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0.1mmのノズルでプリントしようぜ!

0.1mmのノズルはFDMでもそれなりに精密な造形ができてとても楽しいので、もっと楽しさを知って貰いたいと思い記事にしました。
私の使ってる設定やハードの調整などを書いていおこうと思います。
基本はEnder 3みたいな構造のプリンターを前提にしてます。
作例はすべて改造済みのJGMAKER Magic(ボードはSKR mini e3 v1.2)で作成されています。

何かあれば気軽にコメントしてください。


ノズルの選定

0.1mmのノズルは評価が高いテクダイヤのkaikaしか選択肢が無いように感じるかもしれませんが、中華通販のAliExpressで購入できる0.1mmのノズルでも十分プリントできます。
ただし店の選定は非常に重要です。信頼と実績のTrianglelabで購入すると安心です。1個400円位。ワンミスでだめになりやすいので5個位まとめ買いしても良いですね。それでも2000円位!送料が別途必要ですが。
偉そうに言っても私はTrianglelabのしか使ったことはないんですがね。
いつかkaikaも使って比較してみたいです。

https://ja.aliexpress.com/item/32965509920.html

最低条件

まず最低条件ですが、ダイレクトエクストルーダーの機種じゃないと、多分綺麗にプリントは無理だと思います。
そしてフィラメントの特徴が非常に出やすく糸引きもしやすいので、フィラメントの状態を完璧にするために何かしらのフィラメント乾燥機は必要だと思います。

まず作例です

定番のベンチー25%と15%です
コツは必要ですが0.1mmノズルだと9%のサイズまでならなんとかプリントできます。
9%はお米みたいに小さいのでどこかに紛失しましたが。
そのうちまたプリントします。(プリントしましたのでおまけの項目に追記しました)
左esun PLA+グレー
右Qholia グレー

スパイダーマンのベノムです。
ミニチュアサイズでも結構ディテールが出ます。
esun PLA+ ホワイト

参考にプラサフを吹いて後処理をしてしまっていますが0.25mmノズルでフルサイズのプリントです。これもTrianglelabのノズルで0.25mm Hardened Steelです。
さすがに0.1mmノズルの大きさの方だと血管の盛り上がりはスライサーでは省略されていますね。
esun PLA+ ホワイト

社長さんです。
esun PLA+ ホワイト

私の限界はこの辺りだと思われます。
拙い塗装で申し訳ありませんが、ハリーポッターのホグワーツ魔法魔術学校
Marlinでプリントしましたが、確か48時間位かかりました。
esun PLA+ ホワイト

まず注意すること

ノズルとベッドの接触はワンミスでノズルがだめになりやすいです。
先端はとても繊細なので注意をしましょう。
特にkaikaの人はとても高価なので涙が出ちゃうのではないでしょうか。
細心の注意を払ってノズルとベッドの距離を調整してください。
必ず広めのクリアランスから様子をみて、少しずつ少しずつノズルとベッドを近づけていくようにしてください。

フィラメント

フィラメントの吐出量が少ないためQholiaフィラメントのようなフィラーの多いフィラメントはホットエンドで加熱時間が長すぎるためか、フィラーとフィラメントが分離してしまうため低温でないとプリントが困難でした。
うちの環境だとQholiaフィラメントは182℃でプリントしてます。
スイートスポットが非常に狭いです。
糸引きがとても少なく、積層がわからない位非常に美しい造形ができますが低温でのプリントのためか造形の安定性に欠ける感じが少しありますし、かなり脆いです。
もしかしたらこの辺りはkaikaを使うと違ってくるのかもしれないですね。
klipperで使用をしたことがないので、流量を上げてやると分離も回避できて、温度をもう少し上げる事ができるかもしれませんね。
一番上の画像のキツネみたいな動物もQholiaフィラメントでプリントしています。

ボードゲーム用のカウンターです。
Qholiaは肉眼では積層があまりわからない位綺麗に造形されます
右は未塗装です
Qholia グレー

esunのPLA+は少し糸引が多いですが思った通りに形が出るし、とても安いのでおすすめです。
温度も特に気にすることなく造形できます。
特にホワイトは余計な混ぜ物が少ないのか非常に素直に造形ができるので特に良いと思います。
グレーはグレーでサポートと本体の境界がわかりやすいので違う意味でおすすめです。
おまけの項目でRepraperのPLAを使用しておりますが、薄い積層だと少し反るのでオススメはしません。


何が何でも初期レイヤー

何よりも大切なのは初期レイヤーです。
Zオフセットは0.01mm単位で調節できるようにはしたいところです。
おすすめはMarlinのファームでbabystepを有効にして初期レイヤーのブリムをプリント中にZオフセットを微調節するのが良いです。Marlinだとそのままbabystepの値を保存するとZオフセットとして次回プリント時にも使用できます。
確かデフォルトでは荒くしか調節できなかったと思うのでファームで変更が必要です。

