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スマホが当たり前の時代だからこそ、「令和の電話台」を作ってみた話

「今、孫が遊びに来とるんよ」

小学生の頃から、頻繁に通った祖母の家の景色をいまだに思い出す。
神戸の山の方にあった祖母の家は、電車とバスを乗り継いで自宅から1時間半くらい。小学生の自分からすればちょっとした冒険で、たどり着いた祖母の家は昭和の空気そのもの。効くのか怪しいマッサージ機や時代を感じさせる緑色の洗濯機、そして昔ながらの黒電話も鎮座していた。
朝早くに家を出て、たどり着いたらちょっと昼寝をさせてもらうのがだいたいのパターンで、目覚めるとだいたい祖母は電話台の前に座って友達と電話をしているようだった。そんな祖母の後ろ姿からは嬉しそうな様子が伝わってきて、なんだかこっちまで嬉しくなったのを覚えている。

そんな祖母との連絡が取れなくなったのは、阪神淡路大震災の時だ。
神戸から20kmは離れているうちの家も、タンスが倒れてきて下敷きになりかけた所を母に助けられたり、部屋から飛び出してきた家具が家の中のトビラのひとつを外側から塞いで出られなくなったりと、災害の恐ろしさを存分に味わった。
まだ朝早く、停電で真っ暗な中で、当時父親が持っていた小型のテレビ(当時としては珍しい)でニュースを見ながら少しずつ明らかになっていく被害の様子に恐怖を覚えながらも過ごした時間は今でも忘れられない。
また、震災直後は固定電話がまだ通じたため、近くに済む親戚に助けを求め、トビラを塞ぐ家具をどけてもらえた時には本当にほっとした。

被害の大きかった神戸の「長田」は、正に自分が電車からバスに乗り換えていたあたりだ。
テレビに映し出される火災の様子に、想像したくないことも考えてしまい、復旧までの時間はただただ辛かった。そして、一週間程度で電話が復旧。電話越しに祖母の声を聴いて、無事が確認できた時には心底ホッとした。

そんなトラウマじみた記憶を紐解いたのは、ある「家具」を作るためだ。
それは、大好きだった祖母が使っていた、あの「電話台」をつくることになったからだ。
もちろん、固定電話を載せるための家具として活躍していた「昭和の電話台」ではない。
今回は、スマートフォンが当たり前となった現代にこそ必要だと考えて、福井県の伝統工芸である「越前箪笥」の職人さんと作った「令和時代の電話台 qb(キューブ)」のことをご紹介したい。

スマホ時代に必要な電話台ってどんなものだろう?

スマートフォンは小さくて持ち歩けるんだから、電話台なんていらないでしょ。

電話台という単語を聞いて、そんなことを思う人は多いかもしれない。
たしかにスマートフォンは、私達の暮らしを変えるくらい便利な道具だ。
家族や友人、職場との連絡さえスマートフォンがあれば事足りるし、固定電話にかかってくるのは余程重要な連絡(家族が交通事故にあったとか)か、セールスやオレオレ詐欺なんてことになりつつある。
スティーブジョブスが初代iPhoneを発表したのが、2007年のことなので、スマートフォンが世の中に出てから15年以上が過ぎている。ガラケーと呼ばれた携帯電話の時代も含めれば20年以上も小型の端末のある生活は続いている。

ガラケーの電波が使えなくなって、70歳を超えているうちの両親もスマートフォンを使い始めた。
そんな時に目に付き始めたのが、実家の床で延長コードから充電されている両親のスマホたちだ。
ガラケーより電池の消耗も多く、毎日こまめに充電しなければいけないスマホは、どこにでも持ち運べるがゆえに、家の中の適当な場所で今日も充電されている。

その姿を見ながら、充電するための定位置が必要なのではないかと自分なりに考えるようになった。
スマートフォンはもはや流行グッズではなくて、生活必需品だ。
ならば、固定電話が普及するに従って「昭和の電話台」が生まれたように、スマートフォンの居場所になるきちんとした家具として「令和の電話台」が用意されてもいいのではないかと思うようになった。

