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【インボイス制度】は、ぶっちゃけ小さなお店にどう影響するのかまとめてみた

「インボイス制度やばいですよねー」
お店を開けていると、訪れたお客さんからもそんな話を投げかけられることがある。
ツイッターを眺めていても、反対する人の声を目にしたり、課税事業者にならないと大きな企業と仕事ができなくなるなんて話を聞いたりするとますます気になってくる。

けど、小さなお店をはじめてようやく3年が経ったばかりの私にはすべてがちんぷんかんぷんだった。
売上規模が1000万円に到達していない個人事業主は、免税といって消費税を納めなくていい・・・ということを知ったのだってお店を始めたあとからだった。
インボイス制度というのに登録しないと仕事が減るかもしれないの? それで課税事業者になったら、消費税を収めることになるの?? 例えば500万円売上のあるお店だったら追加で50万円納める必要があるの???

そんな風にお金の不安がもりもり膨らんでくると、逆にこわくなって苦手意識が出てしまい、不必要に遠ざけてしまう。
そんな悪い循環に陥りかけていた時、商工会議所さんから勉強できる場を開きますよとお誘いいただいて、インボイス制度を詳しく教えてもらえる機会をいただいた。

そして色々と基本から教えていただいた結果、知らないから怖い怖いと思っていたお化けのような感覚が、ある程度輪郭の見えるものになってきた。
そうすると、相手が見えれば対処の仕方も見えてくるから、漠然とした不安が萎んでいくのを自分でも感じることができた。

今回のnoteは2023年から始まる予定のインボイス制度に反対するとか賛成するとか以前に、インボイス制度に対して不安を持っている方に、一体どういうものなのかを基本から噛み砕いて共有することで、自分のように不安を感じている人がまず輪郭を掴むきっかけとなるような記事にしたいと思う。
あくまで専門家ではなく、一人の個人事業主としての備忘録的なまとめでもあるので、細かい部分は専門家の方に確認いただければという前置きとともに、読んで役立てていただければ嬉しく思う。

そもそもインボイスってなんなの?

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【インボイス制度】という言葉をきいてまず思うのは、インボイスってなんやねんってことだと思う。
コンプライアンスだとか、コンセンサスだとか、カタカナ文字を言われると途端に煙に巻かれたような気持ちになってしまう日本人はきっと私だけではないと思う。グーグル先生で調べると、上の画像の通り「請求書」と出てくる。
そう、要するに請求書に関する新しい制度だということがわかっていれば、まず1歩前進だと言える。

ただ、うちのように一般のお客様に対して商品を販売するお店なら、そんなに請求書なんて作ることないから関係ないなーと思うかもしれない。
だけど、この制度は請求書と言いつつ「レシート」「領収書」についても関係する話だから、このまま引き続き読んでほしい。

でも、もちろん。請求書の書き方が多少変わりますよーという話であればこんなにみんなが騒がない。
インボイス制度は登録制になっていて、申請をすれば基本的に誰でもインボイス制度に登録を行うことができる。
そうすると、「インボイス」と呼ばれる「適格請求書」なるものが発行できるようになる。

じゃあ登録すればいいだけじゃんと思うところだけど、ここで1つ目の問題が発生する。それが「課税事業者にならないとインボイス制度に登録はできない」ということ。
そもそも、個人事業主になるまで知らなかったけれど、年間売上が1000万円に満たない小さなお店や事業は、消費税を納めなくていい「免税事業者」であることがほとんどだ。
でもそんな「免税事業者」であることを辞めて、消費税を納める課税事業者になることは、事業にかかるコストは上がってしまうことが容易に想像できると思う。

じゃあ当然、インボイス制度に登録しなきゃいいじゃんと思われると思う人も出てくると思うし、自分もそう考えたのだけど、そこでも問題が出てくるからこそインボイス制度は論争を巻き起こしているのだと言える。

そして、その問題を理解するには「消費税」について詳しく知っておくと理解しやすくなる。
そのため、ものすごく基本的なこととして「消費税」ってどうやって納めるのかということから解説していきたい。

100万円売ったら、10万円消費税を納税するの?

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「課税事業者」になって、もし税抜100万円分商品が売れたなら、10万円分消費税を国に収めないといけないのではないか。
そんな風に自分は誤解をしていた。

そう。結論から言えば免税事業者から課税事業者になったからと言って、いきなり売上の10%を追加で納税することにはならない。
それは、売上高が1000万円を越えていない、うちのような小さな事業規模の個人事業主さんと話をしていると結構同じ様に考えているケースが多かったので、意外とみんな知らないことなのかなと改めて思った。

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では、なぜ売上の10%をそのまま納税しなくていいかといえば、もちろん理由がある。
それは、お客様からお店が受け取った消費税から、自分が商品を仕入れるために支払った消費税差し引いたものを国に納める仕組みになっているからだ。

上の図のケースで言えば、商品をお客様に販売した際に発生した消費税10万円から、商品をメーカーから仕入れる際に発生した消費税5万円を差し引いて「10万円−5万円=5万円を国に納める」といった計算になってくる。

これ以外にもお店の運営に必要な経費として、お店の家賃や携帯代などの通信費、事務用品等で発生した消費税も、売上で発生した消費税から差し引いた上で、1年間分の計算を行い、自分のお店が国に納める消費税は出てくることになる。
つまりざっくりと説明すれば売上から仕入れに係る消費税や経費に係る消費税、自分が生み出した利益に関わる消費税を支払うということになってくるというわけだ。

