06 林檎と梨
林檎と梨は、大きさと形が似ている。
5メートル向こうにあったら、それが青林檎か二十世紀梨か、区別がつかない。
しかし、食べたときの別物感は、一体どうしたことだろう。
林檎は、サクサク。梨は、シャクシャク。
アイスクリームとシャーベットくらい、その歯ごたえ、舌触りが異なる。
その中身の質感のせいなのだろうか、林檎はうさぎにするのに、むしろ皮の色的にはよりうさぎに近い梨は、うさぎにしない。
いや、今日もどこかで誰かが、梨をうさぎ形に切って梨うさぎにしているのかもしれない。
しかしわたしの人生では、今のところただの一度も目撃していない。
うさぎの目が赤いから林檎でうさぎを?
いや、でも出来上がった林檎うさぎは、いつどこで見ても赤いのは耳。
だったら梨うさぎでもいいじゃないですかと言いたくなる。
しかし、そう言いたくなる自分は、一度でも梨うさぎを作ろうとしたのかといえば、ただの一度もない。皆無。
不自然、と本能が感じるのだろうか。手の動きとは、嘘をつけないものなのだろうか。
両手は、林檎うさぎのみを育み、梨うさぎは生もうともしない。
いや、もしかして、野生の梨うさぎはそこらじゅうにいるのかもしれない。林檎うさぎとはお弁当箱などに囚われた不自由なうさぎで、野生の梨うさぎは、その色からして目立たず天敵にも捕まらず、野山を自由に集団で、永遠に駆けまわっているのかもしれない。
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