そしてもう一つ、毎日充電が欠かせないスマホに頼り切りな私が危惧しているのは「災害時の長期停電発生時」のことだ。
便利なスマートフォンも、電池がなくなればただの板。
家族との連絡、仕事の資料作成、情報収集、お買い物の財布……一つで何役もこなしてくれる電子端末も、「充電」なしでは何もできない。
これは、冒頭で紹介した私自身の阪神淡路大震災での経験で登場した「親戚へ助けを呼ぶ」「ニュースで情報を集める」「家族の安否を確かめる」といった行動が「充電」が切れるだけで立ち行かなくなることを意味している。

ならば「令和の電話台」には、「充電」だけでなく、非常時のために「蓄電」をしておく役割をもたせられたらいいのではないかと考えるに至った。

普段はスマートフォンのいつもの充電の定位置として美しく佇み、緊急時のために電力を蓄えておくこともできる。
qb(キューブ)はそんな2つの「令和の電話台」に必要な要素を実現するために開発をすすめることとなった。
結果として、製造は福井県の伝統工芸である「越前箪笥」の職人が担当。そして、その内部にはアウトドアや防災用品として注目を集める市販のポータブル電源を載せることができる仕様を備えたこれまでに見ない家具となった。

では、実際の使い勝手はどうだろう?
ここからはqb(キューブ)が実際にどのように活用できるかをご紹介したい。

毎日の充電を快適で美しく

qb(キューブ)は無垢のタモ材を使って、伝統工芸の職人さんが作る木製の家具だ。
製造には「あられ組み」と呼ばれる指物技法が使われていて、接着剤だよりではない頑丈な作りを実現している。プラスチックのケーブルボックスのようなものに比べても、和洋問わず木を使ったインテリアに馴染み、サイドテーブルのような感覚で長くご愛用いただくことを目指して作られている。

天板は簡単に外せるようになっていて、重量のあるポータブル電源も設置しやすい作りとなっている。
背面には大きなルーバー扉が設けられ、内部に充放電の際に発生する熱が籠もらないような工夫が行われている。

スマホ等の充電に使用するケーブルを接続する作業も、天板と背面のルーバー扉の両方が開くことで視認性が大きく確保できるため簡単。
ケーブルを挿し替えて調整したい時にも、気軽に変更できることは、長く使っていれば必ず起きる機種変更によるケーブル規格の変化時にも役立つので非常にこだわった点でもある。

ポータブル電源に接続された配線は、使わない時にどこかにいってしまったり、qb(キューブ)の内部で絡まってしまわないように、ケーブルホルダーに通して定位置に収めておくことができる。

ケーブルを使って充電をしたいと思った時には、天板奥側の小さな扉のようになっているパーツを開けば、スタンバイ状態のケーブルにすぐアクセス可能。
接続部分の形が上を向いて行儀よく並んでいるので、迷うことなく充電ケーブルを選び取ることができる。

もちろん、充電を行っていない時はこのようにスッキリとした外観をもたせることが可能になっている。その姿は家具としてのサイドテーブルの形そのものなので、配線のぐちゃぐちゃを空間に持ち込むことなく使ってもらうことが可能となる。

更に、ポータブル電源を載せていることで可能となるのは、「電源がない場所にコンセントを持ってこれる」ということ。
テレビが一家に一台ある時代から、スマホやタブレット、ノートパソコンまで考えれば一人が複数の電子機器を持ち歩く時代になったが、お部屋に設置されているコンセントの数は劇的に増えている訳ではない。
特に築年数が古い家であればその傾向は顕著だし、コンセントを増やすにも電気工事が必要なためお金もたくさんかかってしまう。
近頃流行りのリノベーション住宅においても電力の確保は問題になりがちだけど、qb(キューブ)があれば、キャスターを使って自分のいる場所にコンセントを持ってこれる。

