Mackey fan note031「だらん」

2019年発売のアルバム「Design & Reason」収録。

この曲を作った理由として本人は度々、「相手をハグした時にハグし返してくれる内は良いけど、しかえさずに手がだらんと下がっている時は気持ちが冷めている時なんじゃないか」という所から着想を得て曲にしたと語っている。要はだらんと下がった仕草がきっかけになっているという事だが、前回書いた『運命の人』も相手のちょっとした仕草がきっかけで出来た曲。もしかしたら今後はアルバム1枚につき1曲仕草枠があるのかもしれん。

『運命の人』も『だらん』も三角関係で成り立っている構図なので何か色々と勘繰ってしまいそうになるけれど、前者は片思いの曲に対し、この曲は失恋ソングで、要は浮気をされているという状況。相手が浮気をしているシチュエーションの曲ってのはかなーりレアで、かの有名な『SPY』の他に『revenge』、『僕は大丈夫』と、あと何かあったっけな程度。

詞は、元々相手が冷めている仕草がきっかけで出来た割に、主人公もかなり冷めているスタンスで、実は先に挙げた3曲と違って「後悔」「恨み」の念がほとんど感じられないさっぱりした歌詞。冒頭からいきなり相手に出ていく事を提案してるし。サビで「努力が足りない」と言い放っているのも、恐らく自分に対してじゃなく相手にだろう。浮気相手とは言え「そいつ」というワードが出てくる事自体珍しい。なかなかにトゲのある歌詞。

曲調はファンクっぽい感じで、入りの打ち込み音でぐっと引きこんでからのエレキギターがかっこいい。そして、歌詞が歌詞だけにこのアレンジが余計に主人公のドライな印象を際立たせてる。

確かこれもラジオで、相手の気持ちも分かるが、そんな状態で関係を続けられてもこっちだって持たないんだよという本音があるというような事を言っていて(これはかなりうろ覚え…)、そういった、思い遣りと本音を交えた結果のこの歌詞なんだろう。だとして、槇原敬之の近年の失恋ソングは相手へ何も出来なかった後悔、色々な事を教えてくれた感謝が軸となっている事が100パーと言って過言じゃなかったので、対等どころか少し上な立ち位置から行動しているだけで、槇原敬之の歴史的に価値のある資料歌詞になる。

『だらん』というタイトルだけをホームページで最初に見た時、知ってる人にしか伝わらない例えだけど『ゼイタク』みたいな曲なんだろうなと思っていた。(ホーンの音が印象的なゆったりした曲)。しかし、実際聴いてたら前述したような歌詞、曲調で非常に驚いた記憶がある。人により「だらん」って言葉から連想させるものは色々あると思うけど、自分視点から見た時に、何となーくリラックスしたイメージがあって、リラックス出来るって事は居心地の良い環境だなっていう発想から、良いイメージの言葉として捉えていたんだけど、そんな状態に対して負の要素を見い出して曲に落とし込める感性は素直に羨ましいと思ったり。最終的にそこをタイトルに持ってきた勘も良い。久々にタイトルに唸らされた感じ。

因みに仮タイトルは『Release you』だったとか。これはこれで曲の雰囲気に合致してるとは思う…というか英語にすると大体収まり良くなるね。

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