2023/05/30

 『夏物語』を読んでいて、多分塾講師バイトをしていた時に見たことのある文章を見つけました。つまりは現代文の模試の問題です。文庫本を読み始める前に『夏物語』に触れていたとは思いもよらなかったために、少々面くらいました。

 私の過去は私が思い出さなければどこにも存在しません。そのような一瞬一瞬を書き留めるために短歌をしている、とも書けるのですが、それは都合が良すぎるような気がします。私の作者はもっと疑り深い存在と思われます。

 とはいえ記憶が砂の下に埋まるのを食い止めるためには、それを時々掘り起こさなくてはなりません。読むか、書くか、眠って夢を見るかして脳の隙間に溜まる砂を掻き出さなければ。

 そうすれば、水による癒しよりも確かな在り方で、灼けているのか腫れているのか分からない手を動かしつづける私が、私の作者が、生きていける。

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