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RENEW2022を訪れて、「地域のデザイン」という言葉から「地域」がなくなる未来を想像した話

福井県でやってる「RENEW」というイベントはすごいらしい。

そんな話をデザインに関わっている複数の知り合いから耳にはしていた。
そんな、劇団四季のオペラ座の怪人の売り文句みたいな言葉を言われても、疑ってしまう程度には心が荒んでいる。

なにより「すごいらしい」というのは伝聞形式だ。
福井県という立地も、なかなか関西に住んでいて、車などの交通手段をもっていなければなかなか立ち寄る機会も少なかったりする。
でも、そんな「うわさ」は頭のどこかにずっと残っていた。

そんな風に気にしていたら、なんと「RENEW」を運営されているサイドから「福井県の伝統工業と商品を開発するプロジェクトに参加してみませんか?」とご連絡をいただき、しかもその中間発表を「RENEW」の期間内でやるという。

そこまで準備が整ってしまえば、もう飛び込むしかない。
今回は、“見て・知って・体験する” 作り手たちとつながる体感型マーケット「RENEW2022」に参加して感じた「地域でのデザインの在り方」をご紹介させてほしい。

県外の人も地元の人も。気負ってなくてもただただ楽しめる

RENEWの会場は、ちょっとしたフェス会場より広い。
というかだいぶ広い。
受付会場が位置する福井県の鯖江といえば「メガネ」のイメージが強いけれど、実はその近くには漆塗りの器や和紙、刃物、箪笥、繊維、焼物と様々な地場産業の産地が半径10kmにひしめいている。

広大な会場MAPは公式HPより引用

イベント自体が3日間に渡って開催されているのも、堪能し尽くすためにリアルに必要(もしくは足りないぐらいの)コンテンツがあることから当然だと言える。

そこで、RENEWではきちんとタクシー会社とも連携をとって、お得なチケットでイベント会場間を移動できる仕組みまで整えられている。
これは車を運転しない人にとっても大変助かるポイントだ。

福井県の伝統的な産業をみにくる……となると、県外の人向けのイベントに感じられるかもしれない。けれども会場周辺には、家族連れの地元の人や学生さんたちの姿も見られた。
それもそのはず。イベント全体の受付場所と位置づけられている「うるしの里会館」にはたくさんのフードトラックがたくさん来ていてまさにお祭りのような賑わいになっていた。

そして、うるしの里会館の中には「まち/ひと/しごと」という日本各地の面白いブランドが集まるショップ型展覧会も開催。

例えば竹のお箸を扱うブランド「ヤマチク」さんでは、30秒間でいくつお豆がつまめるかといった展示方法を行っていたりと飽きさせない。
実際にヤマチクさんではポテトチップスを食べる時専用の箸が売られていて、ついつい買ってしまった。
お店をやってるので、結構いろんなブランドに詳しいはずの自分でも知らないようなおもしろいブランドにも出会えることが出来て、なんとなく出店者を集めただけのマーケットとは違うおもしろさを感じることが出来た。

また、うるしの里会館から少し歩けば中川政七商店さんの暖簾がかかった建物があった。

こちらでも日本国内の様々な商品を見ることができたのはもちろん。

工芸キャンプと称して、家事問屋というラインアップの中から、ホットサンドを実演で作って試食までさせてもらえるイベントが行われていた。

他にもSAVA!STOREさんでは、シルクスクリーンでオリジナルのサコッシュなんかが作れたり……

漆琳堂さんでは、漆の器のアウトレット品を年に一度という形で販売されていたりと、県外から来た人も地元の人も楽しめる圧巻のコンテンツ量でこちらを飽きさせない。
なるほど。RENEWってイベントはすごいというのは本当だった。
仕事のため全然回れなかったけれど、更に越前刃物や越前箪笥など、様々なエリアに出向けばワークショップに参加できたり工房を覗くことが出来たりと、一年では回りきれない面白さで、ただただすごいなとしか感想が出てこなかった。

「LIVE DESIGN SCHOOL」という新しい取り組み

更に、RENEWのイベントの中では様々なゲストを迎えてのトークイベントも開催されていた。
なんと2022年のゲストには、無印良品のデザイン等でも有名な原研哉さんも来られるということもあって、イベント会場にはたくさんの人が訪れていた。

そこで発表されたのが「LIVE DESIGN SCHOOL」という学校の開校。
地域で活躍する様々なデザイナーたちを講師として迎えながら、一方的に教えるというよりは、お互いにデザイナー同士が情報を共有しながら生徒が一緒に学んでいくというスタイルの学校は「東京ではなく地元に戻って仕事がしたい」と考える人々にとっての「Adobeじゃない(があってもいい)デザイン」を学ぶ場になっていくとのことだった。

また、学びの先には「地域でのインターン」など、実際に働いてみながら地域での居場所を探していくと行った展開もきちんと考えているそうなので、教えっぱなしじゃないというところにも魅力が感じられた。

原研哉さんが「昔は東京に憧れる若者が、東京の情報がなくて困っていたけど、今は逆に地域で働きたくても、どうやって情報を集めたらわからない人がいる」というお話をされていたのを聞いて、たしかに……と思った。
まだ「やります!」という宣言をしたばかりで詳細はこれからとのことなので、気になる方は引き続き情報を待ってみるといいと思う。

「地域の」とか、「ローカル」という言葉はトレンドのように使われているし、実際スクールの説明の中にはそういったキーワードも登場した。
けれどあえて、名付け親の原研哉さんが「ローカルデザインスクール」や「地域デザインスクール」といった名称にしなかったのには意味があるとのことだった。

それは、地域でのデザインを行っていく行為をアウトサイダーのような特殊な枠組みにせずに、「デザイン」という行為のこれから当たり前になっていく未来として考えられたからだそうだ。

「ローカルのデザイン」や「地域のデザイナー」といった言葉から、「地域」をとることは、これからのデザインがこうなっていくんだという強い意志を見せることにもなると思う。
でも、RENEWというイベントを訪れてみて、それだけの熱気を直に感じることが出来た今なら納得できる。

そして、そんな面白い展開に負けないように頑張っていこうと、自分も刺激を受けることができてよかった。
この記事を通して、ぜひ2023年も更にパワーアップして開催されるであろうRENEWを、ぜひこの機会に少しでも多くの人に知っていただければ嬉しく思う。

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今回のライブデザインスクールに発展するきっかけとなった書籍も参考になるのでリンクを貼っておきます。


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