そのため、課税事業者になったときに受ける影響は、職種によっても変化することになる。
うちのようにお店の商品を仕入れて販売している業態は、利益率が低めなので支払う消費税も小さくなる。一方でデザイナーやアーティストをはじめとする材料にかかるお金が比較的少ない業態に関しては、商品を仕入れて販売しているお店に比べて、そもそも画材購入等のために支払っている消費税が少ないために、免税事業者から課税事業者になったときに支払うことになる消費税が大きくなることが考えられる。(もちろん材料を追求することにこだわりのあるアーティストやデザイナーの方もたくさんいらっしゃるため一概には言えないので、あくまで例です)

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上の図はあくまで極端な例のイメージだけれど、もし10万円分の画材を購入して、100万円という高い価値を生み出すアーティストがいたとしたら、商品(アート作品)をお客様に販売した際に発生した消費税10万円から、画材などの材料を購入する際に発生した消費税1万円を差し引いて「10万円−1万円=9万円を国に納める」といった計算になってくる。

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売上に対して得られる利益が5割であるお店(実際にはもっと利益率は低いけどあくまで例)に対して、アーティストの利益率は9割(もちろんこれもあくまで極端な例であり、利益率の低いアーティストやデザイナーの方もいらっしゃる)だとすると、同じ500万円の年間売上だとしてもお店には250万円の利益しか残らず、アーティストには450万円の利益が残る。

こんな風に、個人事業主の手元に残る利益は売上とは必ずしも比例しない。
だから、1000万円以上の売上を稼がなくても十分やっていけているという人もいる。
そんな人にとっては、インボイス制度のためにわざわざ課税事業者になって、追加で消費税を納めたくないという気持ちも経営者としてよくわかる。
また、なかなか頑張っても1000万円も売上がいかない!と苦しんでいるお店は、このコロナの影響の中でたくさんいる中で、インボイス制度に登録すると小さく始めたばかりのお店も消費税を納めなければならなくなってくる。

じゃあインボイス制度に登録しないとどうなるのか??
ここからがまた、お店によって判断しなくてはならないポイントになってくる。

インボイス制度に登録しないと、小さなお店はなんで困るの?

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あなたがお店を営んでいて、インボイス制度に登録をしていなかったらなぜ困るのかもしれないのか。
それを考えるには、先程の「消費税」の話が大きく絡んでくる。

あなたのお店に素敵なオリジナル商品があって、上の図のように、どこかの会社に仕入れてもらったとする。
ただ、あなたのお店はインボイス制度には登録をしておらず、インボイスという適格請求書というものを発行できない。
一方取引先の会社はインボイス制度に登録をしていて、消費税も納めている課税事業者だったとしたら、のちのちその会社に不利益な部分が出てくることになる。

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先程、お店がメーカーから商品を仕入れて、お客様に販売したときのように、あなたのお店から商品を仕入れてお客様に販売をして消費税を預かる。

じゃあ、「販売した商品の消費税10万円」から「商品仕入れの際の消費税5万円」を差し引いて、国に5万円を納税すればいいと思いたいのだけど、これができない。

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インボイス制度に登録していないあなたのお店から発行した請求書は、消費税の差し引きには使えないというのがインボイス制度に変わることで生まれる新たなルールなのだ。
つまり、あなたの取引先の会社は、販売した商品の消費税10万円をそのまま国に納めることになり、あなたがインボイス制度に登録している場合より5万円多く消費税を納めなければならないことになる。

その結果として、インボイス制度に登録のないお店は、インボイス登録をしているような企業から使ってもらいにくくなる可能性があるのではないか・・・というのが、いま問題になっているポイントにほかならない。

でも、大きな会社に納めるようなオリジナルアイテムもないし関係ないんじゃないの?と思われる人もたくさんいるかもしれない。
実際自分もそんなふうに構えていた。
けれど、大きな金額は動かないものの、実は小さいお客様との取引でも問題は発生してくる。
国税庁のホームページを見ると、仕入税額控除の対象となるものというページで、下記のようなものも仕入税額控除の対象になりますよという記載がある。

(4) 広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払
(5) 事務用品、消耗品、新聞図書などの購入
(6) 修繕費
(7) 外注費
国税庁ホームページより引用

例えば接待交際費には飲食店での食事も含まれる。
事務用品や消耗品にはうちのお店で扱うような文房具なんかも含まれるし、新聞図書などの購入には本の販売なども含まれる。
修繕費にはビルやお店の設備を修理する人々の請求する費用だって関係してくる。

更には、これまで免税事業者だったたくさんのスモールビジネスの人たちが、インボイス制度に登録するために課税事業者になったら、その人達の消費税の差し引きにもインボイス制度に登録したお店や事業者の領収書や請求書が必要になってくる。

基本的に「領収書をお願いします」といわれる商売をしている人には関係してくるのがインボイス制度なのだと考えたほうが良さそうだということになる。

まずは正体を知って、どうしていくかを考える

ほかにもインボイス制度には様々な注意事項がある。

たとえば、2023年にスタートしてから3年は、インボイス登録のない請求書の消費税は8割を差し引けて、3年が終わってもそこからまた3年は5割差し引くことに使えることとかも多くの人が知っておくべき内容だと思う。

更には、領収書を経費として処理する際には軽減税率かどうか以外に、インボイス登録の有無も分けて取り扱う必要が出てくる会社も多くなることを考えれば、大きな会社に務める人にだって影響のある制度といえる。

ただ、うちのような文具を扱ったり、オリジナル商品を企業に卸したりしているお店は、登録しておいたほうがいいのかなと感じたし、領収書をお願いしますと言われるケースの多いお店ほど、登録するかどうかをいまのうちから考えておいたほうがいいと感じた。

もっと詳しい内容は、詳しい専門の方に聞いていただいたほうが確実なので、ぜひ気になる方は早めに調べていただければなと思う。
あくまで、一人の個人事業主のまとめた内容だけれど、同じ様に不安の中にいる方の参考になれば嬉しい。

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