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山桜

休日


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Stole : Faliero Sarti®︎
Coat : Poème Bohèmien
Shirt : Poème Bohèmien
Pants : LEE
Bracelet : M.Cohen
Boots : Maison Margiela


平日の午前、クローゼットを漁る。

自分の好きな服を着て、好きな所へ。

洋服好きにとってこれ以上の幸せはない。

お昼はどこにしよう。

と、やめてたタバコに火をつける。

禁煙に失敗したのではない。

禁煙を卒業したんだ。

くだらないことを自分と世間に言い聞かせ、

僕の休日が始まる。




麺をすすりたい。

さらに天ぷらを追加召喚出来れば

今日死んでも悔いはない。

蕎麦が食べたい。

ものの5分で行き先が決まった。

山桜に行こう。




小松市


僕の地元は石川県の小松市という田舎町。

土地のほとんどが田畑や山だろう。

最近北陸最大のイオンが出来たり、北陸新幹線が

開通したものの、田舎は田舎。

大都会に発展することは今後ないだろう。

都会になりきれない田舎、それが良い。

それが魅力なのだから。

そんな中途半端な田舎の端に

「手打ち蕎麦 山桜」は店を構える。




山桜


日本一、いや世界一好きな蕎麦屋と言っても

過言ではない。


癌が発覚し、祖父亡くなる前に

いろんな所へ出掛けよう。

そんな折に見つけた蕎麦屋が山桜だ。

天ぷら蕎麦を美味そうに食べていたのを

今でも覚えている。

割烹料理店を営んでいた料理人の祖父が

美味いと言っていたんだ。

味は間違い無いんだろう。

おろし蕎麦派から天ぷら蕎麦派に変わったのは

間違いなく祖父の影響だろう。

ちなみに僕は基本何を食べても美味いと

感動する。

食べログに向いているような舌ではない。笑


小松で1番好きな蕎麦屋から、

世界で一番好きな蕎麦屋に変わった

忘れられない出来事がある。

祖父が亡くなった日、墓前に蕎麦を供えたい。

泣きはらした顔で山桜に行き、声にならない声で

「天ぷら蕎麦を、爺ちゃんに供えたいです。」

とお願いをした。

もちろんテイクアウトをするような店ではないが

わかりましたと快諾していただいた。

蕎麦と天ぷらにラップをかけてくれて最後に

「代金は結構です、最後にお爺ちゃんに

供えてあげてください。」

と。その優しさと人情味にさらに泣いた。笑

忘れられる訳がない出来事。

もちろん山桜の蕎麦は美味しい。

だが、それ以上に山桜の人情味溢れるところが

好きなのだ。

だから世界一。

今後、僕の中で山桜を超える蕎麦屋は

現れないだろう。




鴨肉のタタキ


山桜は蕎麦屋だが、蕎麦以外のメニューも

かなり充実している。

とろろ飯やネギトロ丼、馬刺しなんかもある。

天丼を頼もうか迷ったが、蕎麦が食べられなく

なってしまうので我慢した。とっても我慢した。


まずは前菜として鴨肉のタタキを注文。

そもそも名前が美味い。

鴨肉をタタキにして不味いわけがない。

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いざ運ばれてきて実物を見るとさらに美味い。

食べなくてもわかる。

家が近ければ平日の午前11時からビールで優勝

してやるところだ。

まずは何もつけずに食べてみる。

美味い。

しっかりとローストされた香ばしさに、

刺身のようなしっとりとした食感。

胡椒が効いていて、ポン酢なしでも充分美味い。

これにポン酢なんてつけたら美味すぎて死ぬ。

と思いつつポン酢をつけて食べてみる。

蕎麦の到着を待たずして死んだ。




天ぷらと蕎麦


本日の蕎麦とご対面。

山桜の何が良いかって、量が多いこと。

この辺もご主人の人情味が現れてるような

気がする。

1人前で実質1.5人前はあるんじゃないだろうか。

美味しいものはたくさん食べたいという僕に

とっては非常にありがたい。

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写真を撮る時間がもったいない。

一刻も早く撮影を終わらせて食べたい。

僕はもともとご飯の写真を撮るような

人間ではない。

出てきた瞬間に箸をつけてしまう。

一時の我慢も出来やしない。

だから写真フォルダには料理の写真が

ほとんどない。

だが食べログを作ると決めた今、

写真を撮らねば話にならない。

早く食べたいので30秒ほどで写真を撮り終えた。

この僕が30秒も我慢したのだから快挙だろう。


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美しい。This is beautiful 「TENPURA」

