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家さがし

 僕らは4人家族だ。

 僕とパートナーと、それからラッキーとハッピーという二匹の猫がいる。今は賃貸に住んでいて、急いではいないけれど、4人でずっと過ごせる家を探している。

 先日、いくつか空き家となった古民家を見に行った。自分達の貯金でぎりぎり出せて、お金を借りなくても買えるぐらいの金額の範囲内の家を。

 のんびりした田舎町の中にある家や、裏に川が流れている家もあった。

 どの家もさっきまで人がいたように本や写真や人形や賞状が飾ってあった。それでも何軒かまわったうち、何度か、住んでいた方はもう亡くなったと聞いた。

 不動産屋さんが内側から雨戸を開けると、潜んでいた埃が太陽にきらきらと舞っていた。会ったことのない家族の、生きていた日々。そこで、まだ温かい何かが帰りを待っているようだった。

 パートナーが帰り道、車の中で「みんな確かに生きていたんだよね」と言った。
 僕も「うん」と答えた。

 切ないとか、胸に残るとか、色々な言葉を探したけれどどれにも当てはまらないような気がした。

 そんでも僕らは帰り道、少しだけ、名前も知らない誰かの人生に心を寄せた。

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