2023/06/22

加熱式たばことはいえ部屋の中に匂いがつくのは後々のことも考えて嫌だったのでベランダに出ると、雨から逃げてきたのでしょう蜘蛛が物干し竿から手すりにかけて巣のはじめとなる一本を渡し終えたところでした。蜘蛛。体から家を作ることができる、小さな体に家の材料が収まっているというのはどんなに頼もしい気分なのか。それも白い、幾何学的な美しさを持った、風や月の光を切り分けて通す家の素材。「ささがに」という蜘蛛の別名を引っ越したばかりの頃、佐藤弓生さんの連作から知りました。

ささがにの糸の純白かけわたしかけわたしして夜に模様を
/佐藤弓生「ささがにの」『ねむらない樹 vol.10』(書肆侃侃房、2023年)

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