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ササミは尿石症の犬に与えてはいけないのか?

先日、飼い主さんから、「尿石症の犬にササミを与えてはいけないとネットにあったのですが本当ですか?」と聞かれました。

正直なところ、そんな話は聞いたことがありませんでした。それで、ネットで調べてみると、なるほどそんな風に書かれている記事を見かけました。というか、「犬 尿石症」で調べると、まぁまぁたどり着きます。その記事によると、なぜササミがダメなのか、「リンが多く含まれているから」とのことでした。

ササミ以外の肉と、比較してリンの含有量が特別多いのでしょうか。調べてみました。
もちろん、その動物の栄養状態や飼育方法、保存方法によっても変動はあると思いますが、『食品成分表2020年版』で調べた一般的な肉類のリンの含有量の目安です。

牛肉(赤身):183mg
豚肉(もも肉):183mg
鶏肉(むね肉):200mg
ホルモン(豚):310mg
レバー(牛):350mg
馬肉(赤身):220mg
鶏レバー:270mg
鶏ササミ(胸肉):170mg
鶏もも肉:187mg
ラム肉(ロース):234mg

リンの含有量は、実は一番少ないという驚きの結果でした。「ササミはストルバイト結石の原因になる」という根拠は無いということです。

犬の尿石症は、
①アルカリ性の尿ででできるストルバイト(リン酸マグネシウム)結石
②酸性の尿でてきるシュウ酸カルシウム結石
の主に二つ。

「リンが多い」ことを問題にしているということは、ストルバイト結石を心配してのことなのですが、そもそも、肉食動物の尿は弱酸性で、草食動物の尿はアルカリ性です。つまり、穀物や野菜を多く摂取することの方が、ササミを避けることよりも優先すべきかなと思います。また、煮干しや鰹節などの骨ごとのお魚の方が問題です。魚類のリンの含有量も調べました。

  • 鮭(養殖):238mg

  • マグロ(養殖):200mg

  • サバ(養殖):263mg

  • イワシ(養殖):318mg

  • タラ(養殖):140mg

  • ヒラメ(養殖):140mg

  • サンマ(天然):290mg

  • カツオ(天然):224mg

白身の魚以外はやはり高い値ですね。

なので、「野菜を多く加えて、タンパク質は肉じゃなくて魚をチョイス、おやつに煮干しを与えている」という、一見すると健康に良さそうな食餌が犬にとってはストルバイト結石を作りやすい結果となるのです。

なお、ササミには多くのプリンが含まれています。尿酸値を上げるので、尿酸アンモニウム結石の原因になることがあります。人間ではプリンの代謝が問題になることが多く、ササミは避けた方がいいと言われます。犬でも、遺伝的に尿酸アンモニウム結石ができやすい犬種(代表的な犬種はダルメシアン)では、ササミは避けた方がいいと思いますが、尿酸アンモニウム結石以外の結石で、ササミを避ける必要性、根拠は無いと考えます。

ネットの情報の中には、ホントに?そうなの?っていうものがあり、そう思ったら根拠を調べてみるといいと思います。

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