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小春のプロジェクトレポート①-2


小春からのレポート、前回については小春の生い立ちに関しての内容じゃったが、いわばここからがスタートという事になるのじゃろう。

それではプロジェクト開始からの小春の話を聞いていこう。


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2019年11月5日、プロジェクトがスタートしました。
その日の朝、大学の裏手の山の入口で乾教授からサバイバルナイフを渡された。
それはテレビで放映されていた昔の映画「ランボー」で主演のシルヴェスタ・スタローンが持っていたような頑丈そうなナイフでありました。

教授からは、そのナイフ一本で敷地となる外側の柵を作り、それから小屋を建てるのだと言われました。

試しに近くにあった木の枝に向かってナイフを振り落とすと、スパンと気持ち良いくらいに綺麗に枝を切り落とすことが出来ました。

山道を少し上がり、右手に100メートルほど入った所から柵を作り始めました。
そこからまっすぐ右側に向かって柵を立てていくのだという事でした。
そこを底辺にして、その山の上の方に向かった敷地がこのプロジェクトにおける箱庭になるのだ、と乾教授は楽しそうに笑って言いました。

柵となる材料には竹を使うことにしました。
竹は山道に沿った所に並んで生えており、そこから切り倒して節を削いで運びました。

作業に入ると、教授はただ無駄話をしながら指示をするだけで、私は一人で淡々と竹を切り倒し、柵を立てる場所まで運びました。

ナイフの切れ味が良いといっても、柵の支柱にするための枝は数十本と必要で、昼の休憩の時にはもう手のひらには豆ができ、その幾つかは潰れてしまっていました。
学食で昼食を摂っている時に、教授から100枚入りの絆創膏と防刃加工された手袋を渡されました。
手袋をつけて作業すると、それだけでも安心感があったのをよく覚えています。

夕方5時の街から聴こえるチャイムと共に、一日の作業は終了しました。
大学の近くに借りてくれたアパートまで教授の車で送ってもらい、部屋に入ってシャワーを浴びると、シングルベッドの上に倒れこんで朝まで寝てしまいました。

次の日は残った疲れと空腹で作業が進まず、それからはしっかりと夕食と朝食も摂るよう気をつけました。


プロジェクトの敷地の底辺にあたる柵に使う竹を切り終えると、次はその竹を地面に立て支柱にする作業をしました。
短く切った別の竹で打ちつけていくのですが、高さを1.5メートルくらいで揃えるということだったので、大きめの石を2つ重ねその上に立ち、振り下ろさなければならなず、とても不安定な足場での作業となりました。

教授は支柱となる竹をを支えてくれましたが、私は疲れてくるとその支えている教授の腕を叩き折ってやろうかと、何度も思ったものでした。

敷地の底辺となる部分ですが、なにせ山の中ですから真っ直ぐ一直線という訳にはいきません。
細い木は根本に近い部分から切ってしまうのですが、太い木は避けて支柱を立てていきました。

敷地の底辺となる右側の端に近い場所には、幅2メートルくらいの小川が流れていました。
そこには小魚が泳ぎ、石の陰には沢蟹が隠れておりました。
それを見た教授は、なんといい食材があるではないか、と言って笑っていました。

底辺部分の支柱となる竹を全て打ち終えると、そこに横向きに竹を組んで括りつけていきました。
この作業が柵を作る上で一番たいへんな作業でした。

丈夫そうな蔦で縛っていくのですが、強く結ぼうとすると切れてしまったり、硬く思うように曲がってくれなかったりで、横に組む竹を支えるのにはとても苦労しました。
そのうち丁度良い加減の蔦がどれか判るようになり、括りつける支柱の部分に切り込みを入れ、ずれにくくするようにしてからはスムーズに作業が進むようになりました。

横に2列くくりつけ終わり、やっとプロジェクトの敷地の底辺部分の柵が出来上がりました。
そこまでで2週間ちょっとの時間を費やしました。

出来上がった柵を眺めると、隙間が大きくいかにも粗末な作りで、いったいこれが何の用を足すのかと疑問を抱きました。
そんな私の表情から感情を読みとったのか、先ずは印のようなもので充分だ 行動できる範囲を決めるという事が重要なのだから、というような事を乾教授は言っていました。

後に、もっと本来の役割りを成す柵が必要だと思い知らされる事になるのですが。


でも、竹を切った時のあの青々とした匂いと、山に響く竹を打つ爽快な音は今でも忘れられません。




小春のプロジェクトレポート①-2おわり





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