私はそれは出来ないと伝えた。
義父は娘に対する怒りがおさまらないようで、親子の縁は切ると言っていた。
家を建てたばかりだし、慰謝料として纏まった金を受け取って欲しいと言われたが、断った。
別にこの義両親に恨みはないし、寧ろ好印象を持っていた。
それに、妻の方にこそ苦しんでもらいたかった。
絶縁するという義父の言葉を実現してもらい、妻から慰謝料を支払わせるようにするつもりだ。

後輩間男には、もっと苦しんでもらうつもりだ。
まず研修旅行から戻ってきたばかりの支店長に連絡して、事の顛末を伝えた。
支店長は私の事をひどく心配してくれ、あいつは許さんと、後輩間男は自主退職に追いこむと約束してくれた。
そして会社の寮として借りているマンションの一室を、半額負担で住めるようにしてくれるそうだ。

それから後輩間男の嫁にも電話してやった。
電話番号は支店で管理している名簿から、後輩間男の緊急連絡先として登録をされた番号を支店長に教えてもらった。
奥さんは驚いていたようだが薄々感じていた部分もあるようで、涙声になりながらもしっかりと応対してくれた。
離婚するかどうかはお腹の子の事もあるので、すぐには決められないということだったが、夫からの慰謝料はしっかり請求してやってくださいと言ってくれていた。
私も、妻からの慰謝料をがっつり取るように伝えた。

あとの事は弁護士にお願いすることにする。
疲れたのでベッドに仰向けに寝転がり目を瞑ると、あの寝室を開けた瞬間の濃密で不修多羅な匂いが甦り、急いでトイレに飛び込んだ。


【終わり】



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