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立ち小便ができた時代の男たち


刈り取られたあとの田んぼに向かって放射線を描く
夕陽に照され飛沫がキラキラと輝いた
友と並んで長く伸びる影
カラスの鳴き声と共にランドセルを背負い直し
勢いよく駆け出す

平日にも関わらずご機嫌なサラリーマンたちは
夜中まで続いた過酷な戦いを終え
日にちが変わった頃スナックやバーといった場所で
女たちから金と引き換えのやすらぎを手に入れる
店を出て家庭という名の現実にかえる前に
駐車場の陰へ民家の壁へ路上の隅へ撒き散らす
同僚と並びファスナーをおろして
世間の会社の家庭の愚痴と一緒にぶちまける
ぼたぼたびしゃびしゃと止まらぬ水量に
呑んだ量より多いじゃないかと笑い合う

それだけで次の日も頑張れた
それだけでメンツを保てた男たち

それなのに
それなのにどうだろう
今では・・・
〈男たちが立ってしていた時代〉には
まるで考えられなかった事態になっている

外での立ちションどころの騒ぎではない
社内で家内で立って用を足すことができない
タッテヨウヲタスコトガデキナイ
tatteyouwotasukotogadekinai

〈座ってする派〉の勢力の
粘り強く執拗な説得に対し
徐々に屈する者が現れ
若者なぞは尊厳を奪われていることにも
無自覚で育ち
昭和終盤から始まり
平成令和と続いたこの戦いは
終わりを迎えようとしている

かく謂う私でさえも家では座して用を足す
はじめはすっきり爽快感がなく
ただちょろちょろと便器に流れ落ちる音を聴きながら
まだ止まらぬかいつまで出続けるのじゃ
とずっと文句を言っておったものじゃが
慣れというのは恐ろしいもので
今ではまったく気にならん

だがだが
〈立ち小便ができた時代の男たち〉よ!
我らはいつまでも忘れぬ筈だ!!
あの青空の下での解放感
友と並んで解き放つ連帯感
便座を上げてぶちかます爽快感を

いつかいつの日か
飛び跳ねゼロの
的外し防止柵付きの
誰にも叱られない便器が開発されるまで

それまで尿瓶という更なる屈辱に耐え
生き延びるのだ
いいか諸君
紙オムツにぶちまける快楽に
負けてはならぬぞ!
いつかいつの日かまた


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