寺田農さんと雨の中の涙
寺田農さんというと、古くは「砂の器」とかでしょうか。
僕にとっては仮面ライダーWの敵の首領「ホラー」でした。
そしてムスカ大佐。この二つは悪役ですね。
しかも寺田さんの少し無表情な声がとても合っていたと思います。
そして、やはり僕にはこれでお声を聞くことが多かったです。
ブレードランナー「ロイ・バッティ」の声優。
ルトガーハウアーと寺田農さんが、なんとなく雰囲気や顔つきが似ています。
テレビ上映された時のアテレコですが、相当気合いの入った声優選びでした。
ブレードランナーは奇跡の配役で、ハリソンフォードも偶然受けたようです。
しかしこの映画で時間が経つにつれ、その存在の大きさを示すのが敵役の「ロイ・バッティ」です。
ルトガーハウアーのアドリブのダンテ神曲のようなセリフが、その知性の高さやロイ・バッティの品性性格と苦悩を表し、キャラクターに大変な深みを与えました。
80年代は日本に限らず、世界中でとても優れた創作物が産まれました。
このルトガーハウアーによるアドリブとシド・ミードの世界観、若くて感性が豊かだったリドリー・スコットが合わさり、その後のSFに多大な影響を与える作品を作り出したわけです。バンゲリスのBGMも良かった。
実際、装甲騎兵ボトムズのウド編はブレードランナーですし、押井守のやたらと戯曲などを引用するインテリぶったキャラクター、攻殻機動隊などなどにイマジネーションを与えました。
このSFの新時代の要となったルトガーハウアーの声に、寺田農さんが選ばれました。
ロイ・バッティのアンニュイな性格と知性を表すには、寺田農さんの力が必要だったと思います。
ロイ・バッティも悪役です。
悪役というとただの凶悪犯のようですが、ペーソスのある相手役というべきかもしれません。
視聴者は苦悩するルトガーハウアーに神々しさを感じ、共感します。
フォークトカンプトテストは無事にクリアできそうですね。
深みのある人物像を作れる、悪役の出来る名優を失いました。
81歳。近年亡くなられる芸能人が多い中では長生きなのかもしれません。
ご冥福をお祈りいたします。🙏
長文駄文失礼しました。
写真はネットで拾わせていただきました。