今日も不器用に、「夢」の輪郭線をなぞる

「これ使ってみたらどうや」

小学校に入ったばかりの頃。
そう言って父が私に手渡したのはトレーシングペーパーと呼ばれる半透明の紙だった。

ドラゴンボールやドラえもん。
マンガを読むのが大好きで、将来は漫画家になりたいなんてピュアな夢を語っている割に、私の絵が一向に上達しないのを見かねたのだろう。
トレーシングペーパーなら、漫画本の上に重ねてイラストの輪郭をなぞるだけで元のイラストに近い絵を描くことができる。

思えばある意味現代のスマホやパソコンで日々行っている「コピペ」に近いのかもしれない。
その方法で上達する人もいるのであろうけど、私の場合はなかなかうまくはいかなかった。

原因は簡単。
トレーシングペーパーを使えば、ドラゴンボールの悟空を上手に描き写すことはできる。
でもいざ自分でゼロから描こうとすると…まあ、似ても似つかない微妙な何かが完成してしまう。
そのギャップをもとに成長していくパターンだってあるにはあったのだろうけど、私の場合はその差にうんざりしてしまうタイプだった。
典型的に根気が足りないのだ。
次第に絵を描くことは諦めた。

店舗内装

社会人になり、転職を経験し、今は小さなお店を営んでいる。

あの日憧れた漫画家さんとは全然違う仕事なのだけど、ふとした拍子のそのトレーシングペーパーをなぞっていた頃の感覚と同じものを自分の中に見つけた。
今日はそんなお話を少しさせていただけたらと思う。

見様見真似でお店を形作ること

店舗外観

「自分も将来こんなお店とかやってみたいんだよね」

そんなことはよく面と向かってお客様からも言われる。
でも、だいたいそのあとには「でもどうやっていいかわからないからな…」と二の句が続く。というか自分だってそうだった。

たぶん、よほど外注で全てをコンサルティングしてもらうとかでもない限り、お店の作り方って試行錯誤なのですすむものなのだと思う。(そしてコンサルティングしてもらったところで、その外注費用を稼げるお店に育てることの大変さよ…)

大手の小売で10年働いてきた自分も、お店の場所探しから取引先の探し方…というかどうやって連絡をとるんだみたいなところから試行錯誤をはじめていった。

かっこいいお店のレイアウト、普段気に入って使っているアイテムを取り扱っているメーカー、クレジットカードはどこのサービスを使用すればいいんだろう…

夢にまでみた自分のお店の姿は、いざ形作ろうとするともやもやっとしていて、トレーシングペーパー以上に曖昧な輪郭しか見えない。
それでも、なぞっては間違い、なぞっては修正し、できあがったものが自分のお店になっていった。

元ネタがあっても夢の輪郭は自動では生まれない

画像3

ゼロからなにかを作り上げていく大変さを痛感しながら、お店をつづけること2年。
私はひとつのチャレンジをすることにした。

それはオリジナルの文房具をつくるということ。

薄いノートをしっかり守ってくれる、そんなハードタイプのノートカバーを作って提案したところ、クラウドファンディングで500人以上の支援を頂いて、プロダクトを生み出すことができた。

ただ、このノートカバーには、「ハードタイプの薄型マンスリースケジュール帳」という元ネタが存在している。
いつもお世話になっているラコニックさんというメーカーから発売されていた、薄くて固くてスマートに持ち歩けるスケジュール帳がもともとあって、自分で使っていてもとても気に入っていた。
ただ、その商品が廃盤になってしまうということで、なんとかちがう形でうちのお店で売れないか・・・というのがひとつの出発点となり、ノートカバーとしても使えるようにして通年販売が可能なものとした。

元ネタがあることで非常に滑り出しはよかったものの、それでもひとつの商品をきちんと作り上げて世に出し、購入してもらうという大変さを味わうことができたのもこの経験の大きなところだった。

その点も、トレーシングペーパーでドラゴンボールをなぞっていた時と同じかもしれない。
結局の所、ただ元ネタをなぞっただけではオリジナルの商品にはなりえない。
元ネタをどういうプロダクトに昇華させていくのか…という夢をできるかぎり明確に思い描いて、その輪郭をなぞっては修正する…といった作業なしには商品は作れないんだなと実感させられた。

今日も不器用に、夢の輪郭線をなぞる

画像4

商いを続けていく以上、たぶんこの輪郭をなぞる作業は続くのだと思う。
この感覚はきっと人それぞれで、天才的な人ならゼロからなにかを描くこともできるのだろうと思う。

でも、平々凡々な自分は、トレーシングペーパーで超サイヤ人をなぞっていたころの様に、夢を思い描いてはその曖昧な輪郭線を形にしてみて、あーだこーだと修正し、また夢を思い描いては…という繰り返しをいつまでも続けるのではないかと思う。
よくいえばトライアンドエラー。
エラーの方が圧倒的に多いけれども、器用でない自分はそうやってサイクルを回し続けるほかはないように思える。

そんな不器用ぶりながらも、お店を続けられているのは、支えてくださるお客様や先輩たちのおかげにほかならない。
不器用は不器用なりに、今後も頑張っていきたいと思う。

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