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相談事例と天風哲学(事例15) 20

(染色業の例-15)
県南で事業展開する繊維等の染色業者の例である。国内の繊維業界は、海外からの安価な輸入品に押され衰退の途のある業者は多い。当社も同様に厳しい状況下にあり、社長は70歳代で40歳代の息子と二人で経営している。
社長は以前から業界の衰退をキャッチし、新たな事業を興そうと試行錯誤してきた。健康に関した寝具などを開発し、販売したものの思うようには売れず、仕掛品や製品の在庫を抱えるようなった。一方、長男は従来からの染色を中心に事業を行っているが、売り上げの拡大は望めないが安定した受注が続いている。
 
社長は将来を憂い新たな商品開発を行っていこうとする前向きな考え方の持ち主である。いつかはヒットするだろうと、開発を続け10年が経過、その間に資金繰りは悪化、この度リスケを実行するため改善計画書の作成となった。ところが、社長と長男の意見は合わず、改善計画はとん挫。
 
長男にしてみれば、社長はこの開発で資金を使ってしまい資金繰り悪化を招いたと主張、両者が反発しあい、改善計画書作成は進まないでいる。長男は、社長が責任をとって会社を一旦破産させ、その上で工場と機械類を借用して現在の仕事を続けたいとの希望、そこで破産の手続きに入ることにした。
 
当社がこのような結果に至った原因はどこにあるのか。まず、第一に挙げられるのは親子間の理解度がなかったこと、もっと会社全体の経営に対し話し合いを行い、どこに問題や課題があるのか、今後はどのようするべきかなどの話合いが行われなかったことである。
第二は社長の独断による新たな事業進出である。もう少し計画的に、あるいはいつでも撤退できるという余裕を持ちながら進むべきだったのだ。今、振り返ってみると前進しているうちに大きな墓穴に落ちてしまっていたという結果となった。
 
社長にしてみれば先行きの不安から、新たな事業の方向転換という前向きでかつ積極的経営として行動したことであった。積極的という点だけをみると評価できるが、単なるイケイケどんどんの積極性だけでは成功への道にはつながらない。
 
積極的ということでは一見よさそうに見える行動であるが、自己資金や販売先、人材など多方面から検討して動くべきだったと考えられる。

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