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TRN Conch レビュー

イヤホンレビューです。今回は TRN Conch です。

1DD のいわゆる中華イヤホンです。価格からすると異様に性能がよく、非常にオススメです。
レビュー内容は、エージングを 100 時間程度の後になります。購入は Amazon で、時期は 2024 年 7 月のもの、ノズルはデフォルト、イヤーピースは付属の半透明のものを使用しました。

音質

中音が多めのカマボコかと思われる。一聴すると音の明瞭さは非常によく 4000 円から 5000 円の値段のものとは思えない。
全体的にアタック感は強めであり、分離の良さと相俟って明瞭さに繋がっている。その代わり、長時間の試聴はやや聴き疲れする。
音のウォームさはあまりなく、全体的に硬質さを感じる表現。特に中音のファット感やリヴァーブ感は少なく、余韻なく減衰する。ボーカルが前面に出てくるが、女性ボーカルものの柔らかな表現を期待するような曲にはマッチはしない。低音から中音の一部をガッつりとカットした感じなのが少々不自然にも聴こえる。結果余韻が非常に少なく感じるか。
音場感も狭くはない。分離も値段からは信じられないほど良く、明瞭さもあって見通しは非常によい。ただ、全体的に音がやや細いと感じるし、ファット感はない。中音がやたらと目立つため、もう少しメリハリがあってもいいとは思うが、値段からするとこれも酷な要望である。
立体感も縦方向に弱いと感じる。上記の通り、中音から低音の一部を EQ で抑えつけられた感じがあるが、これも値段からするとやむをえない欠点かと思う。

いつもの課題曲としている Dua Lipa の Levitating であるが、低音の表現はそれなりなので、やや全体のノリの良さを表現できていない。
一方、ボーカルはかなり前に出ており、良い感じに強調はされている。
全体的に音の分離はできており、細かくつぶさな表現やダイナミック感・メリハリ感は薄いものの、値段からすると期待される表現は優に超えている。コストパフォーマンスの良さは非常に感じる。

一聴してボーカルが硬質な表現に聴こえているが Mitski 自身の声質もあり、表現としてかなりあり。また、ミックスに埋もれることなくボーカルが前に出ており、大変楽しめる。
シンバルの表現や、線は細いもののベースの表現もなかなかよく、おおよそ値段から予想のできない音を出してくれた。
ボーカルの擦れた感じは気になるものの、欠点よりも長所の方が目立つ。

曲全体がやはり硬質に感じるものの、なかなか上手に表現できている。静かなシーンのピアノはもう少しメリハリが欲しいと思う。
バイオリンは線が細いと感じるものの、アタック感が強く、表現はきちんとできている。やや不自然な圧はあるものの、値段からすると大変素晴しい。

低音

中音からするとやや量が足りていないように思えるが、アタック感はそれなり、ソリッドで余韻や響きは少なめ。かなりすっきりとした表現でありつつも、存在感はきちんとあるし、超低音域も量は少ないが必要な量は出ており、迫力が必要な曲の表現もできている。
音もきちんと分解しつつ、きちんと表現できている。低音の量を求める場合はやや不向きな表現であるものの、質は良いと思う。
キックやバスドラはやや弱い。

中音

量が多く、かなり明瞭に聴こえる。厚みは薄いものの、アタック感がありソリッド。音の輪郭はつぶさに表現できているとはいえないものの十分にはっきりとはしており、値段からすると非常に優れている。
全体的なすっきり感・明瞭さの犠牲になったかファット感がなく、その一方、量は多いため楽器やボーカルが埋もれず聴こえる。
ギターはエッジが強く明瞭ではあるものの、アタックが過ぎた後のボディのファットさは感じられない。ボーカルも同様で、非常によく前に出てくる感じではあるものの、ファットさがないまま強調がされている感じがする。

高音

中音からすると量は抑えられているものの、輪郭も明瞭でソリッド。質もよく、非常に良く分離している。
歯擦音などの不快になる音も少なく、量の多い中音からすると高音は非常に素直な表現。ただ、ハイハットのややキンッと鳴る感じが気になる場合もあり、個性というよりは、やや不自然な表現が目立つときもある。
静かな曲でボーカルものの場合、ボーカルの擦れ感が気になるときもある。

作りと装着感

筐体は恐らく金属でできていると思われる。すごく軽いというわけではないが、装着感は悪くはなく重さは感じない。大きさも DD 1 つということもあるためか大きくはない。
指紋が付きやすく、やや汚れが目立ちやすいのが欠点。
QDC 2Pin のケーブルが利用できる。デフォルトのケーブルはそれなりの太さがあり、しっかりとしたもの。取り回しもよく絡みにくい。
凄いのがケーブルのプラグ側が交換できるという仕様であり、 3.5mm の他 2.5mm と 4.4mm の交換プラグが付いている。
イヤーピースも複数種類があり、ハードケース付きともあって、付属品は非常に豪華。
またノズル自体も交換可能であり回すとポロっと取れて交換ができる。
おおよそ値段からすると豪華すぎる付属品が揃っている。

遮音性と音洩れ

遮音性は普通。普通のカナル型イヤホンと同様と思う。
音洩れは少ない。電車内でも通常の音量であれば恐らく問題なし。

総評

ケチは付けたレビューとなったものの、この明瞭感は値段からは想像ができず、この価格帯のイヤホンでは抜きん出た性能かと思います。音楽を楽しむ、ということに関しては他にも良いイヤホンはあると思いますが、ウォームさの薄い明瞭なイヤホンが欲しい場合、非常に有力な選択肢になるかと思います。
派手なドンシャリイヤホンから一転して、すっきりとした明瞭なイヤホンが欲しい場合、特にオススメです。今後、この価格帯で出てくるイヤホンはいかに TRN Conch を超えるか、差別化していうかが大変だと思った次第です。


老後、奥さんと世界一周のための費用にします。