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相談事例と天風哲学(事例10)14

  当ペット販売店(個人事業)は、市内でも老舗で有力な店舗として、顧客や業界では有名な店である。社長は地元経済団体の役員でもあり、かなり名前が知れている人物である。本店のみで運営していたが、大型ショッピングセンターのテナント店としても開業、この頃から業績が悪化してきた。

   当社の社長の息子さんから相談があり、次のような事業内容なのでどうすればよいかの相談となった。それによると、社長自身の借入金は約5,000万円、年商約10,000万円、負債の中には高利貸しからの借入、税金の滞納、未払い金などがあり、金融機関からは約3,000万円位という。
  ただし、A金融機関には元金返済が8ヶ月も滞納となっており、あと1週間の期限で一括返済しなければ保証協会に代弁の申し立てをするとのことである。
息子さんには債務はないが、父の連帯保証人となっているため悩んでいる。

 息子さんは自宅を手放したくないので破産は避けたいとの気持ちが強かった。そこで金融機関は一行であることから個人版民事再生法の活用を提案、専門家を入れて話し合を行ったが、金融機関が断固として反対、結果的に破産の道となったもの。
 この例では、社長の金融機関に対する印象が悪く、完全に信頼関係が崩れたことが最悪の道を選ばざるを得ない結果となったのである。

 金融機関の見解は、約束の履行が守られず、それも一度や二度ではないという。その度に言い訳や逃げの態度で対応し、完全に人間として信用できないというのが理由とのことである。
 社長の中には地域経済団体等の役員も兼ね、立派な言動を発する人もいるが、「約束を守れない」、「時間を守らない」、「いつまでもやらずに放っておく」など、人間としてルーズな性格の人も少なくない。

 天風氏の言葉を借りれば、「事業をしている人、その心に信念があるか。どこまでも人間をつくれ、それからあとが経営であり、あるいはまた事業である」という。事業よりもまず人間としてどうあるべきか、しかも事業を営んでいる以上、人としての資質や人間性は最低限確立されていなければならない。

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