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KZ ZAS イヤホンレビュー

前回の KZ AS16 に続き ZAS もレビューします。先に伝えますと否定的なレビューになりますのでご容赦ください。個人的に好き嫌いを言うと『嫌いではないが好みではない』な部類になります。理由は、以下で否定している通りの低音のバランスの比重過多のため。
エージングは 200 時間程度。半年ほど使った後のレビューです。購入時期は 2021 年 9 月のものとなります。

音質

低音寄りのドンシャリ。音の輪郭は不明瞭であり、ブーミーな低音が支配的で、抜けが悪く、ぼやっとした空間で音が鳴っているという印象を与える。 KZ AS 系に比べると「かなりすっきりさに欠ける」。音のクリアさを求めるとしたらコストパフォーマンスは悪い。
300kh あたりの低音は量が多く、キックなどの低音が膨らんでいるように聞こえる。低音は多いがアタックはソリッドではなく、かなりウォーム寄り。

ただ、この「低音寄りでウォーム」という音作りは「音楽を鳴らす」という意味では、悪くはない場合がある。低音を重視する音源だと、意外にもこの表現が悪くないものもある。低音を強調した音楽やブラスバンドや楽器構成の多い曲を豊かな低音で楽しむことに向いている。また、80's のロックなども向いているのがある(一時期、これで Ultravox を一日聴いていた)。一方 BPM の速いエレクトロ音楽などは不得意。シンセベースの音などは楽しめるが、どうしてもドラムなどアタック感を要求される音には向いていない。
音場は広くもなく、狭くもない。立体感や音の配置は明確で自然だが、11 時と 1 時の間の方向においては、曲によっては音の重なりが少々団子。左右は割と広く明瞭。

地のパフォーマンスは決して悪くはないが、低音のバランスの比重が過多になってしまったのが残念。 ZAS における個性はこの支配的な低音であり、これを良しとするかでその人の評価が決まるだろう。

低音

前述通り、300hz あたりまでが多い低音のため、締まりがなくすっきりとしない印象。低音のリバーブは広範囲に広がって減衰していく。輪郭は不明瞭ぎみ。アタック感は弱め。
面白いのが 50hz 以下の量がかなり多いこと。イコライザで 50khz 辺りをばっさりカットするとかなり個性がなくなる。無きゃ無いでつまらない音になってしまったので、この辺りのバランス調整は難しいのだなと思わされた。
音源は選ぶが、この前述通り表現としては悪くはない場合がある。

中音

低音に負け気味ではあるが、意外にもボーカルは引っ込んだ印象は受けず、個性は薄いがバランス自体は悪くない。ただ、特に特色が無いと言ってもいいかもしれないし、派手さはない。アタック感も普通、量も特出して多く出ている訳ではなく、低音に比べたらウォームさはさほど。むしろ、低音のリバーブが中音のアタックを潰しているように感じる。それでもこの低音に埋もれていないのは、良く考えたら意外にもできる子なのではとちょっと思ってしまう。多ドライバが生きたか?
リバーブは狭いが、やや圧が強い。アタックは弱く、輪郭はやや不明瞭。少々べたっとした減り張りの無さを感じる。
金管楽器など厚みを必要とする音は低音の量と相俟って音の密度と立体感が増す。バイオリンなどの弦楽器の表現に繊細さはない。厚みは感じるがアタック感もさほどなので、やはりべたっとして減り張りに欠ける。

高音

派手で刺さる感じの高音ではなくマイルド。AS 系と比べると、量は少ないが十分な量が出ており、バランスが取れている。
シンバルの減衰したときの空気感もある。地味ではあるが、悪いところは無い印象。

デザイン

筐体はオールプラスチック。ホワイトモデルの場合、オフホワイトの白に透明のプラスチックをコーティングする形でなかなか質感は良い。シンプルにロゴだけを表記しており、かなり好感が持てる。
重量はそれほど。通常のかけかたであれば、耳への負担も少ない。

デフォルトのケーブルはそれなりに太さがあり絡まりづらい。高級感もあり、十分に使える。

遮音性や音洩れ

遮音性は作りなり。普通のカナル型イヤホン相当。
音洩れは電車内でも通常の音量であれば全く問題なし。DD 近くの内側にベント穴があるが、しっかりとした密閉型であるため、よほどの音量でなければ漏れる心配はない。

総評

実は ZAX が欲しかった。が、開放型のようで電車の中では使えなさそうと思ったことから、そのため購入したのが ZAS だった。だが結果は少々残念だったなあ、というのが個人的な感想である。
低音からくる臨場感を求めるならば選択肢となるかと思うが、純粋な性能という意味では同じ KZ であれば AS16 の方が音源を選ばないと思われる。他にイヤホンを持っている場合、ZAS は決してオールマイティではなく、音源を選ぶ場合が多い。
パフォーマンスが悪いとは思わないけど、チューニングがちょっと合わなかったような気がする。

次は TRN BA15 をレビューします(最後に突然の予告)。


老後、奥さんと世界一周のための費用にします。