Marlinとklipper

本来0.1mmノズルでの造形はめちゃくちゃ時間がかかりますが、細いノズルだと体感としてリニアアドバンス等で流量の調整する必要があまり無いようなので、klipperだと加速度10000で100mm/s(モデルが小さすぎて実際にそのスピードが出るかは別の話)でも比較的良好な造形品質のプリントが可能です。大きさと精細さの両立が必要な場合はklipperしか選択肢はないと思います。
ただ、なぜか低速時では同じ条件(もちろん加速度も含めて)でプリントしてもMarlinの方が少しだけ綺麗にプリントできる気がします。

うろ覚えで申し訳ないですが、上記のklipperの条件で7~8時間位で造形できたと思います。インフィルは確か0%です。
黒のサーフェイサーを吹いて銀の塗料でドライブラシ塗装してます。

esun PLA+ ホワイト

この火焔土器もklipperで加速度10000で100mm/sの条件で作成
形状が複雑なのとサポートまみれのためか、上のお姉さんよりも小さいですが25時間位かかりました。
esun PLA+ ホワイト

ハードのキャリブレーション

英語のページになりますがこちらのページが非常によくまとまっていてキャリブレーションしやすいです。
できる範囲でキャリブレーションは行ってください。
特にPIDオートチューンとエクストルーダーのキャリブレーションは必ず行ってください。

スライサーの設定

加速度は出来れば500位が綺麗にプリントできると思います。速度は小さな造形の場合にはあまり指定通りには上がりきらないのであまり気にしなくても良いと思いますが、30~40mm/s位で良いかもしれませんね。
うちでは糸引き対策のために移動のみ加速度を10000で105mm/sにしています。klipperの方は是非試してみてください。造形品質そのままでトータルのプリント時間も短縮できます。

温度は0.4mmなどの通常のノズルに比べてかなり低く設定する必要があります。
環境にもよりますがウチでは20~30℃程低く設定しています。
もしかしたらプリンターの送り出しの最低温度に引っかかるかもしれませんのでファームにて変更する必要があるかもしれません。

2024年4月12日追記
コンベクションオーブン等でしっかり乾燥をすれば、フィラメント推奨の温度で問題無くプリントできます。

小さい造形物だとベッドとの接地面が小さすぎて、造形物にノズルが押し付けられる時の力に負けて剥がれやすいです。なのでブリムを付けましょう。初期レイヤーが完璧だとブリムは薄いのでプリント後は簡単に取れます。
ラフトだと造形物とのあいだに余計なクリアランスが出来てしまうので、0.01mm単位の調整が必要なプリントでは避けた方が良いとは思います。どうしてもラフトがないと初期レイヤーの定着ができない場合は試してみるのも良いかもしれないですね。その場合はラフト間距離にもこだわりましょう。

初期レイヤーは0.08mmでそれより厚いと定着が悪く乱れやすく、それ未満だと薄すぎて難易度が上がります。
デフォルトレイヤーの厚さは0.05mmが良いと思います。
それ以下に下げてもプリント品質にあまり違いを感じることができず、0.03mm以下では造形に乱れがでやすくなるのでFDMでは避けた方が無難に思います。ですが、手持ちのフィラメントの限界のようにも感じますので、もっと優秀なフィラメントなら大丈夫なのかもしれないですね。

射出幅は初期レイヤーが0.13~0.15mm、その他は0.11mmが良いように思います。
0.4mmなどの太めの口径でも0.45mmとか少し太めの射出幅で積層をならしながらの方がディテールは少し潰れ気味になりますが綺麗に見えるようにプリントできます。
どのサイズのノズルもノズル口径よりも射出幅を細くするとパッと見のディテールがアップするように見えるかもしれませんが、フローが安定しなくて決して綺麗にはプリントはできないので絶対に避けましょう。

0.1mmのノズルで綺麗にプリントするにはフローがとても大切です。
少し少なめが良いと思いますが、初期レイヤーが定着できるようになったらフローを微調節しながら何度もテストプリントを繰り返し、ちょうど良い量を決めましょう。

サポートはPrusaSlicerの話になってしまいますが、0.1mmノズルの場合は構造をハニカムにするととても取りやすいです。サポートの壁が薄いので本物の蜂の巣を壊しているような感覚でパリパリと簡単に取れます。パターンの間隔を1mmにしましょう。
縦のサポートと造形物との距離は0.1mmノズルの場合、積層間の密着が弱いので0.05mmのような近さでも簡単に剥がれます。ただ、XYとの距離は150%にして離しぎみの方が良いです。横方向は薄すぎてとても剥がれにくいです。
PrusaSlicerはとても良いですよ。

2022年7月更新
Twitterで@mitz_labさんにSuperSlicerの事を教えていただき、プリント設定-Perimeter&ShellのThin wallsを有効にすると、かなりディテールがアップするようになりました。
0.1mmノズルを使用時はSuperSlicerの使用をオススメします。

ハードの改良

もし上記のことを試していてもプリントが難しく感じるようならハードの調整不足が大きいかもしれないですね。
ハードを改良していきましょう。0.1mmノズルだけでなく、他の口径のノズルでも良い結果になると思います。

エクストルーダー

冒頭でも書きましたが、エクストルーダーはダイレクトにするべきでしょう。
できるだけエクストルーダーからノズルまでの長さが短い方が良いですが、見本の造形は割と適当にBMGをつけてエクストルーダーからノズルまでの長さは9cmほどもあるので、そこまでこだわらなくても造形はできるようです。
ただ、できるだけフィラメントにダメージを与えないようにしつつ、フィラメント操作の反応が良いようにBMGやOrbiterのようなデュアルドライブでフィラメントを挟み込むタイプのエクストルーダーがおすすめです。

Z軸の荒ぶりを鎮めろ!

