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天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 1

社長のあるべき姿を考える(1)

小規模企業の相談を36年間行い、その数は約2万社以上となる。同時に中村天風氏の教えや考え方を自己流で勉強し、その教えから社長の抱く哲学や心構えの大切さを身にしみて感じている。結局、企業経営の良し悪しは社長が抱く、哲学、考え方、心の持ち方、資質など(以下、考え方という)で決定づけられるということである。
特に企業のトップである社長の考え方は日常の経営活動を通じて、従業員をはじめ、顧客や取引先、あるいは会社を取り巻く関係者全般に何らかの形で影響を与えているということは否定できない。
 
それゆえ、社長の考え方で自社の方向性は大きく変化し、あるいは決定づけられるといっても過言ではない。「儲けが第一」と考えれば社員全体は同じ方向に向って活動するし、「顧客第一」と考えればそのような動き方をする。また「従業員第一」ならば、社員一同の言動が同じ方向に向かっていくだろう。
 
そして、社長の考え方に否定的な考えを持つ従業員は会社を去っていくこともあろう。これとて致し方ないことであり、そうでなければ組織が一致団結して同じ方向にまとまることはできなくなるからである。それだけに組織のトップである社長の考え方や役割は重要なのである。
 
経営を行う上で、その目的をどこに置くかで経営の良し悪しが決定づけられ、その目的は社長自身が定めることになる。極端に言えば、社長個人や自社のみの繁栄に置くか、それとも自社以外(顧客、従業員、取引先など)に置くかである。結論からいうと、後者の考え方の方が断然企業経営は安定している。
 
このことは、中村天風氏の言葉の中からも読みとれる。具体的な言葉を掲げる。
「人間は進化と向上に順応するためにうまれてきた」
 
「自分の成功や幸福のことよりも、他人の成功や幸福を願い、かつそれに向けて邁進していけば、いつの間にか自分も成功と幸福を掌中におさめることができる」
 
「生活目標にすべきことは、常に“人の世のためになることをする”である。人の喜びをわが喜びにするという心持が必要である」
 
「事業をしている人、世の中に貢献するという目的があるか。事業に成功するには、自分の欲望を離れて何かを考え、その通りに実行することである」
 
また、京セラの元社長、故稲盛和夫氏は天風哲学を学んだ一人であるが、「利他の心」の重要性を説き、次のような言葉を残している。
「ビジネスにおいても、その他の人生万般に関しても、“相手が得するように”という思いを基準に判断したことは、すべて成功してきたと明言できます」
 
「経営の判断基準は、“会社にとって”正しいかどうかではなく、“自分にとって”正しいかどうかではなく、“人間として”正しいかどうかである」
 
「最も崇高で美しい心は“他社を思いやるやさしい心”、時には自ら犠牲にしても他のために尽くそうと願う心です」
 
経営の神様と言われ、同じく中村天風氏の影響を受けた松下幸之助氏も次のような言葉を残している。
「事業とは、その目的なり産業人の使命というものが、単に儲けるためではなく、世の中人のためであり、物質を豊かに安価に供給することによって、この社会から貧困をなくしていくことである」
 
「社長としての適性を持っていない人が社長になると、その会社はうまくいかない。だから自分の個性、徳性、適性などを自ら認識する必要がある」
 
前回までは、私が実際に携わった経営相談の内容を天風哲学との関連性について述べてきた。今回からのシリーズとして、会社社長がどのような心構えや考え方が必要かについて、前回同様に天風哲学の教えを交えて述べてみたい。なお、ここでいう社長とは中小企業、とりわけ小規模社長を対象としている。
 
 

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