もう芸術作品にしか見えない。

穴の空いた蓮根さんからいただきましょう。

サクッ…ジャクッ…

耳で味わっていると言っても過言ではない。

心地の良い快音が口内で響く。

蓮根についた衣がまた良い。いい音が鳴る。

快音はやがて止み、蓮根の上品な甘みが残る。

と、何故美味しいのかを細かく分析したものの

食べてる最中の脳内は「美味い」の3文字しか

出てこなかったように思う。

シンプルに揚げたての天ぷらは美味い。

※この後他の天ぷらも美味しくいただきました。


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山桜の蕎麦は山中(石川)の天然水を使用し、

蕎麦粉は戸隠産(長野)、北海道産を使用する。

石臼を使ってお店で製粉し、毎朝その日の蕎麦を

その日に仕上げている。←教えてもらいました


後から調べて分かったことだが、写真の独特の

蕎麦の盛り方は戸隠地方の「ぼっち盛り」という

盛り方だそう。

神様に蕎麦を供える際に、神様が食べ易いように

蕎麦を盛ったのが起源らしい。美しい。


ズズズっ。ズゾッ。

美味い。

何が美味いかというと、まずは音。

大袈裟とも取れる蕎麦を啜る音が美味い。

そして啜った時の食感や喉越し。

冷ややかな食感と、カツオの効いたつゆが

喉を駆け抜けると、

思わず「美味い」と声が漏れ出る。

天ぷらも蕎麦も、音と食感で味わう料理だ。

天ぷらはサクサクの方が美味いし、

蕎麦は下品なくらいに啜って食べた方が美味い。

そしてこういうことを書いていると、思い出して

また腹が減って死にたくなる。




鴨ネギ


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この日は相方と2人で食べに出たのでもう1人は

鴨ネギ蕎麦を注文。

2人で行って良いところはシェアできるところと

相方が残した場合それを貰えることにある。

量が多いので山桜はもらえる可能性が高い。

ゲスの極みである。

文字通り鴨がネギ背負ってやってきた蕎麦。

鴨を一枚めくるとキノコもたくさん入っている。

どうやらキノコも背負ってきてくれたようだ。

ローストされた鴨もネギももちろん美味いのだが

このキノコが鴨とネギの旨みを吸って

とんでもなく美味い。特に舞茸。

大量に入っているためこのキノコでお腹が

いっぱいになるらしい。

ありがとうキノコたち。

おかげで二種類の蕎麦を堪能できました。




蕎麦湯


蕎麦屋の楽しみは蕎麦だけではない。

蕎麦を食べたものだけが飲める至高の一杯。

蕎麦湯だ。

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この一杯を飲むために、つゆを少し残しておく。

体に良いとかなんとか。

正直飲む理由はわからない。

美味いから飲んでいる。

これを飲むと蕎麦と天ぷらと鴨ネギで

興奮していた心が落ち着き

「また来よう」

と思うのだ。



ごちそうさまでした。


お腹と心を満たして帰路に着く。

次は天丼食べようとか、次は馬刺し食べようとか

何かしら違うものを頼もうと思って店を出るが、

次もまた天ぷら蕎麦を注文するに違いない。

結局自分が好きなメニューの誘惑には勝てない。


手打ち蕎麦山桜は石川県小松市の外れにある。

石川に来た際は是非行ってみては如何だろうか。

山桜の蕎麦と人情で満たされるはずだ。

石川県小松市矢崎町ネ58-1


いつも美味しい蕎麦をありがとうございます。















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