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建築家・神谷修平の最新作は、“円”に埋め尽くされたおはぎ専門店

建築家・神谷修平の最新作は、“円”に埋め尽くされたおはぎ専門店でした。

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神谷修平率いるカミヤアーキテクツが、ブランディングからインテリア・家具のデザインまでを手がけた進化形おはぎ専門店〈ohagi3(おはぎさん)〉の旗艦店が、名古屋の栄にオープン。ブランディングから携わる、そのデザイン手法について、神谷に聞いた。

円、円、円、円、円……。ロゴから、照明、テーブル、パーティション、各種アイテムに至るまで、とにかく店内は円で埋め尽くされている。

ここは、無添加&手作りの進化形おはぎで人気を博す専門店〈ohagi3〉初のカフェ型店舗で、同ブランドのフラグシップでもある〈ohagi3 FLAGSHIP SAKAE〉。3月31日、名古屋・栄の丸栄百貨店跡に開業した商業施設〈Maruei Galleria(マルエイ ガレリア)〉の一角にお目見えした。

インテリアと家具のデザインを担当したのは、神谷修平率いるカミヤアーキテクツ。フランク・ロイド・ライトの高弟、遠藤新が設計した名建築〈加地邸(かちてい)〉を改修し、民泊施設〈葉山加地邸〉へとコンバージョンしたことでも知られる。

店内にあふれる円形は、おはぎがモチーフ。3枚のピースを重ね合わせた照明〈ohagiペンダントライト〉や、日本の伝統的な継木技術を応用して積み重ねたパーティション〈ohagiウォール〉、ウォールと同じピースを使って作られた2種のテーブルなどが目に飛び込んでくる。

この空間について、「日本の伝統的な木の技術と、北欧的な光を組み合わせた」と神谷は話す。根底にあるのは、最近、日本でも注目を集める、デンマーク語で「居心地のよい空間」や「楽しい時間」を意味する“ヒュッゲ”という概念。コペンハーゲンに拠点を置く世界的建築事務所BIG(ビャルケ・インゲルス・グループ)に勤めた経験を持つ神谷らしい発想だ。

「さまざまなスケールの円形で構成された空間は、木の温もりもあり、意外に居心地がいいんですよ。家具は接着剤などを使わずに、嵌合(かんごう/軸と穴がはまり合っていること)させることで、組み立ても解体も簡単にできるサステナブルな仕様に。“北欧的な光”としては、ペンダント照明の位置を低くすることで、手元にロウソクの光のようなほの明るさを再現。一人ではもちろん、人と訪れても親密な時間が過ごせるようにしています」

今回のプロジェクトに際し、ロゴやサイン、グラフィックといった全体のブランディングディレクションから、インテリア・家具のデザインまでトータルで参画したという神谷。そんな彼が目指すのは、“ブランディング・アーキテクチャー”として、単なる建築だけでなく、大きな意味での価値をも創造していくことだという。

「そのためにはプロジェクトの初期の段階、ブランディングから携わることが重要だと思っています。クライアントとともに、達成すべき価値を見い出し、それを実現するための明解なコンセプトを作り、体制を構想し、建築設計やグラフィックなどさまざまなデザインに落とし込んでいく。いわば、建築基点のトータルブランディングです」

これまでの建築家の在り方とは異なる“ブランディング・アーキテクチャー”というカタチに気づいたのには、かつて師事していた隈研吾とBIGのビャルケ・インゲルスの存在が大きいという神谷。

「建築家としての職能に対して、危機感をずっと持っていたんです。そんな中、隈さんとクライアントとの長年にわたる信頼関係や、BIGのさまざまなプロジェクトへの取り組み方、ソリューションの提供の仕方を見て、“これしかない”と思った。常に、隈さんとBIGのことは意識していますよ、師匠ですからね。いつか違う在り方で超えたい2つの大きな山です」

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