Z軸のバックラッシュを少しでも無くすために素材がPOMのアンチバックラッシュナットに交換しましょう。ほぼバックラッシュが無くなります。費用対効果はかなり高めです。ご自分のリードスクリューに合致した規格を購入してください。t8 ピッチ2mm リード8mmが良く使われますが、jg Magicはリード4mmでした。樹脂製で滑りが良いです。グリスは厳禁。


Marlinを使っておられる方はBacklash compensationというバックラッシュを前提に計算して挙動する機能があるのでそちらを使っても良いかもしれません。確かプローブでG29時にバックラッシュを測定するので基本的にオートベッドレベリングができるようになっているのが前提ですが。

Ender 3やKP3SのようなZ軸がリードスクリューのタイプはZ軸のブレを安定させるためにリードスクリューの上端を固定しましょう。
ベアリングと3Dプリント品のパーツの組み合わせでも良いと思います。ただしそれなりの剛性は確保した方が良いです。
常々このパーツは安いのに付けるか付けないかでプリント品質が結構違ってくるので、メーカーがデフォルトで付けておくべきだと思っています。
ただし、リードスクリューがまっすぐになるように取り付けないとナットにダメージが出ますので注意してください。
プリンターを動かしてキーキー音が鳴ったら要注意です。

XYの精度にもこだわろう

XY軸の精度を高めるために、ベルトとプーリーを精度の高い物に交換すると良いでしょう。
私はGATESのベルトとTrianglelabの黒歯プーリーに交換しています。
日本製の精度の良い製品も良いのではないかと思います。

可能なら0.9度角のステッピングモーターに交換するのも良いかもしれません。
ただし、私としては造形品質が劇的に変化したかはわからなかったので、個人的には費用対効果はそんなに良くない気もします。

わかる人だけ

ハード的にTMCでマイクロステップが高い値に変更できるのなら、そちらはしておいた方が良いですね。

徹底的にZ軸にこだわろう

少しでも精度を出すために、ベッドをバネでの調節をやめてベッドを完全に固定しましょう。
ナイロンロックナットで固定するとナットの緩みが無くなるので初期レイヤーが安定しやすいです。
ベッドを完全に固定してからノズルがベッドに接触するとノズルに深刻なダメージを受ける場合があるので、心配であればこの調整は避けた方が良いですね。
可能ならオートベッドレベリングが前提になりますが、ベッドを通常良く使用する温度に合わせて、OctoprintのプラグインBed Visualizerでベッドの平坦さを確認しながら調節していきましょう。
klipperだとMainsailとFluiddの場合はデフォルトでベッドの平坦さは見れるのでそれを使うと良いですね。

とても小さなモデルをプリントしよう

曲芸みたいな話になるので、需要があるかはわからないですが、9%ベンチーや上の画像の社長さんみたいなとても小さなモデルを綺麗にプリントする小技みたいなのを書いておきます。
ベンチーの煙突や社長さんの頭は細くて普通にプリントするとホットエンドの輻射熱でとろけ気味になっちゃうと思います。
そんな時はプリント時間が長くなりますが、同じモデルを5個位並べて同時にプリントしてみましょう。ノズルの移動で時間が稼げるため輻射熱の影響でモデルの細い先端部がとろけることは無くなります。
ただし、長めの移動を伴う分精度が求められますので、ハード的に十分調整済みなのが前提になると思います。

最後に

0.1mmのノズルでがんばっても民生のFDMでは安価な光造形の3Dプリンターにも造形の精細さ、造形時間はかなわないと思います。
ただFDMの手軽さは他には代えがたい所があると思いますので、楽しんでいただければと思います。
もっとこうすれば良いよというアドバイスや、おすすめのフィラメントがあればコメントにお願いします。

おまけ

0.1mmのノズルでプリントしたものを順次追加していきます。すべて改造済みのKP3Sでプリントしています。

Reprapper PLA グレー

フルサイズのベンチーと9%サイズのベンチー

Reprapper PLA グレー

45%サイズの簡易フライングトゥールビヨン
ちゃんと動きます

esun PLA+ グレー

6%サイズなので一辺1.2mmのXYZ Cube
XYの文字は確認できますがZは読めません

esun PLA+ グレー
esun PLA+ グレー
esun PLA+ グレー
Qholiaフィラメント グレー
esun PLA+ グレー
esun PLA+ グレー
esun PLA+  ブラック
esun PLA+  ブラック
プラサフ塗布後アクリル系塗料で塗装
プラサフ塗布後アクリル系塗料で塗装

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