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消費をすり抜けようとする『日向坂で会いましょう』ヒットキャンペーンのチグハグな関係。

今週も『日向坂で会いましょう』おもしろかったですね。

ついに今週水曜日発売となった日向坂46 7thシングル『僕なんか』。素晴らしい楽曲たちが並んでおり、お気に入りの1枚になった。

『日向坂で会いましょう』では前回に引きつづき今回も【7thシングル『僕なんか』のヒットキャンペーン】を行っていく。今回のヒットキャンペーンは、グループを4チーム分けてそれぞれが各地でメンバー考案キャンペーンを行う、という内容となっている。前半である先週はAチームとBチーム、そして今週は残るCチームとDチームが行ったキャンペーンが放送され、今回のヒットキャンペーンの全容が明らかになった。

はじめにヒットキャンペーンの歴史を整理しておくと、けやき坂46『走り出す瞬間』リリース時のバンジージャンプに始まり、これまでのアイドルのヒット祈願の定番企画に挑戦していくなかで、身体を張るなどの過酷な試練を乗り越える企画が日向坂46(けやき坂46)がとり続けたファイティングポーズを強調しながらも、(時勢にそぐわなくなってきた面もあるが)グループとして成熟していく中で獲得した強堅な協同精神がそれらを大きく上回り、彼女たちのカラーはそれからのヒットキャンペーンの下地になっていった

そうして『日向坂で会いましょう』のヒット祈願はヒットキャンペーンへと姿かたちを変え、ワンカットのPV作成や女子高へ赴いてみたりなど「立ち向かう」から「つくり出す」へ、ヒューマンドラマを発生させる装置が変わり抽象的なTVショーから具体的なダイレクトマーケティングへと変遷していった。消費と隣り合わせの当企画は非常にデリケートであり、『日向坂で会いましょう』のヒットキャンペーン企画はいまのところボーダーライン上すれすれをなんとか歩いている。

そして今回、Aチームはナガシマスパーランドで制作したプロモーションビデオ、Bチームはこんにゃくパークにメンバー作成の顔ハメパネルの設置、Cチームは宇都宮動物園のスタッフが着用するジャンパーのデザイン、Dチームは静岡のコミュニティラジオ巡り、とキャンペーンに付随して収録された映像などを含めればテレビ東京の全番組を凝縮したような多種多様な宣伝が実行されたのだった。とくに、Dチームの様子はCDリリースPRに併せて分刻みで活動する彼女たちの仕事っぷりを覗いているようでとても興味深かった。

ただ、これだけバラエティに富み活発に行われた企画だったのに「けっこうあっさりしてたな」というのが率直な感想だった。あれやこれやと詰め込み過ぎて2週に収めてしまったことでどれもがだったように思える。おそらくだが、このキャンペーン企画は当初4週かけて放送される計画だったものがメンバーのお休みなどにより2週へとやむなく変更されてしまったのだろうと推察す。計画通り4週間しっかりと放送されていれば、それはそれは見応えあるキャンペーンになったはずだ。

その一方で、この「あっさりした」感触を覚えたのはひとえに番組の由来だとは思えなかった。これは今回だけでなく、ここ最近の日向坂46の新譜発売で感じていた高まらない期待感についてだ。

CD発売前にラジオでの音源公開や収録される楽曲MVが順次公開、あげく発売を待たずして1週間前にサブスクで全曲聴けてしまう有様だ。以前ならば特典の握手券が手に入ることへのモチベーションも少しはあったが、それさえも今は封じられている。そうして辿り着いた発売日にはもはやイベント感はほとんど残されていない。せいぜい特典映像への期待値くらいか。

音源流布の助走と増幅を狙うヒットキャンペーンを執り行う冠番組とこの状況はとても相性が悪く、予定調和や出来レースの匂いさえかすかに漂う。わたしの感じた「あっさり」というのは、この一連の流れによってむき出しになったテレビの側面でもある茶番感が不利を招いた結果だと思う。とはいえ、今回のヒットキャンペーンの計画は、バラエティに富んでおり観ていてとても楽しかったので、個人的にはこの路線を支持したい

アイドルを取り巻く絶え間ない流動のなかで、ヒットキャンペーンは常に在り方に変化や進化を求められ、突入した制限のある環境下ではさらに困難を極めた。じきに帰ってくる接触を回避せずにすむ、しかし再構築された世界で、これからも新曲は1週間前に聴けるだろう、それらの条件がまとわりつく『日向坂で会いましょう』のヒットキャンペーンはこれからどんな景色を見せてくれるのだろう。どこか怖くもあり、とても興味深い。常に消費と背中合わせのアイドルが販売促進を行うことについて、せめてメンバーと視聴者どちらもが実益と幸せを感じられる企画がつくられたら良いなとおもう。

次回は若林さんに趣味をプレゼンする企画のようだ。【世界一やりたい授業】企画がよぎる。どんな様相を展開するのか、いまから楽しみだ。

おしまい。

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