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個別指導アルバイト講師研修②「生徒を知ること ~授業開始前と直後の情報収集~」

個別指導のアルバイトの先生へ②

「生徒のことを知る ~授業開始前と直後の情報収集~」

〈はじめに〉
 前回は塾に来てから、帰る時の立ち振る舞いについてお話しさせていただきました。今回からは、実際に授業が始まってからの具体的な振る舞いです。まず、授業が始まる直前からイメージして下さい。今回は、声をかける内容も具体的に参考になるように触れていきます。さて、生徒がやって来て、挨拶をします。

〈生徒が来た〉
 生徒が来て、生徒を席までエスコートしたら、自分も側によって授業の始まりです。エスコートの際にも、もちろん声をかけます。その際、他の授業の邪魔にならないように、受付エリアで小さな声で話すようにして下さい。
 エスコートの際に声をかけるのは、大きな声を出さないように細心の注意をしながら、当たり障りのないことや誉められることなどを話しましょう。注意点や悪い話は座ってから落ち着いて話すようにした方がよいでしょう。エスコートしながら話すことは、周囲に聞かれてもいいようなことが良いです。くれぐれも、受付やラウンジ・スペースで話して下さい。授業中に途中で来た生徒と話されると、非常に気になるものです。そのあたりは、時と場合によりますので、周囲を見渡し話せるようであれば話すようにして下さい。
 エスコートの際の声かけで注意しなければいけないこともあります。まず、生徒の表情や状態です。疲れていないか、元気すぎないか、など様子を見て声かけすることも必要です。例えば楽しいことをすごく疲れているように見える生徒に話しかけても、耳には入らないでしょう。それでは効果的ではありません。疲れているようなら「どうしたん?疲れているように見えるけど…部活?」などと声をかけましょう。
 話が続かないと思っている場合には、オウム返しで構いません。「疲れているね、部活?」と聞いても「そう」としか返ってこなければ、「部活か~。大変だよね。」とオウム返しして下さい。それだけで、「わかってもらえる」と思って救われる生徒だっているのです。
 それから、声かけする内容で最も注意が必要なのは、「見かけのこと」と「家族のこと」です。「見かけのこと」は詳しく書かなくてもわかるでしょうか、例えば良かれと思って「痩せたね」と言った言葉が、本人は太っていると気にしていて、悪気なく傷つけることにつながってしまうこともあるというものです。それから、最近では親御さんがシングルなことは特に珍しくないような割合になってきたと思います。そのことを気にしている生徒もいるかもしれませんので、こちらから「父親」に話になるような声かけは控えたほうが無難です。
 声かけは、最初は難しいものです。数回授業をすれば、その生徒が興味を持っていることが何かとか少しわかってきます。何もわからない状態で声かけするには、やはり無難なところから、「暑いね(天気)」「雨大丈夫だった?(心配)」「今日も部活やったん?(学校や部活)」「5分前に来て偉いね(誉める)」などが良いかと思います。
 挨拶に加えて、受付エリアでひとことふたこと交わせられれば、バッチリです。個別指導のブースや座席のエリアにエスコートして静かに着席を促します。

〈着席したら〉
 着席したら宿題やテキストを準備して待つように、場合によっては小テストの勉強などをしておくようになど、生徒が動きやすいように指示を出しましょう。こうした時、ただ「待っていて」だと、自分で勉強する力のある生徒は大丈夫ですが、そうではない成績が芳しくない生徒は、ただぼ~っとしていたり、スマホをいじったりしてしまうものです。できるだけ具体的に指示を出してあげることがコツです。いまスマホの話が出ましたが、着席の際の指示に「スマホの電源切っといてな」と声をかけるのもいいでしょう。

〈授業をする姿勢〉
 自分が立って授業するか座って授業するかは、その内容や教室の状況によっても違うでしょう。立って授業する場合は、ある程度生徒との距離が作りやすいと思います。座って授業する場合は生徒との距離は近くなりやすいですが、生徒の性格によっては距離を取った方が良い場合もありますので、状況によって使い分けたほうが良いでしょう。立って授業をする方が集団指導向きと言えると思いますが、例えば予習をどんどんすすめたい時などに、わざと立って授業をするなど、個別指導でも時と場合によっては、立って授業をすること自体が授業に緊張感を生むツールとなりえます。ただし個別指導専用の教室などでは全員座って行っている場合もありますので、立って授業ができない場合もあると思います。それは教室長と相談しながら授業を計画してください。
 授業を立ってするか座ってするかなどの計画も、事前に立てておくことが望ましいです。その場の盛り上がりも大事ですが、ここぞという時に生徒の意識を変えたり、集中させたりするために、計画して立ったり座ったりするといいと思います。
 授業中の笑いを取るところや、集中して熱を帯びてくるところは、事前に講師が計画を立ててコントロールするのがベストです。授業計画は単なる予習ではありません。授業時間中に生徒を集中させるための綿密な計画が必要で、その中には教える自分の振る舞いも含まれます。誰に、何を、どのタイミングで発問し、その答えも予測しておいてなんと返答しアドバイスするか、も含めて考えるのが授業計画です。最初のうちは、授業計画はとても大切です。その計画がうまくいくのは2割程度ですが、それでいいと思います。授業は準備で8割がた決まります。しっかりとした準備をして臨んでください。

