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不思議な売店

沖縄で不思議な売店を巡ってきた。

小さな店なのに、スーパーマーケット、カフェ、酒屋、コミュニティースペース、ホームセンター、学童クラブ、土産物店、釣り道具店……。いろんな表情がある。そして、店々のまわりにある日常を撮ってきた。

正確には、そこに住むひとたちにとっての日常だ。僕にとっては観光地としての沖縄とは違う、とても非日常的な時間の断片。青い海とまぶしい太陽とは無縁だったが、店内には穏やかで心地よい時間が流れていた。

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沖縄中部から北部にかけては、集落から集落が離れていて、車をもたない人は買い物ひとつにしてもひと苦労。特に北部、東部は沖縄本島をぐるっと周回したことのあるランナーには、つとに商店が少ないことで知られている。

店数が少ないと高齢になるほど、買い物が難しくなる。そこで活躍するのが不思議な売店。地域のひとたちが共同で出資してつくる売店、だから「共同売店」という。わかりやすい。

洗剤は泡盛のつまみにはならない

食料品や惣菜から、台所用品、洗濯用の洗剤、パンツ、カマ、仏前にそなえる線香、水道の塩ビ管など多岐にわたる商品が並ぶ。ほかに競合する商店がなく、生活にまつわるもの全てを扱う。よって、当然なんでも並ぶ。

本来ならいくつもの店舗で扱う雑多な物品を、限られたスペースに置くのだから商品棚はなんとも言えない混沌とした状態になる。洗剤の横に酒類があったり、鍋の横にねじ釘が置いてあったりする。

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洗剤は泡盛のつまみになりはしないし、ねじ釘も鍋の具材にはふさわしくない。それでも仲良く並んでいる。それでいいのだ。

並んでいる商品そのものは、どこにでもあるようなものが多いのだが、並べ方と売り方でずいぶんと雰囲気が変わる。商品の箱にマジックで値段が書かれていたり、1袋いくらというラーメンがバラ売りされていたり。レイアウトや価格の書き方に、隠しきれない店の独創性があふれている。

商品を並べたダンボールに、直に値段を書き込んだり、小さく切ったダンボールに書いてみたりと実に味わい深い。

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店内にあるテレビ、血圧計、イスなどのインテリアからは、そこはかとない生活感がかもし出され、田舎の親戚の家に来たような気分になる。なんだか落ち着く。

そうして店内に長居するほどに、画一的な小売店との違いが浮かび上がってくる。そんな、ちょっとした違いに、その土地で暮らすひとの息遣いが感じられた。

沖縄で過ごした、ちょっと不思議で、いとおしい1週間の記録も書く。


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今回撮影した写真は「共同売店がある暮らし展」で使われます。以下は展示の詳細。スタートは沖縄ですが、各地を巡回するかも、とのことです!

「共同売店がある暮らし展」
日程/2020年3月4日(水)〜4月6日(月)※火曜日休み
時間/11:30〜24:00
場所/カフェユニゾン(沖縄県宜野湾市新城2-39-8 MIX life-style 2F)
URL/https://www.facebook.com/events/847371249092586/

「共同売店とは、沖縄で100年以上前に生まれた相互扶助の役割を持ったお店のこと。
この展示会は、共同売店をより知ってもらって、ちょっと好きになってしまったり、応援したくなったり、 はたまた自分の暮らしについて改めて考えるきっかけになったらいいなという想いで、私たち『愛と希望の共同売店プロジェクト』が企画しました」

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