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知らない人んち #1noteクリエイター脚本

     「知らないひとんち」第1話(決定稿) 

◯和室

   襖が開く。

きいろ「……!」

立っていたのはキャン(背後にジェミ)。だが、布団で隠れて顔が見えない。

キャンの声「お布団持ってきたよ〜」

きいろ「あ、ありがとうございます!」

   と言いながらサッと絵をテーブル下(またはカバン?)に隠

   すきいろ。

   キャン、布団を床に置く。

   背後のジェミが、手を振るようにウサギの人形を振る。

きいろ「(会釈)」

キャン「ずっと使ってなかったやつだからちょいカビ臭いかもだけど(と布団を広げ始める)」

きいろ「いえいえ全然」

キャン「(布団を半分広げ)あ……」

   シーツに大きなシミが付着していた。

きいろ「……」

ジェミ「……新しいシーツ買ってくる。ウサギちゃんの柄でいいよね?ちょうどほしいと思ってたし、やっぱり睡眠とウサギには深い関係が……」

   などと言いながら出て行くジェミ。

きいろ「え? いやいや、大丈夫ですよ!?」

   玄関ドアが閉まる音。

きいろ「……」

キャン「ということで、しばしお待ちを(と行きかけて)」

きいろ「あ、あの」

キャン「?」

きいろ「あ、いや、あの……あ、キャンさんって、本名なんて言うんですか?」

キャン「……え?」

きいろ「いや、みなさん本名じゃないですよね?」

    ×    ×    ×

   フラッシュ。

   リビングの星座表。

きいろの声「星座からとったあだ名ですよね? アク、キャン、ジェミ」

    ×    ×    ×

キャン「ああ……」

きいろ「あ、私のきいろっていうのは実は本名で、しかも苗字は『まなか』。真ん中きいろって完全に信号じゃんってよく友達に」

キャン「ごめん、トイレ!(と急いで出ていく)」

きいろ「あ、すいません」

   残されたきいろ、布団を見る。

きいろ「……ん?」

と、布団の畳まれている部分に紙が挟まっていることに気がつく。

引き抜いて見てみると、そこには「ニゲテ」と書いてあった。

きいろ「逃げて……? え、なにこれ……?」

◯きいろの自撮り映像

   和室でカメラを回すきいろ。

きいろ「(小声で)どうも… 人生いつも黄信号、ユーチューバの、きいろです。ということで、この家の謎について私なりに仮説を立ててみました」

と、言いながら、カメラを机の家に置く(定点にする)

きいろ「まずはこちら」

と、スケッチブックの絵を出す。(3人が泥棒の絵)

きいろ「『3人は泥棒』。これだったらヤバくないですか……。私は消されてしまうかもしれません。けど、真相は見届けたいと思います……」

と、スケッチブックをめくる(3人ともユーチューバーの絵)

きいろ「『3人はユーチューバー』。これだと平和解決なんですが……。実はね、これも全部私を陥れるドッキリなんじゃないか。『泊まりにきたらヤバい家だった』とか『家に他人を閉じ込めてみた』とかね。続いてはこちら!」

と、スケッチブックをめくる。(吸血鬼がアク、狼人間がキャン、雪女のジェミ)

きいろ「『彼らは全員、怪物たち』。そんな私は怪物ハンター?怪物たちを撮影して再生回数アップを狙う、ないない」

と、スケッチブックをめくる

すると、玄関のドアを開く音が。

アクの声「ただいまー」

きいろ「おっ、ユーチューバーか泥棒か狼男が帰ってきました。真相を探っていきたいと思います、お楽しみに……」

とカメラを持って廊下へ。

◯玄関

和室から出てくるきいろ。

きいろ「おかえりなさーい」

ア ク「ああ、どうも」

きいろ「アクさん! ズバリ、今日の夕飯はなんですか?」

ア ク「……はい……?」

きいろ「え? あれ、夕飯の買い物に行くって……」

ア ク「買い、物……? 僕が……?」

きいろ「え? いや…あれ、そのカバンは?」

ア ク「……はい……?」

きいろ「え? いや行くとき持ってなかった気が」

ア ク「カバンを? 僕が?」

きいろ「??? いやいや何ふざけて」

   そこにキャンが遮るように入ってくる。

キャン「おかえりー! きいろちゃん、ちょっとい〜い?」

きいろ「え?」

   腕を組み、引っ張るようにきいろを2階へ連れて行くキャン。

   にこやかだが、有無を言わせぬその態度。

   そんな二人を見送るアク。

ア ク「(睨むように)……」

◯女子部屋

扉がバタンとしまり、真剣な表情になるキャン。

キャン「気づいてたよね……?」

きいろ「えっ?」

キャン「色々おかしいって……」

きいろ「あ、いやその……」

キャン「おかしいと思ってるでしょ。アクのこと」

きいろ「え? アクさん」

キャン「そう……」

きいろ「あ、はい……」

キャン「アクは認知症の気があって、言ったこと忘れちゃったりとか、急に外に出て行ったり、なんでも拾って来ちゃう癖があるの」

きいろ「あ、はい、拾ってきちゃう……」

 ーーーー〔フラッシュバック〕

   三輪車

    ×     ×     ×     ×

   犬のゲージ

    ×     ×     ×     ×

   傘入れの中の杖。

きいろ「(納得して)ああ!」

キャン「だけどお願い、そのことを言うとアクも傷ついちゃうから触れないでいてくれる?」

キャン、涙を一筋流す。

きいろ「は、はい分かりました。みなさん優しいんですね」

キャン「ううん」

きいろ「私にもできることがあれば言ってください。

いやーなんか私勘違いしちゃってました」

キャン「なに、勘違いって〜?」

きいろ「いやなんでもないです、狼人間じゃないですよね」

キャン「ちょっと何言ってるの〜?」

と、冗談みたいなムード

◯男子部屋

アク、暗い部屋の中、モニターを見つめている。そのうちの一つが、きいろとキャンがいる女子部屋である。

◯和室

   買ってきたシーツを手に、ジェミが入ってくる。

   中には誰もいない。

ジェミ「……」

ジェミ、テーブルの上のスケッチブック(シーン2で使ったもの)を見つけ、手に取る。

ジェミ「……あいかわらず下手な絵ね……」

   ジェミ、テーブルの下に手を伸ばし、例の子供の絵を取る。

   2つの絵を見比べ、やがて子供の絵を裏返す。

   裏には子供の字で「まなか きいろ」と書いてある。

ジェミ「……きいろ」

◯女子部屋

キャンときいろ、和気藹々と話している。

キャン「きいろちゃん、想像力豊かすぎー笑」

きいろ「笑わないでくださいよ、ほんと怖かったんですから」

キャン、手を後ろにまわし、スマホの文字を消している。

※スマホ画面には『アクは認知症の気があって、言ったこと忘れちゃったりとか、急に外に出て行ったり、なんでも拾って来ちゃう癖があるの』

○男子部屋

モニターにうつったニャっとしたアクの顔。

○和室の部屋

絵をみつめているジェミ。

◯暗室の前の廊下

ひっそりとした廊下。カメラがだんだんとドアによっていく。

内側から、ひっかき傷が聞こえる。

きいろNA「これが引き返す最期のチャンスだったは、思いもしなかった」


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