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お店をはじめたいあなたに、「いいお店のつくり方・保存版」をすすめたい話

「こだわりの収納ボックスが集まるお店を始めたいんです」

そんなことを嬉々として話していた4年前の自分が目の前に現れたら、その後に起こるであろう様々な苦労を実例を用いて説明してあげたい。
それぐらいにはお店の運営にも慣れたし、多少は成長……というか現実を知った気がする。

そんなお店を始める直前に、本屋さんで見つけた本があった。
それが雑誌、IN/SECTS(インセクツ)の「いいお店のつくり方」という特集号だった。

その内容をどれだけ自分が理解できていたかは怪しい。
それでも文具屋を開いた以上は「いいお店にはしたいよな」と思って手にとったことは明確に覚えている。
関西の雑誌社さんが作っている本ということもあって、京都、大阪、神戸のお店がたくさん出てきて、見知った地名の中でどんな風に商売をすればいいのかというのがなんとなくイメージできたというのも、関西在住の自分にとっては嬉しいポイントだった。

それから4年の時を経て、その保存版が発売されたと聞いて、本屋さんで思わず手にとった。
しかもパラパラと立ち読みしてみると、2016年と2017年に発売された際の合計17店舗へのインタビューと合わせて、2022年の今、その17店舗がコロナ禍を迎えてどんな風にお店を今もやっているのか……ということまで追いかけているのだ。
思わず手にとってレジに向かってしまったのも当然のことだと思う。

今回はこの本のおすすめポイントを踏まえつつ、自分自身も感じたことをご紹介できればと思う。

直視しなければならない「お金」のこと

お店を始める時、何をするにも「お金」がかかることに気づく。
もちろん手元に資金を持って始めるのはいいことなのだけど、おそらくは安心できるまでお金を貯めようとしてもなかなか貯まり切ることはない。

うちのお店もお金を日本政策金融公庫から借りてスタートしたし、はじめのうちは会社に勤めながら副業としてお店をはじめた。

ただ、事業によって借りているお金はそれぞれだし、相場というのがなかなかわからない。だからといって親しいお店の店主さんであっても、「いくら借りてる?」なんてなかなか訊くこともできない。

その点この本はすごい。
いくら借りているか、それはどこから借りているのかまで訊いていたりするのだ。

他にもお店の面積、運転資金など、あくまで雑誌に載せられる内容であるとはいえ、きちんと書いてあることに「すごいなー」と改めて思った。
この内容を読んだからといって、正直立地やこだわり、業種等によって必要な金額はわからない。

けれども、その具体的な流れを読ませてもらうことは、自分にとっても改めて参考になったし、これからお店を始めたいと思っている人にとっては本当にありがたい情報だと思う。

前インタビューから数年経って、コロナを経験したお店たち

過去の雑誌でのインタビューの頃は、まだ新型コロナウイルスの存在もなかった頃だった。
ただでさえお店を営んでいれば、6年近くの期間を経ることでその在り方に影響は出てくることがある。
それは、10月でようやく4周年を迎えるうちのお店なんかもまさしくそうで、気がついたら営業期間はコロナ流行後の方が長くなっている。

そんな変化を17店舗分読むことができるというのがこの本のすごく読み応えのあるところで、インタビュー形式の本って結構さらっと読めることが多い自分でもなかなか読み進められなかった。
本のページ数が500ページ近いということからも、その濃厚さが伺えると思う。

個性にあふれた色々なお店がインタビューに応じていることもあって、ただただコロナで辛い……といったインタビュー集にはなっていなくて、コロナだからむしろこうやったというような実践も書いてあることがとてもおもしろい。
移転や別のお店を始めたりする店主さんもいるというのも非常にリアルで、自分自身も6年後にどんなお店をやっているのだろうか……ということを改めて想像するきっかけにもなっている。

実際に読んだ上で、関西の方はもちろん、関西に旅行に来られた時に立ち寄るきっかけとしてもこの本はやくだつのではないかと思う。

いいお店ってなんだろう

「いいお店」はこうやって作ったらいい。
そんなただ一つの答えはこの本には書いてない。

IN/SECTSさんがいいお店だなと思ったお店が、どんな風にお店を作ってきたのか。そのインタビューが17通り載っている。
どれかが正解ということもなく、どれかが間違いということもなく、お店の数だけアプローチが存在していいのだと思う。

だから、いいお店ってなんだろうという考えは自分なりのものでいい……と思ってたんだけど、最後の最後に吉本ばななさんが文章を寄せられていて、油断していた私はその内容に涙腺がゆるんでしまった。
その内容はここでは書かないけれど、ぜひ書籍を手にとって読んでみてほしい。

確かに「いいお店」にはお店とお客さんの数だけ形があって固定の型はない。
けれども「このお店があってよかったな」とか、引っ越しをしてからも思い出してしまう馴染みのお店というのは、自分の中にもある。
ネットでなんでも買える便利な時代だけど、「あそこにまた行きたいな」と思ってもらえるような、「いいお店」にうちのお店もしていけたらなと思う。

そして、自分と同じようなことを考えながらお店をやっている方や、これからお店を始めたいという方には、この本をおすすめしたいと思う。

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