もちろん供給可能な電力には限界があるので、電気ケトルやドライヤー等の電源としては使うことができないけれど、リモートワークでZOOM中にパソコンの電池がなくなったり、映画を観ている時にタブレットの電池が少なくなった時にもqb(キューブ)があれば場所を移動することなく充電できてしまう。
延長コードを家に這い回らせることなく、自分の居場所が充電場所になる快適さをqb(キューブ)は私達に与えてくれる。

もしもの時も、いつものように

「練習は本番のつもりで、本番は練習のつもりで」

この言葉は好きな漫画である宇宙兄弟で出てきたフレーズだけど、困難なミッションに挑む宇宙飛行士のような仕事だけでなく、災害時においても同じように考えることができる。

停電の心配がある状況は地震だけでない。大雨による洪水や落雷、大雪の影響も災害大国である日本にはある。また、近頃は猛暑などの影響で、クーラーをみんなが使うことによって電力の使用が集中してしまった時に、ピーク時にどうやって電力を使わないかなんて状況もある。

そんな非常時に、いきなり新しいことをしようとしても難しい。
ましてや停電して真っ暗な状況で、使ったことがないポータブル電源をいきなり使うのは、家電に詳しくない人にとって難しいだろう。

ポータブル電源は容量も大きく、いざという時には頼りになる。
その分重量も重くて、サイズも大きい。
アウトドアが好きでキャンプをよくする人には普段から手にする機会もあるだろうけど、災害は人を選ばず突然やってくる。
そんな時が来るまでに、これまでポータブル電源に縁がなかった人が、ポータブル電源を毎日使うにはどうすればいいだろう……
そんな考えがあったからこそ、qb(キューブ)は、毎日スマホの充電という行為に注目した。

qb(キューブ)という名前は、qb(キューブ)の形状である「立方体を意味するCUBE(キューブ)」という単語の他にもう一つ意味を込めている。
それは「quotidian(毎日の・日常の)」と「battery(電池)」という単語の頭文字を使っているということ。
この「qb」は上下反転して裏返せば「dp」となり、「disaster prevention = 防災」を意味する単語の頭文字になる。

毎日やっていることが快適になれば誰もが嬉しい。
そしてその楽しさが、そのまま災害時に「家族との連絡」や「情報収集」の為の電力確保につながっていることで役に立ってほしい。
qb(キューブ)はそんな願いの上に成り立っているプロダクトとなります。

安全性を突き詰めたくて パナソニックさんのインフラ用バッテリー搭載モデルまで作りました

近年のアウトドアブームによってようやく一般的になってきたポータブル電源。
しかし、各家庭に一台というレベルでの広まりではなく、家電が苦手な方からすればどういったものを選べばいいのかわからないという声も多く聞きました。

現在様々な新しいメーカーからポータブル電源が発売されていますが、その品質はメーカーによっても異なることがあるようで、災害の備えとなるべき、ポータブル電源が火災の原因となった事例もニュースとなることがあった。

ポータブル電源を載せることができる家具を作る以上、安心安全にこだわったポータブル電源と一緒にqb(キューブ)を販売したい。
そう考えて調査を行い、たどり着いたのがパナソニックさんのe-block(イーブロック)だった。

一般用というよりは、インフラとして作られたe-block(イーブロック)は、2021年に発売され、避難所や企業のオフィス等にも既に導入が進んでいる。

e-block(イーブロック)が誕生するきっかけになったのは、1995年の阪神淡路大震災に遡るそうで、当時被災した社員の間で、「水は運べるのに電気は運ぶことができない。電気を運ぶバケツが必要ではないのか?」という声が挙がったことに端を発する。
そして、2011年の東日本大震災でも、避難所でボランティア活動を行っていた社員の間から「電気のバケツはやっぱり必要。誰かがやらなければ」という声が上がり、開発がスタートした。

