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「山の上のパン屋に人が集まるわけ」を読んだら、平田さんの試行錯誤が内蔵にズンと響いた話

「陸の孤島みたいなもんやな」

そうお客さんと自嘲気味に話すことがある。
私が営んでいるお店は、大阪の北の方の箕面(みのお)というばしょにある。
箕面そのものが陸の孤島ということはないのだけど、電車で来ようとすると近隣に駅はなく、バスに乗るか30分近く上り坂を登るかというなかなかな選択肢を迫られる。

そんなうちのお店の近くにも2024年3月頃に駅ができる。
というかそもそもの予定から、実は3年以上遅れている。
初めのうちは「駅ができればお客さんが増えるはず!」と待ちの姿勢であった自分も、延期が発表されるたびに「お客さんが来るのを待っていては死ぬ」と覚悟を決めてオンラインストアを頑張ることにしたのは未だに記憶に新しい。

そんなうちのお店が当初から気になっていたお店がある。
お店の名前は「わざわざ」
なんでも山の上の方にあるパン屋さんだけど、「わざわざ」行きたくなるくらい人気らしい。
そんなわざわざを始めた代表取締役の平田はる香さんが本を出すというから、予約して購入した。

本の名前は「山の上のパン屋に人が集まるわけ」
僻地系文具店として参考になることがいっぱい書いてあるだろうと期待いっぱいで手にとったこの本について、今回は読んで感じたことを書いてみたい。

本の中身がまるごと「わけ」

本の内容はとても読みやすい。
手にとって1日かからずに、さっと読み終わることができる。
けど、「こうすれば山の上のパン屋さんにも人が集まるよー」的なインスタントなノウハウは全然書いてない(しそれが面白い)

書いてあるのは平田さんの赤裸々な過去と、失敗も含んだ様々な経験だ。
その歩みは、開業して5年目の個人事業主の視点からみると何歩も先をゆく先輩のリアルな足跡であって、真似しようと思って同じところにいけるわけないと感じられる内容だ。

でも、この本はそれをあらかじめ意識した上で、書かれているように思えた。

平田さんの考え方は、平田さんのnoteでも目にしてきたから、ある場面については平田さんの考え方と自分の考え方が被る部分があると勝手に思ってきていた。
でも、この本の中ではその考え方がどのような人生経験から出てきた「判断の表面部分」なのかというのが、もちろん文章として表現できる範囲ではあるけれど丁寧に描かれている。

「山の上のパン屋に人が集まるわけ」というタイトルならば、世の中にあふれる自己啓発系の本ならば「こうやって」「ああやって」といった答えが書いてあるだろう。
けど、この本は現在進行系の平田さんの想いや悩みが滲み出てきている。
ご本人の頭の中や日記を覗き見させていただいているかのような、濃厚な原液に浸かる感じがあるので、ぜひお店をやっている人やこれから始めたい人もそういう体験を味わうつもりで読んでみてもらうのが一番面白い気がする。

お地蔵さんのようにお客様を迎える

どこを取り出しても平田さんの考えが面白いこの本の中で、個人的にすごく学びになったのは「お地蔵さんのようにお客様を迎える」というフレーズ。

プライベートまで踏み込んだ接客というのが苦手で、どちらかといえば淡々としている自分なので、そういった接客をしているお店を見ると「そういう風にしないといけないのかなあ?」と思わされることもある。

けど、そういったことに深く踏み込まず、お金を通した等価交換としてのお店のコミュニケーションのありかたも「あり」だというお話をきいて、なんだか救われたような気持ちにもなった。

お互いに依存せず、自立している関係。一線を越えない関係。来るか来ないかわからないお地蔵さんのようなありかたは、味気ないように見えて無理がない。

もちろん、コミュニケーションを売りにするサービスもあっていいのだけど、お店をやる人がすべてムリしてそうする必要もないんだなと思えたのですごくありがたい。

「できること」をつなげる線を引く時

もう一つ。
本を読みすすめる中で心をひかれたのが、「できること」をつなげる線を引く話だ。

ずっとやりたいことを探してきた平田さんが、これまでの経験で培ってきた「できること」という点をつないでパン屋さんを始めるその時。
「できること」は「やりたいこと」になるのかもしれないというお話が、すごく納得することが出来た。

「やりたいこと」を仕事にするべきだと言われても、なかなか確信を持って選べている人は少ないと思う。
けど、自分にできることを持ち寄って、それらを自分の手で繋いで何かに挑む瞬間はワクワクするように自分も思う。

前の職場では「スタッフへの説明がうまい」と言われてきた自分だけど、それだけではなかなか仕事にはならない。
でもその特性を、「文具が好き」であるとか、「接客が苦にならない」といったできることと組み合わせていった先にうちのお店も成り立っているし、実際やっていてすごく楽しい。

そして、そのつなぎ方の組み合わせは世の人の数だけ、たくさん存在するのだと思う。
人生100年時代と言われて久しいけれど、そういった意味では10代でいきなり夢がみつからなくても、できることを増やしていけばやりたいことが生み出せるのかもしれないと思うと楽しくなる。

こんな様々なヒントをもらえた平田さんの本を読むきっかけに、このnoteがなったら嬉しい。

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