2023/04/26

会場では参加国がそれぞれ、未来をイメージするパビリオンをつくっていた。シンガポールは光だけでできた高層ビル、アイスランドは氷でできた火山、オランダのパビリオンは百台の自転車の上に乗った幽霊船。Hirukoの国のパビリオンは巨大な亀の甲羅のかたちをしていてね、壁も屋根も床も窓さえも再生紙でできていた。/多和田葉子『太陽諸島』(講談社、2022年)

想像力でできた建築(上記の場合はパビリオン)が好きです。そんな本が紹介されていたはずと思いながら『八本脚の蝶』(河出文庫、2020)を捲っていたのですが見つけられませんでした。無限に複雑化、緻密化しながら、同時に、どんな些細な傷もつけられない建物。絵画でなくて文章で記述され、読む度に脳内に組み上げられ、忘れられる速度に合わせて崩壊していく建築。引き伸ばされた時間の中の花火?

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