完成したe-block(イーブロック)は専用充放電器とセパレート型なので取り外して持ち運び可能。重さは約3kgで、片手で持ち運べるぐらいの小型・軽量設計となっているのは、まさに「電気を持ち運ぶためのバケツ」として、震災での経験を活かして作られたからに他ならない。

e-block(イーブロック)は安全性へのこだわりも強く、一般的なポータブル電源だと「付属のACアダプタとケーブル」のみに取得しているPSEマークを、バッテリー側にも取得する徹底ぶり。
独自の特許技術も多数投入し、万が一熱暴走等が発生した場合にも、内蔵するセル同士がドミノ倒しのように類焼していかないような機構も搭載しており、とても信頼のできる仕組みが組み込まれています。

実は、e-block(イーブロック)は、充電する電池の草分け的存在である「eneloop」の仕掛け人である技術者やデザイナーが中心となって作られている。
今や当たり前となった携帯電話用のモバイルバッテリーや、充電式ハンディクリーナーの製品化をはじめ、初代リチウムイオン電池パック用充電器など、国内初と名がつく「持ち運べるバッテリー」のプロ達が生み出したポータブル電源だと言える。

このように情報を掘れば掘るほど、信頼と共感を感じるe-block(イーブロック)をぜひqb(キューブ)と組み合わせたいと考え、パナソニックさんにご相談したところ、なんとOKをいただくことができた。

e-block(イーブロック)専用モデルである「qb-41」は41cmの立方体サイズとなっているので、スタンダードモデルとなっている「qb-35」の35cmよりも大きい。
そのため、キャスターは付いているけれどあまり動かして使用するよりは、定位置での使い方に向いているように思う。

一方で、パナソニックさんのこだわり抜いた安全性があるので、ポータブル電源やそもそも機械関係に詳しくない方や、ポータブル電源に興味はなさそうな親に防災の備えとしてプレゼントしたい方にはぜひおすすめしたいセットに仕上がっている。

Makuakeにて1/30 12時より販売スタートいたします

qb(キューブ)は職人が作る家具であることもあり、アタラシイものや体験の応援購入サービスである「Makuake」さんにもご協力を頂いて、今回は数量を限定しながら初回販売を行いたいと考えています。

1/30(月)お昼の12時よりこちらのリンクでプロジェクトページをご覧いただけます。(プロジェクトスタート後から御覧いただけるようになります)

もちろんこちらのnoteの感想を含めたツイートや、プロジェクトページのシェア、更に興味の有りそうな人にこんなのあるよ!とお声がけいただくのも大歓迎でございます。
メディアの皆さまがもしご覧になっていらっしゃいましたら、ぜひお気軽に取材などもメールアドレスからお問い合わせいただければと思います。
(ドケットストアメールアドレス docket.japan@gmail.com)

そしてqb(キューブ)がぜひ欲しい!という方は、うちのお店のTwitterインスタグラムをフォローしておいていただければ、スタート時にも告知を行うので便利かと思います。

また、今回の福井県の伝統工芸との取り組みは「F-TRAD」という取り組みの一環として行われたものとなっている。
福井が誇る7つの伝統工芸品を現代のライフスタイルに合わせてアップデートしていくプロジェクト、それが 「F-TRAD」。
F-TRADのコンセプトに沿った新しい商品を開発する「F-TRAD MADE」では、福井の伝統工芸の本質を見つめ、未来に向かって再解釈していくことを目指して、私達を含めて合計7組のデザイナーと伝統工芸が出会い、刺激を与え合いながら新しい伝統工芸の形を作り、「販売していく」ことを主眼においてプロジェクトを動かしている。
他の「F-TRAD MADE」のアイテムも含めて1月30日に発表される予定となっているので、あわせてホームページをご確認いただければうれしく思います。(HPリンク→https://f-trad.com

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