見出し画像

Day3-1 メキシコレポート

ひらけた背の低い木々がポツポツと生い茂っていた砂地から、青々とした森へ。路面もざらっとした砂から湿り気のありそうな土に変わっていた。走りやすいトレイルだ。スタートから前方にララムリと欧米のトップ選手2人が列をつくっている。ここまでの2日間と同じ展開だった。

前日にメロメロになっていたこともあり、僕は後方から超人たちの走りを眺めていた。フラットなトレイルを走っている分には、彼らに遅れをとることはない。とはいえ、前日の急ブレーキを挽回しようとすると、前に出たいところだが、そんな余裕もない。きょうは調子を崩さないようにと慎重にペースをつくる。

やがて、浮石が目立つガレ場へとフィールドが変わっていく。足の置き場が難しくなり、スピードを保ちながら、コースの目印を探すのに苦労する。田園風景のひろがる田舎道を車で走っていたのが、いきなり標識だらけの4車線道路に入ったような変化である。車の運転であれば、制限速度を守ってゆっくり進むのだが、前を行くランナーたちはそれまでと同じスピードで軽々と駆け抜けていく。

もちろん、トレイルにはスピード違反の取り締まりは存在しないから、なんとか食らいついていく。離されそうになるところを最短距離のルートを走ったり、ちょっとしたくだりでペースを上げて距離を保っていた。

前後していたゲディミナスの足取りはリラックスした感じなのに、僕はというとスピードを維持するのに精一杯。路面の変化にまで十分に注意をはらえないし、石やくぼみに足を取られて何度も足首をひねってしまう。それほど痛手になるようなヒドいひねり方ではなく、瞬間的な痛みには耐えられるものの、何度も繰り返していると、徐々にダメージが蓄積されているのがわかる。

ここから先は

4,010字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?