2023/05/05

身の半ば以上菌糸となって人間より菌の度合いが多くなった人はそうしたやりとりをしないと聞く。が、「綴じ者」といったか、このあたりでそういう菌人は見かけない。
(略)
口中に染み出る汁はきっと骨の味だ。横たわる人の見る夢の味だ。/高原英理『日々のきのこ』(河出書房新社、2021年)

夢は場所を取らない。肉体も精神も滅んでは生まれるサイクルの中で調和に組み込まれていき、辛うじて破綻を免れているけど、夢はそもそもそんな苦労をする必要がない。全方位から見える二次元スクリーンというささやかな矛盾のみ抱えて、空中で待っている。わたしたちはそこを通過し、ほんのりと肉体と精神の両方に味付けを施される。
高原英理『ガールインザダーク』の短編しか知らなかったんですが結構好みの文章でした。

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