〈生徒のことを知る~インタビューから始める〉
 授業が始まるといきなり勉強内容に入ってしまう先生がいますが、もうワンクッションおくのが良いでしょう。たくさんの時間を取る必要はありませんが、生徒のことを知ると言う意味でも、質問してみると良いでしょう。
 これは生徒にとっては授業前のウォーミングアップにもなります。授業では発問してもなかなか答えが返ってこない場合もあります。緊張感を和らげておくという意味で、いきなり授業に入らずに、まずは雑談やインタビューから入るのです。もちろん、逆に、緊張感を持たせたい時もあります。そんな時は雑談をなしにして、「今日の学習は大事だからな」という雰囲気を醸し出すのです。
 雑談といっても、講師が自分のことをつらつらと話すのは最悪です。「あの先生、自分の自慢話ばかりする」と言われてしまいかねません。生徒のことを知るために、生徒にインタビューするのがいいでしょう。
 講師にとって、生徒の学校のスケジュールを知るということはとても大切です。スケジュールがわからないと、いつどんな授業をしていいのかわからず、的外れな授業をしてしまいかねません。いつどんな授業をすれば良いかというのは、生徒やその裏にいる保護者の満足度にもつながります。
 例えばテスト1週間を切っているのに、テスト範囲になっていないところを授業でやってしまうということがあったします。もしそれを保護者が知ったら、「どんな塾なの?」と疑問に思うでしょう。その塾に来ている生徒の目的にもよるかもしれませんが、さすがに明日英語のテストなのに、もう終わってしまった違う科目の授業をしたら、疑問でしょう。
 ですから最初は、生徒のスケジュールを知るために、学校のことを聞くのです。このことは生徒自身が自分のスケジュールを確認すると言う大事な意味合いも持ちます。集団指導でスケジュールをみんなに聞くと、だいたいは成績の良い生徒が答えます。ただ成績の良くない生徒はスケジュールを把握していない場合も多いですから、わざと成績の悪い生徒にしつこく聞いたりします。個別指導でも、場合によっては「テストがいつから始まる」と聞いても全くわからない生徒がいます。そういう生徒に何度も何度もテストの日を聞くことで、その生徒自身がテストがいつからかなのかということを理解するという面もあるのです。
 成績の良くない生徒は学校の予定やテストの日程を把握していないことも多いのです。その場限り、明日何があるかしか極端に言えばわからないのです。そういう生徒の意識改革のために、授業の最初に学校のスケジュールを聞くのはとても役に立ちます。
 また学校のスケジュールを聞いた時、他の先生方と共有したり、集団指導の生徒から学校のスケジュールを事前に聞いておくことも大切です。事前に聞いておくのは自分が知っておくということもありますし、生徒から聞いた情報が間違っていないかどうかの確認にもなりますので、特にスケジュール管理がいい加減そうな生徒から聞き取る際には、事前に他の同じ学校の生徒に聞いておいて、そのうえで聞くようにすれば、間違いも少なくなります。

〈小テストの点数を誉めるのも良し〉
 また、他の科目の担当の先生から、例えば小テストの出来が良いなどの話を聞いていたら、そのことを一言褒めてある上げるなどするのもいいと思います。生徒は、誉められることに対して悪い気はしません。授業前に誉められれば、照れくさいかもしれませんが嬉しくてテンションもあがるというものです。特に自分の担当の科目がその生徒がとても苦手だった場合、授業中に誉められることが少ないという場合も多々あります。指導中何かと指摘することが多い場合です。そんな時に他の先生と共有させてもらった情報があれば、誉めることができます。気分を良くして授業を受けるということも、時には大事です。

〈具体的に聞いておきたいこと〉
 具体的に聞いておけば良いことをいくつか挙げておきましょう。
①今学校がどこまで進んでいるか
②学校の進み方は早いか遅いか
③学校は応用問題まで進むのか
④学校の授業はクラスメートは真面目に受けているのか
⑤運動会や文化祭など学校行事は近くないのか
⑥テストは直近で何があるか
⑦学校の宿題は寝ているのか

 先ほども書きましたように、①②⑥などは、生徒自身がでの確認すると言う意味合いも含みますので、講師が何度でも聞いてあげたら良いと思います。確認はしつこいぐらいで構いません。


今回はこれで終わりです。今日出たことをまとめてみます。

〈まとめ〉
① 生徒が来たら、顔を見て、生徒の状態を判断、声かけする。
② 声かけは、「見かけ」「身体的特徴」「家族のこと」などは避ける。
③ 着席したら授業の準備をして待つように指示。
④ 場合によっては小テストの勉強をするよう指示。
⑤ 授業をする姿勢は、立ってやれば生徒との距離を保ち、座ってやれば距離が近くなる。
⑥ 生徒のことを知るためにインタビューする。
⑦ 生徒の学校の予定などを把握。いつどんな授業をするのかを理解する。
⑦ 生徒自身にスケジュールを把握させるために聞く。
⑧ 誉めるのも良し。

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